レンキン

外国の写真と
それとは関係ないぼそぼそ

長いトンネル(4)

2007年02月08日 | 昔の話
それにしても、だ。

今思い返しても、入社試験から入社まではほとんど雪崩れだった。
気楽な学生生活の中で気楽に会社を決め、
試験を受け合格してしまうと
途端に想像もつかない程の責任と義務が圧し掛かる。
ここで言う責任と義務とは「会社人」として果たさなければならない
仕事上の責任や義務ではなく
(もちろんそれもあるけど)
自分が知らない間に手に入れていた
社会人としての責任と義務である。
自分の持っている判子一つにどれだけの拘束力があるか、
自分の稼ぎがどれだけの保障となり得るのか、
自分に最低どれだけの保険をかけておかなければならないか、
老後のために(!)何をしておかなければならないか。
一度社会人になってしまったら「知らなかった」では
済まされない事だらけなのだ。
皆は一体いつどのタイミングでこういう事を知るのだろう、
やはり入社と同時に教育されるのだろうか。
会社に向かう早朝の電車の中で
私は豪雨のように降りかかる現実に思いを馳せ、首をすくめていた。

私は当時18歳で、老後の事を考えるには非現実的すぎる年だった。



一緒に入社した同僚は女性二人、男性六人
私を含めて九人であったが
男性には一年間の工場勤務が義務付けられていた。
しつこいようだけど男女雇用機会~の施行以前であったからだ。
なので私達は一年先に入社して工場勤務を終えた、
先輩の男性社員と一緒に教育を受ける事になった。
一緒に入社したM達は同期にも関らず一年遅れになるのだが、
男女~の施行以前であったため女性は
残業出来る時間が笑っちゃうほど制限されており
一年の差などすぐに追いつかれ、追い抜かれてしまうのだ。
それは又後々の話。



「私達」の話をしようと思う。
同期入社の二人はSとO、三人とも互いを苗字で呼んでいた。
(ちなみに私はH)
働き始めてすぐ、私は二人のうちどちらとも
一緒に仕事はしたくないなと思った。
Sは典型的な女の子で、明るくてお喋り好きで楽しいんだけど
仕事に関しては責任感が無く甘えてばかりで
一緒に仕事をするのはとても疲れた。
Oは穏やかで性格に関しては可も無く不可も無く、
だが手先があまりに不器用で仕事が遅すぎた。
二人の事は今でも同僚として、友達として好きだけど
仕事をするってそういうものじゃないのだ。


(続)