一人孤島に取り残されるとき、一冊の本を持ち込むことが許されるとしたら、
どんな本をもっていくか。友人と話し合ったことがある。
若いとき、案外、皆やったことがあると思う。
20歳の頃の一冊の本は、五味川純平の「人間の條件」だった。頁数の多い本だが、
3~4回読んだ。ビデオや、テレビの再放送も何度か見ている。
連続8時間放映の映画も、2度見た。
今考えると、この本は素晴らしかったと思うが、結末に、救いがない、と思った。
自由と、妻の元に返ることを願って、シベリアの冬の原野を歩き続け、
力尽きて倒れる。倒れた主人公の体には、降り続く雪が積もり、小さな塚ができる。
すでに、戦争は終わっていたというのに。
若い頃は、こんな辛い結末にも、こんな社会を作ってはいけないという思いがあり、
ある種の甘美?な思いに浸っていたのだろうか。
自分の現実は、それほど大げさな思いを抱いていたわけでなかったと思うが。
しかし、今、孤島でこの本だけを読む自信はない。救いがないと思うから。
残る時間が少なくなってきた今、一冊の本を選ぶとしたら、どうだろうか。
明るい未来を約束してくれる内容も、ある意味で辛いかもしれない。
この先の幾時間かを、肯定的に描いているものが良い。
中には、聖書や、歎異抄、般若心経という人もいるだろう。
しかし、これらの本から意味を汲み取るのは私には難しい。現代語訳されていても、
難しいと思う。
小説でも難しいものはあるが、最近好きで良く読んでいる時代小説だと、
おおかた理解できる。
そこで一冊を選ぶとしたら、藤沢周平の「用心棒日月抄(全4作)」になるだろうか。
第1作から3作までが短編連作、第4作が長編となっている。
藩上層部から脅されるようにして、使命を押しつけられ、命がけで役割を果たす。
それも、脱藩という形なので、給金ももらえず、仕方なく用心棒を稼業として暮らす。
脱藩でもあり、命を狙われながらの生活が続くが、
最初に襲ってきた女刺客(佐知=忍者)との関わりが面白い。
主人公の名前は、青江又八郎。テレビでは、村上弘明が演じていた。
20年前に、NHKの「金曜時代劇」で「腕におぼえあり」として放映された。
第2作からは、助け合いながら使命達成のため働くことになる。
コミカルなところもあり、楽しく読める。主人公と佐知は共に暮らすことはないが、
最後の場面で、佐知が、又八郎に言う。
「わたくしは間もなく仏門に入り、…」…、
「その修行が終わるとわたくしは国元に帰って、
明善院の庵主をつとめることが決まりました。
青江さまはご迷惑に思われるかも知れませんが…」
明善院とは、又八郎が住む町のはずれにある尼寺だ。
最後に、希望がある。
<本日の歩行:10㎞>~42日目
自宅~十軒道路5㎞地点往復10㎞(16:07~18:25)
※帰りにTSUTAYAに寄り、『体幹を鍛える コアトレ スタートブック』を購入。
最近からだがぎごちないので、トレーナーを雇って、体をほぐしたいのだが、
無職の身には無理だ。