翌日の日曜日には熱も大分下がった。
まだ少しゆらゆらする頭を抱え、パジャマのままで
足を投げ出してハウス食品劇場などを見ていた時だ。
彼から電話がかかってきた。
当時はまだ今ほど携帯が普及しておらず、
彼が電話嫌いだったこともあって
向こうから電話がかかってくることなどほとんど無かった。
彼はイベントに参加していたので
体調不良で休んだ私を心配してくれたのだろうか。
嬉しくてうきうきした声が出た。
彼が何か話し始める前から
「昨日はどうだった?」「わかさぎ沢山釣れた?」
と質問を重ねた。
しかし私は途中で口をつぐんだ。
私の質問に対する彼の口篭もるような返答に、
そして何かを切り出そうとして切り出せずにいる口調に
私は急激に胃の辺りがどしんと重くなるのを感じた。
どうしたの、と無理やり声を出したけど
本当はそんな事聞きたくなかった。
物凄く嫌な予感がした。恐かった。
落ち着いて聞いてほしい、と言われたのに
私はその時点でまんまと大パニックになってしまった。
何があったんだと聞きながら大泣きして
パジャマを片手で脱いでいた。
何処へでも出かけられる準備をしていたのだ。
受話器の向こうでわあわあ泣く私をなだめながら
彼は自分の持っている情報もあまり沢山は無いんだけど、
と前置いて、それから昨日あった事を話し出した。
昨日イベントが終わった帰り道に、K君の車が事故にあった。
Oを自宅まで送っていく途中だった。
居眠り運転だったらしい。
K君は鼻と指を折る怪我で、Oの方はもっと良くない状態らしい。
彼は私に、今病院に行ってもOは集中治療室にいて
会う事は出来ないから家にいなさいと言った。
後で分かったけど、事故の連絡を直後に受けていた彼は
すぐに病院に行って二人と家族に会っていた。
本当はもう少し詳しい情報を持っていたのだが
私が思ったより激しく動揺していたので
それ以上言うのを止めたそうだ。
Oはその時すでに危篤状態だったのだ。