化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

Marylandの決断

2006-04-10 | エネルギー
Marylandは東部7州で構成されるthe Regional Greenhouse Gas Initiativeに加盟する法案を制定した。

RGGIとは2003年に米国東部9州により結成された組織で、2019年までにCO2排出量を10%削減のための、排出制限と取引の仕組みである。ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット、デラウエア、メーン、ニューハンプシャー、バーモント、ロードアイランド、マサチューセッツのうち、昨年マサチューセッツとロードアイランドが脱退したので7週になっていた。

メリーランドが新たに加わったことで現在は8州になっている。メリーランドの法はCO2削減とともに有害ガスの排出も抑制している。NOx、SOx、水銀の排出量に上限(Cap)が設けられた。メリーランドには石炭火力発電所が多くあり、CO2排出量が必然的に多くなっているという事情がある。

州政府はCO2排出削減により電力供給の不安が生じることは無く、電力価格の上昇もわずかである、との調査結果を発表している。しかし、RIとMAの脱退はその2点が担保されていないという懸念によるものである。

メリーランドでも知事ならびに電力会社から同様の懸念が表明され、2009年1月1日までにさらに総合的な調査を行い、価格と安定供給が確保される見通しが無い場合は、加盟しないことと法案自体は修正されている。

カリフォルニアでの動きとも呼応して、連邦政府が温暖化防止に積極的関与をしない中で、州政府が動き出している。

一般教書演説

2006-02-03 | エネルギー
日本の新聞にもブッシュ大統領の一般教書演説に関する記事がいくつか載っています。エネルギーについても言及しているということなので、HPから原文を読んでみました。

テキスト印刷して6ページになりましたが、その半分のほぼ3ページ分をテロとの戦争のことで費やしています。文中にはやたらとfreedomとdemocraticという単語が出てきます。いまさらながら、9.11の影響というのはすごいものだと思わずに入られません。後世からブッシュは9.11大統領と呼ばれるかも。

次の2ページで具体的政策に言及しています。Keeping America competitiveという書き出しのパラグラフが6つあります。内容は、市場開放、移民、社会保険・医療保険、エネルギー、教育に関するものです。教育に関しては具体的に数学と理科の能力を引き上げて、ナノテク、スーパーコンピューター、代替エネルギー源などの技術開発を進めようといっています。3万人の数学と科学のプロフェッショナルが高校の授業で数学と科学を教えるようにするといっています。教育を大事にすることは洋の東西を問わず重要です。しかるに昨今の日本の大学は、。。。これについては後日に。

最後の1ページはA hopeful societyという書き出しで社会正義や倫理的な事項となっています。

さて、本題のエネルギー問題に関してですがAdavanced Energy Initiativeと称して、DOEを通じてclean-energy研究の予算を22%増額するといいます。具体的には、zero-emission石炭火力発電所、革新的太陽光・風力技術、クリーンで安全な核利用をあげています。

一方、自動車関連研究にも言及し、ハイブリッドや電気自動車用のバッテリー、水素自動車(燃料電池自動車に限らない)やバイオエタノール(コーンからのみでなく、木質チップ・枝、草からも)を具体的にあげています。バイオエタノールは6年以内に実用性も経済性も達成するとしています。

自動車だけを具体的に上げているのは「もうGMやFordには任せておけない。日本の会社に勝つには国家PJとして遂行する」という意味と思われます。

これらを通じで中東からの原油の輸入の75%を削減するという壮大な計画となっています。中東依存から脱却し、石油依存から脱却して環境を改善するとしています。

これに対してIPAA(Independent Petroleum Association of America)とNPRA(National Petrochemical & Refiners Association)の会長がそれぞれ声明を出しています。代替エネルギーの研究には是非力を入れて欲しいが、現在全エネルギーの65%を石油に依存しているのだから、国内の石油・ガス資源開発にも力を入れて欲しいといっています。また、石油・ガス製品の価格統制や管理体制を敷いたり、懲罰的手段を講じることのないようにして欲しいと要望も忘れていません。懲罰的手段とは、議会の一部から「石油会社は今年は棚ボタ的に儲けているのだから、特別に税金を沢山取れ」という声をけん制してのことです。

