中野笑理子のブログ

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風邪ひきのどじょうすくい

2017年10月24日 | 日記
実家をあとにして建物の外に出ると、霧のような細かな雨が音もなく夜空から落ちてきていました。
傘を取りに実家へ戻ることもできますが、寝た子ならぬ寝た母を起こしてしまう危険性があります。
そうなると傘だけ取ってハイサヨウナラ、というわけにはいきません。
また靴を脱いで上がり込み、母が機嫌よくお休みになるまで付き合う羽目になってしまう。
さりとて春雨じゃ濡れて参ろうという訳にもいかず、どうしたものかとガラスドアの前で立ち止まり考える。

真っ暗な外と明るい建物内を隔てたガラスの扉は鏡のようになっていて、そこにはひとりの女が映っていました。
ガラスに映った疲れ顔の自分を見て、オッと閃きました。
肌寒いけれど本格的なマフラーはまだチト暑いので、縦折りにした手拭いを首に巻いていたのです。
それを広げてほっかむりにしました。これくらいの雨ならこれで充分しのげそうです。
昨日から喉が痛くマスクをしているので、風邪ひきのどじょうすくいのような格好で実家から自宅まで小走りに帰りました。

人通りも少なくすれ違う人もない夜道を急いでいるともうすぐ自宅という所で、わんこの散歩やゴミ出しの人とすれ違い、そのたびに皆ギョッとした顔でこっちを見ます。
決して怪しい者ではありません、とアピールするかの如くこんばんわっと明るく挨拶したものの返ってくるのはつぶやくような「こんばんは」。
そして建物の中へ入ると、いつもなら誰とも乗り合わせることもないエレベーターにも待っているスーツ姿の先客が。
顔もお名前も存じませんが、同じ建物に住んでいる人に間違いない。
いやぁ雨で……と照れ笑いをしながらほっかむりを取ることもできましたが、敢えてしませんでした。
もう何もかも隠したい、隠させて、という気持ちでした。
玄関のドアを開け家に入ると、私の格好を見て夫は言いました。
キャディさん、7番アイアン取って。