化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

ドイツは石炭を特別扱い

2006-06-30 | 石炭
ドイツは石炭産業をEU炭素トレーディングプログラムから除外すると発表した。石炭産業とは石炭を燃料として使っている産業という意味だ。炭素トレーディングプログラムとは定められた以上の量のCO2を排出する時は、その超過する分の枠を取引所で買わなければならないという仕組みです。

ドイツ首相と連立内閣はドイツのCO2排出制限を2008年から2012年の3.4%だけカットすることに同意したという。これに批判的な人は、石炭はもっとも多くのCO2を排出する(CO2排出係数が最も大きい)のだから、これを除外してしまうとCO2削減そのものが意味をなさなくなると主張している。とはいえ、石炭なんぞを入れたらば、足元一体いくらお金を払えばよいのか分からないし、そもそも石炭の分をカバーできるほどの排出権の量があるのかということだろう。
欧州委員会はドイツの今回の行動に対してコメントをする前に、よく検討するとしている。

ドイツの環境大臣は今後ともドイツは国際社会あるいはEU内において気候枠組みの中でパイオニア的な役割を果たし続けるといっている。まー、何をどうやって果たすのかはよく分かりませんが。

排出権取引において、導入初期にあっては需要の方が大きくなる。2005年に始まった第一フェーズでは石油精製、鉄鋼、セメント、窯業、紙などの産業ではCO2排出の特別な枠を必要としている。

これに対して、イギリス炭素トラストはEUメンバー各国は排出権の価格暴落を避けるために国が許可する枠(交付枠)を19%減らしたと主張している。

企業は国から交付された枠よりも多くのCO2を出す時には、排出権を取引所で買い、逆に余った時には売ることになる。どこの企業も買うほうには回りたくないので、交付枠を多くもらうように働きかける。国が各企業の枠を決めるというのは、昔の日本の護送船団方式です。国がある企業に公布する枠を決めるにあたっては、その企業あるいはその業界の実績をベースにするしか無い。ところが、昔からCO2排出削減に取り組んできた企業は、少ない排出量を基準にして決められる。一方、CO2をばんばん出してきた企業は、より多くの排出枠をもらえることになる。これでは頑張った人が存することになってしまい、これが本当にうまく機能するのかどうかという疑問がついて回る。

今回のサンクトペテルブルグサミットでは、ドイツは気候枠組み問題を避けて経済問題を中心にすえてがっているが、英国は逆にこの問題をトップに持って期待という綱引きがある。
さらには原子力発電廃棄物の国際管理にかかわるような議題も想定されている。小泉首相としては最後のサミットだが、物見遊山というわけには行かない。

アメリカでプリウスを買ったら

2006-06-28 | 省エネルギー
アメリカでプリウスを買ったら、何年で元が取れるかという非常に下世話な話。
もう少し丁寧に言うとハイブリッド車の燃料経済性についてである。やっぱ、普通の人(自動車購入者の多くは普通の人のはず)の感覚ではこうなる。

車種   カムリ  プリウス
車両価格 $20,801 $24,030
雑費     -    $500
免税     -  -$3,150
合計   $20,801  $21,380

ということで車両の合計購入価格はプリウスのほうが$579ドル高い。しかし、カムリの燃費は24mile/gallonでプリウスは44mile/gallonです。年間12,000マイル走ったとしてガソリン価格2.5ドル/ガロンとすれば、プリウスのほうが年間にガソリン代が568ドル少なくなる。ということは、車両購入価格の差をほぼ一年で埋めてしまい、2年目からはガソリン代が568ドル/年だけ浮くという計算になる。

さらに昨年以降の原油高騰によりガソリンも3ドル/ガロンになっている地域もあるので、そこでは年間682ドルだけガソリン代が安くなる計算。

ここでプリウスの欄にある雑費とは消費税、メンテナンス、保険、ローンにかかる費用となっている。あくまでカムリとの差額です。裏返せばカムリのローンの金利は安く設定されている。それはGMやFordが半分やけで金利ただローンなぞをやっているので、それに少しだけ対抗しているということでしょう。

大きいのは免税の3,150ドルです。低公害車、環境に良い車なので奨励しようということで、税金免除(Tax credit)がついています。残念ながらプリウスはこの先奨励しなくても売れてしまうという理由で、この税金免除はもう直ぐなくなるらしい。

