大学で専攻にしている物理の話をあまりしたことがなかったですが、大学では物理学を勉強しています。
(あ、ちゃんと今日の内容と関係あります笑)
物理学といっても、宇宙というようなマクロな分野ではなくて、原子とか電子とかのミクロな分野。
いわゆる量子力学を使うような分野を勉強しています。
研究室で多いのが半導体や超伝導といった固体物理を扱う研究室。
固体物理というのは、原子・電子のレベルから物質の性質を解明していく分野で、大学で生活していると必然的にそういった研究の話が耳に入ってくるでものです。そんな中よく聞くのが、"混ぜてみたら面白い性質が見つかったからその性質を調べている"、という研究。
複数の物質を混ぜ合わせると新しい性質が生まれるということはよくあり、実際合金やら半導体やら、世の中に役に立っているものは混ぜ物ばかりなのですが、それらは理論的計算からだけでなく、偶然見つかることもあるそうです。
これって結構接ぎ木にも当てはまることだなぁと思っていてだからこそ接ぎ木が好きなのですが、今日はまさにそのような研究論文、つまり接ぎ木してみたら面白いこと起きちゃったという内容の論文の紹介です。
(イントロだけでめっちゃ長くなってしまった、、)
今日紹介するのは、京都大学の方が書かれた「Non-vernalization Flowering and Seed Set of Cabbage Induced by Grafting Onto Radish Rootstocks」という名前の論文です。日本語に訳すと「ラディッシュへの接ぎ木によるバーナリゼーションを介さない開花と結実」。本来キャベツというのは、十分株が大きくなったうえで低温にさらされないと花芽をつけないのですが(低温にさらすことをバーナリゼーションといいます)、ラディッシュに接ぎ木するとバーナリゼーションがなされなくとも花芽がつくことが分かったそうです。
本論文で特に重要なのは
①キャベツを抽苔し始めている何種類かのケール、ラディッシュに接ぎ木したところ、ラディッシュに接ぎ木したもののうちいくつかでは、バーナリゼーションを行わずとも、接ぎ木後おおよそ50日前後で花が咲いたということ(正確には蕾を確認した)。またその花はCO2による自家受粉で通常通り結実したということ。
②接いだキャベツについては開花を促進するFTタンパク質の有意な上昇や開花を制限するFLCタンパク質の有意な減少が見られなかったということ。唯一FTタンパク質によって活性化されるというBoSOC1については上昇が見られたということ。
③キャベツの開花に貢献したラディッシュは2種類あったが、片方ではFTタンパク質の上昇がみられたということ。
④接いだことによる開花はあまり長く続かなかったこと
これらのことから、ラディッシュへの接ぎ木により、バーナリゼーションを行わずキャベツを開花させることが可能であり、その接ぎ木による開花促進は、台木のラディッシュ由来のFTタンパク質が、キャベツのBoSOC1に直接作用することによって引き起こされているのではないかと結論付けています。
もう少し詳しく書きたいところですが、集中力切れたのでここら辺で切り上げます笑
開花促進は育種のスピードを上げるうえで何より重要であって、だからこそいろんなところで研究および開発が行われているわけですが、遺伝子組み換えとかウィルスベクターとか、なかなか個人じゃ手を出せないのが多いんですよね。その点、今回の研究は接ぎ木、というシンプルな方法で開花が促進できてしまうので驚きです。
接ぎ木は古くから存在している手法ですがまだまだ可能性を秘めているというのが、なんとも素敵ですね笑
ではっ!
参考文献
Ko Motoki : Non-vernalization Flowering and Seed Set of Cabbage Induced by Grafting Onto Radish Rootstocks