原文を読むことで日本の新聞で書いてある内容は同じでもそのニュアンスの違いが少し分かったような気がします。

2030年に石油依存度40%に

2006-01-17 | エネルギー
経済産業省は2030年までのエネルギー政策の基本方針となる新エネルギー戦略の検討に着手した。新・エネルギー政策であって新エネルギー・政策ではないでしょう。

一次エネルギーに占める石油の割合を現状の50%から2030年には40%未満にするという。ということは、石油以外の一次エネルギーの利用を引き上げることを意味する。天然ガスの積極的活用や新エネルギーの利用を増やす方向である。そのため、新エネルギー産業の確立を推進するそうである。

また、電力需要に占める原子力の割合は現状の30%を少なくとも維持、それ以上に高める方針である。そのため使用済核燃料を再処理してプルトニウムを利用する核燃料サイクルの早期確立も目指す。

石油依存度を下げるもう一つの方法に、石油利用の省エネを推進し、石油使用量そのものを他の一次エネルギー使用量に対して相対的に減少させれば、石油依存度は下がる。そのため、2030年までに日本のエネルギー効率を現在より30%程度改選する。
現状はGDP1万ドル当たりのエネルギー使用量は原油換算1.22kLであるから、0.85kLまで下げることになる。原油価格を$60/bblとすれば1.22kLは$460になる。1万ドル生産するのに460ドル、つまりエネルギーコストは4.6%というのが日本の生産構造とも言える。

電力は原子力や天然ガスに増やす。暖房等の熱需要についても電気利用や天然ガスへの転換が可能であるが、自動車すなわち輸送部門(船や飛行機も)では石油に代わるエネルギーは見当たらない。石油ほどエネルギー密度の高い燃料はないからです。経産省の目標では、現在ほぼ100%に近い運輸部門の石油依存度を80%以下にするとなっている。ここが一番難しいが、電気自動車などで代替できる分野は意外とありそうです。


投票率ワーストワンかも! 静岡県富士市で12%

2005-12-26 | エネルギー
本ブログのテーマとは少しかけ離れますが。

市議会議員の補欠選挙で投票率12%であったとのこと。

いったい選管は何を考えているのか。年の瀬の3連休最終日を投票日にすること自体、投票にこなくていいと言っているも同然と考えなかったのだろうか。富士市内でこれまで過去最低の23%を下回ったことに選管関係者はがっくりとか。
こんな日程設定で23%を上回るはずがないし、そもそも23%を上回ればそれで良しと考えていること自体、常識はずれでしょう。
選管は投票率100%を目指さなければならないし、そのために法の許す範囲ではあろうが、投票率向上の方策を探すのが仕事でしょうに。

もう日本も日曜投票をやめるべきです。そもそも、サービス業や交代勤務で日曜が休日でない人口比率はかなり多いはずです。さらに言えば、投票日を1日に限らず1週間くらいにするとかして、投票率そのものを向上させる工夫をすべきです。カナダなんてやってるじゃないですか。

確かに選挙は国民の権利であり、それを放棄(棄権)するやつの方が悪いとの考えはあるでしょうが、選挙のやり方そのものを旧態依然として踏襲している選管の職務怠慢は批判されるべきです。ただし、選管だけが悪いわけでなく、自治体や議会そのものに責任の大部分はあるのでしょうが。


立候補者2名で有権者の20分の1とか、30分の1の得票率で当選できてしまうことは尋常ではない。



2030年の世界エネルギー見通し

2005-12-14 | エネルギー
エクソンモービルから2030年のエネルギー見通しが発表されている。

世界の経済成長と人口増加から、2030年のエネルギー需要は225MBDOEから50%増加して335MBDOEになると予想される。増加量のうちの80%はnon-OECDである。

エネルギー利用効率を増大させることはキーである。
石油、ガス、石炭が依然として主役であり、80%を依存している。
残りの20%の内訳は原子力20MBDOE,水力10MBDOE、バイオマス32MBDOE、太陽光1MBDOE、風力2MBDOEとなっている。

既存の化石燃料に依存していることから、CO2排出量は現状の250億トンから40億トンへ年平均1.7%の増加である。もちろん、経済成長・人口増加が大きくエネルギー利用効率の低いnon-OECD地域からの排出量増加が80%を占めている。