そうなるとプリウスとカムリの値差は3,729ドルとなり、年間あたりのガソリン代の差の682ドルで割り返すと、いわゆる元を取るのに5.5年かかることになる。厳密には5年先に払うガソリン代の差額を現在価値に割り引いて、と計算するんだろうがまーそこまでしなくても。
とにかく補助金なしでもプリウスは元が取れるというお話です。



バイオブタノール

2006-06-27 | バイオマス
日本でもサトウキビから作ったバイオエタノールをガソリンに混ぜて、CO2排出を減らそうという実証が沖縄県各地で実施されている。宮古島では、全島のガソリンスタンドをエタノールガソリン(E3)にして、大規模に実証試験を行なうようである。しかしながら、エタノールにはいくつかの課題も指摘されている。

石油連盟の発表によれば、以下のような課題があるという。
ガソリンにエタノールを混合すると蒸気圧が上昇し、光化学スモッグの原因物質である燃料蒸発ガスが増加する。
既存車に3%以上の高濃度エタノールを使用するとNOxが増加する。
水分が混入するとガソリンとエタノールが分離し、燃料性状の変化や自動車部品値の腐食・劣化が発生する。水分混入防止のためには約3,000億円の設備投資が必要。石油会社が自腹で3000億の投資をするのはいやですよ、とは書いて無い。

世界におけるエタノールの年間貿易量は約300万kLのみで、輸出余力があるのはブラジルのみ。日本でE3に必要なエタノール量は180万kL。原油を中東に握られているように、エタノールはブラジルに握られることになる。
原料がサトウキビであるため、天候や食料品価格により生産量・価格が大きく変動する。んー今年のような冷夏では、エタノールの生産量が落ちて価格が上がるということですね。

輸入ガソリンが35円/Lであるのに対してエタノールは45円/Lであり、価格が高い。さらにエタノールの熱量はガソリンよりも30%少ないので、結果として燃費(1Lで走れる距離、ということは100円で走れる距離)が悪くなる。ということで、年間400億円のコストアップになる。これは消費者価格の上昇になるのですよ、とまでは書いて無い。

で、石連としては経済性には目を瞑るとしても、環境への悪影響をなくすためにエタノールそのものではなくて、エタノールとイソブテンからETBEを製造して利用すべき、としている。確かに、その方が環境には良いのだろうが、経済性とETBEを製造するエネルギーロスを考えると、本当に出来るの?

ということで、エタノールに代わるアルコール燃料をBPとDuPontは共同で開発しますという発表がありました。次世代のバイオ燃料と銘打っておりますが、バイオブタノールです。DuPontがこれまで培ってきたバイオテクノロジーとBPの持っている燃料油技術やマーケッティングノウハウをあわせて、エタノールに対抗してバイオブタノールを市販していこうというものです。

具体的には2007年にイギリスのBritish Sugarが持っているエタノール発酵設備を改造してブタノールを生産という。ブタノールの利点には次のようなことがある。

蒸気圧が低く、水への溶解性が少ない。これにより既存のインフラ(ブレンダーや油槽所)をそのまま使用でき、改造の必要が無い。
高濃度にガソリンに混入する場合でも、自動車の改造が必要で無い。
エタノールよりも燃費がアップする。
ということで、価格以外のエタノールの課題を解決してくれるようです。

ブタノールの原料はサトウキビ、てんさい、とうもろこし、小麦、カッサバ(何か良く分からん)となっている。将来的には、草やわら、とうもろこしの茎なども使用できるようにするそうだ。アセトン・ブタノール菌というのは古くから知られているそうなので、これを改良しているのでしょうか?

価格とエネルギー効率(製造の)を踏まえたうえで、エタノールか、ブタノールかの比較になるのでしょう。

冷夏です

2006-06-23 | 環境
冷夏です。誰がなんといってもこれはもう冷夏としか思えません。6月も下旬になったというのに、日中の気温が20℃を超えた日が一体何日あったんだろうか。衣替えということで、夏用スーツに着替えたものの、夜帰るころには風に吹かれて寒いのなんの。

寒いだけならまだいいが、日照時間が以上に少ない。十勝地方では例年の17%だそうな。農産物への影響は必須です。

これもやっぱり、地球温暖化のせいでしょうか? 二酸化炭素排出による地球温暖化の影響で、冷夏の年が増加するのでしょうか。冷夏になると夏でも暖房を入れるので、ますます二酸化炭素排出が進んで温暖化が進み、そうすると冷夏がまたやってくるという、デフレスパイラスのようなことになるのでしょうか?

