「あーきたきた」
「メリークリスマス」
「メリクリ」
「カノ、メリクリでいいよね」
「メリクリ」
「メリクリ」
「クドウ、なかに入れてくれないか?」
「どうぞーアララギはカノの隣り」
クドウのあどけない表情の奥に座る、そっけないカノの表情が俺には似合っていた。
カノと初めてクリスマスパーティーを開いたときは、お互い卒業して間もなくのことだった。あの頃は、まだクドウは俺たちの側にはおらず、カノと当時の仲間とでクリスマスパティ―を俺が幹事で開くことになった。
初めに来たのがカノで、しばらくカノとふたりで仲間が集まるのを待っていた。しかし、なかなか来ない俺の仲間たち。カノは俺を疑い始め、ほんとに他に集まるのか?落ち着かない様子だった。その時、俺とふたりっきりになるのが嫌なふうにも思えた。
それから何度かカノと接していて、「気はあるけど嘘をつかれるのは嫌だ」。そういう気持ちをカノは俺に向けていた。
気が付けば、俺の人生でカノと一番ふたりで居る仲になっていた。
カノの弟は
カノに聞くところによると、アサミの家に呼び出され別に求婚されていた年上の男と子供も育てることを条件に別れたという。
「いくらなんでも」
「いくらなんでも、それは」
「お嫁さん100年安心プランとか叫んでるし」
「結婚願望はお互い一致してたのかも」
「でもいくらなんでもそれは」
「結納金から結婚資金までうちの親だと大変だから」
「車も外車に乗ってたようだし、マオは担保もない状態で車も買う前だったし」
「相手側の車に乗せられてアサミさんの家から追い出されて・・・」
「別な男性の方の授かり婚ということになって・・・」
「その後、マオは歩いて帰って来て・・・」
「仕打ちじゃないか」
「小雨が降る中よ」
「途中でお父さんが気づいて、あたしが迎えに出かけたらマオはずいぶん近くまで歩いて来てた」
「マオが帰って来たら、お父さんが一言マオに」
「おまえは女運がないってぼそっと言ってた」
それは言い換えれば、カノに男運がないという言葉を俺に投げかけていたようにも思えた。
「すまない」
「なにが」
「弟のことでしょ」
「かえって弟に失礼か」
「失礼よ」
「あたしとあなたの話しだから別にいいけど」
「クドウは仕事順調か?」
「順調順調」
「アララギは身体大丈夫なの?」
「本でも書いて本屋でもやるよ」
「本屋!」
「書いてからの話し、書いたら教えるよ」
「内職の仕事の求人とかも見たんだけどな、経験者優遇とかが多くてさ」
「あれってそこの会社退職した人とかが内職するんだな」
「まあ、無理しないでー」
「ちょっとトイレ」
「この後カラオケにでもいく?」
「いいねカノちゃん、アララギもいくよね?」
「あーいこう」
「全員飲んでるからタクシー呼ぶよ」
「ここからだと遠いね、マオくん家にいるかなカノちゃん?」
「うーん、どうだろ」
「タクシーでいこいこ、カラオケ代はカノとクドウでよろしくー」
クリスマスイブの夜は三人で盛り上がった。
その後、俺とカノはふたりで会うことを繰り返し、赤旗野郎も気に入っていた景色のいい山菜採りもできる丘で、カノの家族と俺の家族とで式も兼ね、そこにあるペンションで過ごした。離婚には厳粛だという宗派の協会に行き
ふたりで籍をいれた。
カノは正社員の仕事は辞めずに続け、産休制度がどれくらいなのかも話し合い。
「ノゾムさんの浮気が心配だから子供は作らない」
「弟がいるからいいでしょ?」
「う、うん」
夫婦になっても子供は作らないでいた。
そして俺の夢がひとつ
カノと一緒、夫婦でオンラインゲームをする夢が叶った。
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マコ・パック(メドレー) 狼なんか怖くない~日曜日はストレンジャー~わたしの首領(ドン) | |
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ニートクリスマス番外編 完
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