悠歩の管理人室

歩くことは、道具を使わずにできるので好きだ。ゆったりと、迷いながら、心ときめかせ、私の前に広がる道を歩いていきたい

一分の一

2013-08-03 16:46:40 | 地図

まったく意味するところを考えずに読もうと思ったのだった。
井上ひさしの小説は、「四千万歩の男」を読んで感心してから、文庫を2~3読んでいた。
饒舌な口調はそのままで、誰の作かはすぐにわかる文体だ。

一分の一とは、2万五千分の一などではなく、「そのまんま」の地図のことであった。
ロシアのある建物が建っている場所を、3,883,000枚の西洋紙を使って書いた、
一分の一(原寸大)の地形図。

と、これは落語のまくらのようなものであって、戦後、分割占領された日本を、
一分の一にしようという、壮大な目標を持った内容のようである。
戦後の日本は、ロシアとアメリカ、イギリス、中国に分割統治されているという設定。
ロシアに占領されている北日本は、名前がロシア風になっている。
日本の朝鮮支配時代の創氏改名を思わせる。
中央日本は、アメリカで、カタカナ言葉がはびこっている。
本国では、中央日本を准州扱いとし、州名は「ディズニーランド」。
予定されている准州旗は、日の丸の背にして立っているミッキーマウス。

大阪、広島など西日本は、イギリス、四国は中国が占領している。

現代日本もアメリカへの濃厚な配慮が窺える。
他国からは占領国と見られているだろう。

何分の1の国家でなく、統一(一分の一)日本を目指そうという、趣旨のようだ。
今、主人公たちは、命がけで北日本を脱出し、中央日本へ向かおうとしている。

伊能忠敬を描いた「四千万歩の男」も面白かったので、大いに期待できる。