温暖化防止のためのクールビスというノータイ運動は非常にありがたいのだが、冷夏は全然ありがたく無い。

地球温暖化で仮に気温が3℃くらい上昇してくれると、農産物の収穫量は確実に上がるでしょう。ということは、バイオマスの収穫量も上がるということになり、カーボンニュートラルなバイオマス燃料の生産も増える、ということにならないか。温暖化はバイオマスの利用にとっては追い風といえるはず。

でも、北極圏の氷が解けて海面が何センチ(何十センチだっけ)か上昇に、水没する土地が出る。まー100年くらい先の話ですから、これから家を建てる人は少なくとも海抜100mくらいのところに建てればいいんじゃないの。なんなで順々に海抜の高いところに引っ越していけば、100年後に水没することも無いんじゃないか。とすると、必然的に首都移転をせねばならなくなり、それはそれでいいことではないのかなー。

ちょっと位の地球温暖化は大目に見ても良いという見方は出来ないもんか。
んー、無理があるかな。

カーボンフリーの石炭火力発電所

2006-06-20 | 石炭
ワールドカップ開催中のドイツでの話し。Schwarze Pumpeという所にスウェーデンのVattenfall社がカーボンフリーの石炭火力発電所を建設した。石炭燃焼により生成する二酸化炭素を分離回収し、地中に圧入して大気に放出しないという方法である。プラント運開のセレモニーにはドイツ首相も参加したという。しかしこのプラントはデモンストレーションで、ドイツは今後5年間で8箇所の石炭火力発電所の建設を計画している。もちろん経済性の観点からそれらは二酸化炭素を回収する設備は有していない。

ヨーロッパの国は一般に温暖化対策に積極的だと思われているし、事実その通りだろう。ドイツやイギリスは今日とプロトコルでの削減量をたいした努力もせずに(失礼)、達成できる見通しという。このことからそもそも削減量の設定が不当に低いのではないかという批判がある。もっとも欧州は90年以降の経済成長が緩やかで、つまりは経済的にはあんまり発展しておらず、旧式の石炭火力を新型石炭火力に更新するだけで大幅なエネルギー効率の向上が見込まれ、それによりCO2削減量が達成できてしまうという。

しかし石炭に大きく依存していることもまた事実であり、そのことは広く認識されているとはいえ無い。例えばドイツは石炭火力により発電の50%をまかなっている。日本は24%だから如何に石炭への依存度が高いかが分かる。中学校の頃習ったようにドイツではライン地方やルール地方(だったか?)で石炭が取れるので、国内資源の石炭を利用すること自体は自然だ。

さらに近年の原油価格の高騰や、ロシアがウクライナとの天然ガス価格交渉時においてパイプラインのガス供給を停止するという強硬手段(売り手のロシアにすれば当たり前の作戦か)を目の前で見せられては、経済面やエネルギー安全保障の両面から石炭の比重をあげるのは当然とも言える。

石油は中東に偏在しているし、天然ガスはロシア、イラン、カタールで58%を占めているのに対して、石炭はどこの国にもある。アメリカにも中国にもあるので、取り合い合戦にならずに済んでいる。唯一の輸入大国は日本になるのでしょう。日本の炭鉱も石炭を掘りつくしたので閉山となったのではなく、価格面で海外炭にまけ、石油へのエネルギーシフトが起きたので閉山したのであり、資源としてはまだ埋蔵量はかなりあるものと思われる。もっとも現在の石炭輸入量は1.5億トン/年で、1961年のおける最高産出量は5500万トンなので国内炭だけでまかなうのには無理があることも事実。それにしても、国内の炭鉱に後どれくらい石炭の埋蔵量があるのかは興味深いところではある。

頑張れ オイラーズ

2006-06-19 | 環境
日本中の関心がワールドカップに注がれ、大リーグではイチローが連続試合安打を続けている。日本真タック話題にならないが、NHLはスタンレーカップファイナルの真っ最中です。2年前くらいですか、きむたくのTVドラマでアイスホッケーやってましたね。残念ながら日本では日本リーグのチームが減ってしまって、マスコミで取り上げられる機会も全くなくなりました。でもホッケーは地上最速にして最強のボールゲームです。NHKさん、スタンレーカップくらい放映してください。でないと受信料拒否しますよ。