石油の需要は80MBDから110MBDに増加するが、non-OPEC出の増産は10MBD程度にとどまるから、残りの20MBDの増産はOPECが担うこととなる。

2005年現在の原油埋蔵量は3.2TBOと推定される。さらにnon-conventionalな資源が4TBOあるとしている。仮に、3.2TBOを2030年の生産量の110MBDで割り返すと80年という答えが得られる。石油は当面なくならないといえるが、non-OPECの石油生産は2015年頃にピークとなるので、それ以降の消費増加の分はOPECによる増産に頼ることとなる。

石油の用途の60%は車の燃料である。北米や欧州での輸送用燃料は現状でほぼ頭打ちとなるが、Asia Pacificでは4倍に急増する。
ハイブリッド車は北米と欧州で2010年以降目だって増え、2030年にはfleet台数の10%、新車販売の30%に達する。

この辺は日本の感覚からするともっともっと前倒しのように思うが、ExxonMobilはこれくらいゆっくりを想定している。

エネルギー消費としての電力は2.0%の伸びで2030年には130MBDOEとなっている。発電のための1次エネルギーは、石炭、天然ガス、原子力の順であるが、Asia Pacific出の石炭の発電消費は3.9%の伸びで倍増し、40MBDOEとなる。
日本での石油の発電消費割合は21%で最も大きいが、世界では5%未満ということになっている。

世界のエネルギー消費は、石油を輸送用燃料として利用し、(ガスもあるが、原子力自動車や石炭自動車はできない) それ以外の石炭、ガスを発電用にまわすということから、日本とはずいぶんとその構造が異なっている。

世界のエネルギー消費

2005-09-22 | エネルギー
北米Gulf地域にカトリーナに続き、リタが来襲とのこと。
これはもはや人類の自然破壊活動に対する天の報復である、などというつもりは毛頭ありませんが、やはりどこかおかしいのでは、と考えてしまいます。

さて、Gulf地域は原油・天然ガス生産基地や石油精製・石油化学工場が集まっていることから、原油価格のさらなる高騰を呼ぶ、市中ガソリン価格がさらに上昇してインフレ圧力となる等の観測がなされています。それもさもありなん。

そんなニュースを聞きながら、アメリカは一体どれくらいエネルギーを消費しているのか気になったので、他の国と比較してみました。

国名   日本  ドイツ  アメリカ   中国
GDP    4.87  3.00   11.73   1.64 (兆ドル)
人口   12,768  8,260   28,142   129,988 (万人)
GDP   3.81   3.63   4.20   0.13 (万ドル/一人)
経常収支   1,762  1,141  ▲6,659   686 (億ドル)
エネルギー消費   593   391   2,703   1,386 (*原油換算・百万kL)
うち電力消費  119   59   292   46(原油換算・百万kL)
エネルギー消費  4.64  4.73   9.60   1.07(原油換算・kL/一人)
エネルギー消費  1.22   1.30 2.29 8.23(原油換算-kL/万ドル)

*原油比重=0.85で換算している。

アメリカは一人あたりGDP4.2万ドルであり、一人あたりのエネルギー消費は日本の2倍強、電力消費は2.5倍になっている。燃費の悪い車を一人一台乗り回し、広い住宅に住み(うらやましいですが)、電力を食う家電製品で家が埋まっているという姿が想像できます。10年前でも洗濯乾燥機、食器洗い機があるのは当たり前の国ですから。
(もっとも彼らの家は広いですから、家中が家電製品で埋まっているという表現は当たらないかも)
総消費量では日本の4.5倍です。確かに多い。せめて日本・ドイツくらいには省エネ進めてくださいといいたいですね。
もちろん侮れないのは中国で、一人あたりでは日本人の1/4程度の消費量ですが、人口は10倍ですから総量では2.3倍も消費しています。アメリカのおよそ半分ですが、これは今後急激に増え続けるでしょう。
今でも毎年、夏場には電力不足で停電が頻発しています。
一人あたりのGDPが日本の1/30ですから、今の30倍になるという計算も出来ます。少なくみても、一人あたりの消費量が今の日本と同等となると仮定すると、総量では現在のアメリカの2倍以上です。
そうならないことを祈るばかりです。