レンキン

外国の写真と
それとは関係ないぼそぼそ

長いトンネル(3)

2007年02月07日 | 昔の話
暢気者の担任が薦めてくれた会社の求人票には
男女各一名を採用すると書いてあった。
(男女雇用機会均等法施行前であったため)
男子でこの会社を希望しているのは
M(同じデザイン会社を希望したMではなく、『漫画のような彼』のM)
であった。ややこしいが頭文字が一緒だったため
このまま進めていく事にする。

製図が得意で立体に強いMは
希望する会社に大変ぴったりだと思った。
そして製図が苦手で立体に超弱い私は
大変な身の程知らずであったと思う。
「女子の希望は●ちゃん(私の名前)だったんだ」
Mにそつのない笑顔で言われても私は苦笑いをしながら
せめてもの抵抗としてオンシャの歴史とか所在地なんかを
必死で勉強していた。
あとMから「志望動機」を仕入れる事も忘れなかった。
私に動機があるはずもなく、だからと言って
「担任に薦められたから」なんて言うほど落ちたいわけじゃない。
向いてないのは分かってるけど 落ちるのは嫌なんだ。


さて
入社試験に何をしたか、とか何を聞かれたか、という事は
残念ながら言えない。覚えていないとも言う。
隣にどんな人が居たかも覚えていないし、
テストの内容も印象深かった一問だけしか覚えていない。
…ただ面接の時すごくはきはき喋る人がいて、
その声が大江千里そっくりだったため笑いをこらえるのに
怒ったような顔をしてしまった事は覚えていたよ!
ともかく無事に合格だけはし、(でもその合格の知らせが
 どんな形で来たのかも忘れてしまった)
数え切れないほどの書類の束を
上から下まで説明を受けながら判子を押して
夢中のまま私は株式会社○○に入社を果たした。
これから二年、いや三年か。必死で働いてお金を貯めて
大学へ行こう。
迷惑な目標を隠したまま私の社会人生活が始まった。

(続)