ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

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医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

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電動モルセレータについて 3 何が問題なのか?

2014-12-07 | 子宮筋腫

電動モルセレータを使うことによる問題点は何なのか?想定しておかないといけないことは、少なくとも3つあります。

1. 子宮筋腫の術前診断で細切除去をした場合に、想定外の悪性腫瘍があった場合

FDAで問題とされているのは、これです。腫瘍の細切除去をすれば小さな破片が残る可能性があります。悪性であった場合には、それが腹腔内で増殖して転移巣を形成する可能性があります。もともと子宮肉腫は予後不良の悪性疾患ですが、このような細切除去をしてしまった場合にどれくらい予後に影響するのかは、よくわかっていません。(悪性腫瘍が専門の婦人科医でも、いろんな意見があり、どちらにしろ予後不良なのであまり予後には関係しないのではないかと言う人もいます。)

2. 良性の子宮筋腫であっても、小さな組織片が増殖してParasitic myomaとして病巣を形成する場合

症例によっては、細切除去によって生じた小さな組織片が腹腔内に生着し、発育するということがあります。これをParasitic myomaといい、子宮筋腫核出術後に多く、数年経ってから発生すると言われています。発生頻度は約0.1%程度で、かなり稀なものだと考えられます。

電動モルセレータの使用によって生ずると言われていますが、本邦の報告では、腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術によるもののほうが多いようです。この場合は、電動モルセレータによるものではなく、小開腹による筋腫の細切除去の際に、小さな組織片が腹腔内にばらまかれてしまったためでしょう。つまり、電動モルセレータが問題なのではなく、腫瘍の“細切除去”そのものを問題にするべきであることを忘れてはいけません。

電動モルセレータを使用した場合には、手術終了時に腹腔内を十分洗浄することで、Parasicic myomaをかなり予防できると言われています。私たちは、送水&吸引能力の高い吸引洗浄管を使って、少なくとも2リットル、多いときには、5~10リットル程度の生理食塩水で腹腔内を洗浄しています。

3. 腹腔内臓器等の損傷

これまでも電動モルセレータによる腹腔内臓器の損傷の報告がありました。他臓器損傷も稀なトラブルですが、誤動作や使用法の誤りによるものが多いのではないかと思われます。子宮筋腫の経腟的回収などで膀胱損傷の報告もあり、電動モルセレータ以外でもこのようなトラブルは起こりえます。

「電動モルセレータを使わないので安全して手術が受けられます」などと記載してあるホームページも散見しますが、細切除去をしている限り、問題がないとは言えません。(よく、そんなこと言えるなと、、、

というわけで、次回は電動モルセレータ問題の解決法をお示ししたいと思います。( 全部、開腹手術に切り替える、とかいいうのではありません。

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