井上ひさし著『一分の一』を読了した。たいへん面白かった。
この作品は、著者が亡くなったため、未完である。
主人公が「点字地図図書館」に行き、建物に入ったところで終わっている。
伊能忠敬の冒険譚『四千万歩の男』も、7年の歳月をかけて書き綴った大作だが、
これも7年を費やしている。いずれも荒唐無稽なユーモア冒険小説である点は同じ。
『一分の一』の主人公は、地図学者という設定。「点字地図図書館」がでてきたので、
本当にあるのか調べてみたが、無かった。
架空の施設であったが、目の配りどころがいいと思った。
視覚障害者向けの地図に、「触地図」があるのは知っていた。(下の図)
検索して、「国土地理院」のHPで「触地図原稿作成システム」を試験公開している、
ということを知った。なお、この中にあるリンクは間違っている。
正しくは → こちら
視覚障害者が、介助を受けずに目的地に行くのはかなり困難だ。
「触地図」の外に、音声情報を付加した地図、「しゃべる触地図」なども作られている。
普通の信号は、視覚情報に頼った装置だが、盲人用に音響装置のついた信号機がある。
全盲の人も、触地図などを使い、全介助でなく、自分の判断力を総動員し、
行きたいところに行けた方が良いと思う。
私も経験があるので大きなことは言えないが、地図を見ないで、前を歩く人について回り、
一緒に道に迷う愚を犯したことがある。
せめてウォーカーは、地図を見て歩ける力をつけたいものだ!