そして三年が経った。
四年も経った。五年も経った。
予定通りに行かなかったものの、ある程度
まとまったお金も貯まった。
にも関らず何故私が会社を辞めなかったかというと
怖くなったからだ。辞められなくなったという言い方が正しい。
浮かれた祭りのような好景気から落ちていった、
半端ない不景気が怖くなったのもある。
大学へ進学した友人が、そんなに悪い人ではなかったのに
あまりに就職に苦労して嫌味を言ったことがある。
曰く「いいよね丁度いい時に高卒で就職して。
大卒だと今じゃ採用してもらえないんだよね。
…高卒なんかより余分に勉強してるのにさ」
私はかなり気分を害して電話を切ったけど
それほどの苦労だったのだなと思うと
友人を責める気持ちもすぐ失せた。
それについてどうこう言われる筋合いは無いとしても
確かにいい時に就職できたからね。
それともう一つ。私が過ごした三年間を失うのが怖かった。
自分が手につけた職(…って程でもなかったけど)が
他の機会に役立つとは思えなかったし、大学で役立つような
ものでもなかった。
私はここで大学に行ってしまったら
ただただお金を貯めただけの三年間を
無駄に過ごした事になるのではないか。
会社というのは浅くてぬるい風呂のような場所だ。
浸かっていても快適ではない。不自然な格好で浸っても
薄ら寒くてきちんと温まる事は出来ない。
しかし風呂から出てしまうと、ぬるま湯に慣れた身体に
世間が寒いであろう事を感じていた。
…寒い日のプールみたいな。うまく伝わるだろうか。
そんなこんなで5年が経った。
その時私は23歳、好きな事は山登りと水泳。
通勤バスの中でいつも「今私が30歳だったら」という
空想をしていた。現在30歳であるという前提のもとに
散々色々なシチュエーションを空想した挙句
「まだ私23歳じゃない。ああ良かった!」と思うのだ。
何と憎たらしい空想癖だろう、殴ってやりたい。
(鼻息)
閑話休題。
その当時私はもう現在の彼と付き合っていたが
Oも同じ職場内に彼がいた。
一つ年下の男の子で名前はK君。
新入社員歓迎会の食事の席でOに好意を持った彼が
熱心に口説いて付き合うことになったのだ。
Oは…こう言っては何だけど、もてるタイプではなかった。
外見は「温かみがある」「素朴な」「真面目そうな」と
評されるような子で、
女の子が男の子に「いい子だよ」と紹介して
男にその魅力がさっぱり伝わらないタイプだ。
だからK君がOに好意を持っていると知ったとき、
何だか嬉しくて、影から日向から応援した。
お姉ちゃんキャラのOと弟キャラのK君は
すぐにしっくりしたカップルとなり
最初は戸惑っていたOの口から
休憩時間のたびにK君の話ばかり聞くようになる。
私は仲の良い二人が大好きだったので
その話をいつも面白がって聞いていたのだ。
(続)
四年も経った。五年も経った。
予定通りに行かなかったものの、ある程度
まとまったお金も貯まった。
にも関らず何故私が会社を辞めなかったかというと
怖くなったからだ。辞められなくなったという言い方が正しい。
浮かれた祭りのような好景気から落ちていった、
半端ない不景気が怖くなったのもある。
大学へ進学した友人が、そんなに悪い人ではなかったのに
あまりに就職に苦労して嫌味を言ったことがある。
曰く「いいよね丁度いい時に高卒で就職して。
大卒だと今じゃ採用してもらえないんだよね。
…高卒なんかより余分に勉強してるのにさ」
私はかなり気分を害して電話を切ったけど
それほどの苦労だったのだなと思うと
友人を責める気持ちもすぐ失せた。
それについてどうこう言われる筋合いは無いとしても
確かにいい時に就職できたからね。
それともう一つ。私が過ごした三年間を失うのが怖かった。
自分が手につけた職(…って程でもなかったけど)が
他の機会に役立つとは思えなかったし、大学で役立つような
ものでもなかった。
私はここで大学に行ってしまったら
ただただお金を貯めただけの三年間を
無駄に過ごした事になるのではないか。
会社というのは浅くてぬるい風呂のような場所だ。
浸かっていても快適ではない。不自然な格好で浸っても
薄ら寒くてきちんと温まる事は出来ない。
しかし風呂から出てしまうと、ぬるま湯に慣れた身体に
世間が寒いであろう事を感じていた。
…寒い日のプールみたいな。うまく伝わるだろうか。
そんなこんなで5年が経った。
その時私は23歳、好きな事は山登りと水泳。
通勤バスの中でいつも「今私が30歳だったら」という
空想をしていた。現在30歳であるという前提のもとに
散々色々なシチュエーションを空想した挙句
「まだ私23歳じゃない。ああ良かった!」と思うのだ。
何と憎たらしい空想癖だろう、殴ってやりたい。
(鼻息)
閑話休題。
その当時私はもう現在の彼と付き合っていたが
Oも同じ職場内に彼がいた。
一つ年下の男の子で名前はK君。
新入社員歓迎会の食事の席でOに好意を持った彼が
熱心に口説いて付き合うことになったのだ。
Oは…こう言っては何だけど、もてるタイプではなかった。
外見は「温かみがある」「素朴な」「真面目そうな」と
評されるような子で、
女の子が男の子に「いい子だよ」と紹介して
男にその魅力がさっぱり伝わらないタイプだ。
だからK君がOに好意を持っていると知ったとき、
何だか嬉しくて、影から日向から応援した。
お姉ちゃんキャラのOと弟キャラのK君は
すぐにしっくりしたカップルとなり
最初は戸惑っていたOの口から
休憩時間のたびにK君の話ばかり聞くようになる。
私は仲の良い二人が大好きだったので
その話をいつも面白がって聞いていたのだ。
(続)