エドモントンオイラーズが15シーズンぶりの優勝に向けて頑張っている。相手はCarolina Hurricanes。ノースカロライナのチーム。1勝3敗と先に王手をかけられたが、第5戦はオーバータイムの末勝利し、第6戦は5-0と完勝して逆王手をかけて、敵地に乗り込む。グレツキーやメシエを要して5回の優勝を遂げた黄金の80年代以降、久しぶりのファイナル進出である。なんとしても、カップを手にしてエドモントンに凱旋して欲しい。と同時にカナダのチームが優勝するのも93年のモントリオール以来だそうだ。その意味でも是非勝って欲しい。

第7戦でホームチームが勝った例は11-2なのだそうだ。オイラーズにとってはとても不利な統計データだが、敵地で優勝を決めた例が無いわけでは無い。
やれば出来るぞ。フレーフレー オイラーズ!

環境財務諸表

2006-06-16 | 環境
NYTimesの記事より。27人の投資家グループが証券監視委員会に対して要望書を送ったそうだ。その内容によれば、企業の定期的財務報告の中に気候変動の問題とリンクする財務的なリスクも入れるようにすることである。

例えば、企業の持つビルが気候変動により引き起こされるハリケーンの通り道に無いかどうか、あるいは温室効果ガスの排出が帰省されるとその企業のコストは上昇するのかどうか、などを投資家は知る権利があるという。

日本でも環境報告書を発行して、自分たちがどれくらい温暖化を初めとして地球環境維持に後見するよう努力しているかをPRしている会社もある。
簡単に言ってしまえば、CO2を減らす努力をしていない、厳密に言うならCO2が減っていない企業は市場で排出権を買わねばならず、それは確実にコストアップでありかつ、企業イメージのダウンでしょう。

アメリカは京都議定書を批准してはいない。だからといって温暖化対策に全く協力しないというわけには行かないのだろう。米国企業には多国籍企業が多いのだから、海外会社はCO2削減を義務付けられている国で活動しているものもあるはずで、親会社が米国だからといってその国の決まりを守らなくても良いというわけにはならないですから。

こうなれば海外の子会社がやっているのだからということで、米国の親会社も必然的にCO2削減に取り組むという姿勢になるのだろう。そういう流れに逆らうような会社がもしあるのならば、これは公表してください、というのが投資家たちの要求のようである。

地球環境保全に寄与するということだけでは飯は食えないが、地球環境保全に寄与しないと飯を食っていけない時代です。

クリーンコールテクノロジー

2006-06-15 | 石炭
石炭は旧くて新しい燃料である。液体燃料に主役の座を譲ったとはいえ、埋蔵量から見ても引き続き主要なエネルギー源になるだろう。但し、石炭の燃焼により排出される有害物質を除去する必要はますます高まる。この有害物質を取り除くのがクリーンコールテクノロジーと呼ばれている。

有害物質とは具体的にはSOx、NOxと煤塵である。最近はこれに温暖化ガスのCO2も含めて考える。日本の技術は世界でも比類無いくらい高い。発電所で1kWhの電力を発電するのに排出される有害物質の量で比較すると、日本の排出量はSOxで0.2g/kWh、NOxで0.3であるが、アメリカではSOxで4.8、NOxで2.1と桁違いである。

有害物質を取り除く装置には以下のようなものがある。NOxは排煙脱硝装置でアンモニア還元法により除去される。装置そのものは煙道のダクト内に設置され、NOxをアンモニアと反応させて、窒素と水に変える。反応のためにハニカム形状の触媒が使用される。

煤塵はフライアッシュとも呼ばれるが、石炭中に含まれる鉱物(金属)の微粒子である。大きさは0.5-50ミクロンで排煙に混じって排出される。これは電気集塵器で捕集される。

SOxは石灰石(CaCO3)スラリーに吸収されて石膏(CaSO4)となる。排煙脱硫装置は、排煙脱硝装置、電気集塵器の後段に設置され、胴体の太い塔(脱じん塔、吸収塔)より成る。
日本の発電所ではこれらの設備を備えているが、海外では必ずしもすべての発電所でこのような設備を備えているわけでは無い。

