三年でお金を貯めて大学へ行く、というのが
私の当初の目標だった。勿論公にはせず内緒である。
ところがお金というのは全然思い通りに貯まらない。
私は財形貯蓄の額を、最初から一月7万円に設定していた。
ボーナス時にはその3倍の額が給料から天引きされる。
新入社員としては欲張りすぎな作戦だった。
おかげで私はしょっちゅう金欠になり、
財形貯蓄が下ろせるようになるとすぐに
ちょろちょろと預金を切り崩して生活していた。
服や靴や鞄、冬にはコート、夏には帽子にサンダル。
会社生活って思った以上にものいりなのだ。
それから保険にも入った。
このくらいで十分だろう、と思った掛け金に対し
自分が死んだ時に貰える額の少なさにあっけにとられた。
ニュースやサスペンスで「○億円の保険が」とか
聞いていたけど、まさかそれだけ貰うのに
毎月あんなにお金を払わなければならないとは。
自分が死んだら本当は…三千万円くらい!欲しかったのだが
私が当時「えいや」の思いで入った保険は
死亡時の給付金が三百万円だった。
現実というのはかくも厳しい。
***
しばらくたって、Sは同じ職場内の事務仕事に移ることになった。
一緒に仕事をした期間は半年くらいだろうか。
Sはこの仕事に向いていないとは思わなかったけど、
向いているわけでもなかったみたいだ。
女の子の中で誰か一人事務仕事に行かないか、
という話をすぐ承諾し
作業着を脱いで事務服に着替え、仕事内容もがらりと変わった。
昼の休憩は同期の三人一緒にとっていたので
仕事が変わってもお喋りはよくした。
高校で勉強してきたことが一切役に立たないんだよなあと
最初は自分でもこの成り行きに迷っているようだったが
すぐに慣れて、まるで最初から事務員だったように
イキイキと働いていた。
(続)
私の当初の目標だった。勿論公にはせず内緒である。
ところがお金というのは全然思い通りに貯まらない。
私は財形貯蓄の額を、最初から一月7万円に設定していた。
ボーナス時にはその3倍の額が給料から天引きされる。
新入社員としては欲張りすぎな作戦だった。
おかげで私はしょっちゅう金欠になり、
財形貯蓄が下ろせるようになるとすぐに
ちょろちょろと預金を切り崩して生活していた。
服や靴や鞄、冬にはコート、夏には帽子にサンダル。
会社生活って思った以上にものいりなのだ。
それから保険にも入った。
このくらいで十分だろう、と思った掛け金に対し
自分が死んだ時に貰える額の少なさにあっけにとられた。
ニュースやサスペンスで「○億円の保険が」とか
聞いていたけど、まさかそれだけ貰うのに
毎月あんなにお金を払わなければならないとは。
自分が死んだら本当は…三千万円くらい!欲しかったのだが
私が当時「えいや」の思いで入った保険は
死亡時の給付金が三百万円だった。
現実というのはかくも厳しい。
***
しばらくたって、Sは同じ職場内の事務仕事に移ることになった。
一緒に仕事をした期間は半年くらいだろうか。
Sはこの仕事に向いていないとは思わなかったけど、
向いているわけでもなかったみたいだ。
女の子の中で誰か一人事務仕事に行かないか、
という話をすぐ承諾し
作業着を脱いで事務服に着替え、仕事内容もがらりと変わった。
昼の休憩は同期の三人一緒にとっていたので
仕事が変わってもお喋りはよくした。
高校で勉強してきたことが一切役に立たないんだよなあと
最初は自分でもこの成り行きに迷っているようだったが
すぐに慣れて、まるで最初から事務員だったように
イキイキと働いていた。
(続)