以上の装置は燃焼後のガスをクリーンにするものであるが、これに対して石炭からクリーンな燃料を製造し、これを燃料に使用する方法もまた、クリーンコールテクノロジーの一種である。石炭の液化、ガス化、ガス化したものからさらに液体燃料を合成する方法などである。

以上の技術はそこそこ完成の域にあるが、燃焼後のCO2の処理についてはまだまだ開発を進めていかなければならないことが多い。

石炭の需要

2006-06-14 | 石炭
NYTimesの記事から中国における石炭の使用に関して。中国の石炭火力発電所からの排煙が偏西風に乗ってソール経由でアメリカ西海岸のオレゴン、ワシントンまで到達しているそうだ。このような微粒子は肺疾患を初め多くの病気を引き起こす。中国からのありがたくない輸出品である。中国の石炭消費量は2025年には世界のそのほかの国の合計よりも多くなろう。

排煙中のSO2の健康被害により中国では毎年40万人が早死にするだろうという意見もある。もちろんSO2は酸性雨を引き起こす。この微粒子は太陽の熱線を宇宙に反射させる効果も有しており、これは一時的ではあるが地球温暖化を抑制する方向に働くという。
もっとも同時に排出されるCO2の温室効果は何十年も続くことになるので、SO2の温暖化抑制効果などは直ぐに帳消しになってしまう。

中国の石炭需要は過去2年間、年率14%で増加している。これは毎週、新設の石炭火力発電所が稼動していることを意味している。この電力はダラスやサンディエゴの一般家庭分に相当する、といわれてもぴんと来ないが、両市の人口はそれぞれ120万くらいです。

中国の後ろにはインドが控えていて、インドも石炭火力に力点を置いている。2030年にはインドが中国の人口を超える、という。中国の人口は13億人、インドは10.6億人である。しかし、一人っ子政策で人口抑制を図っている中国ではあるが、統計に載らない人口もいるようで、現在の中国の人口は15億人を超えているという人もいる。まー、いずれにせよ多すぎるということです。

中国などで今後の石炭利用に当たっては、日本を初めとする環境技術先進国の技術を取り入れて高効率利用をせねばならないが、安い国産の技術で済ませたいという本音もある。また、これまで建設している旧型炉の寿命は75年くらいはあり、おいそれと石炭利用効率が向上するものでも無いという現実もある。

石炭の需要に関する数値をまとめておく。全世界では年間43億トンの石炭を消費しているが、そのうち中国は20億トンです。石炭はすべて中国国内産であり、わずかながら輸出もしている。石炭の可採年数は230年といわれているが、今の調子で中国、インドでの需要が増加してしまうと可採年数は短くなる。それでも石油の40年に比べればはるかに埋蔵量は多く、また世界中にぷんぷしている(一部の地域に偏ってはいない)という利点がある。しかしCO2排出係数が大きいという、10年前には考えられないような不利な点が出てきてしまっているのが困ったところだ。
日本はというと全量を輸入に頼っているが、1.5億トンの石炭需要がある。これは鉄鋼と電力でほぼ半々に使われている。日本人一人当たりにすると年間1.2トンの石炭を使っている計算になる。1.2トンという量はちょうど自家用車1台と同じくらいの重さです。ちなみに輸入先はオーストラリアが最も多く、58%になっている。
 
次回に続く。

ワールドカップ

2006-06-13 | スポーツ
それにしても昨夜は惜しい試合でした。こういうのを勝てる試合を落としたというのでしょう。逆に見ればヒディング監督は自らの作戦通りの勝利で、してやったりという気分でしょう。でもまだまだ分かりません。ブラジル以外の3チームが1勝2敗で並ぶこともありえます。WBCの時のように、可能性はまだまだ残っているのですから。

たかがサッカーという1種の競技なのにワールドカップは何故これだけ世界中の人が盛り上がるのでしょうか?カーリング娘やイナバイアーも無いのにオリンピックより盛り上がるのはなぜでしょうか?

オリンピックではアメリカや中国という大国がいて、国が主体として強化を図りメダルの数を競っている。国威発揚というやつですか。そうなると個々の競技は全体の中に埋没してしまう。この大国がいるということと、国が強化しているということがオリンピックをつまらなくしている原因でしょう。

しかしワールドカップでは間違ってもアメリカは優勝し無い。中国にいたっては本大会に出場すら出来ない。国際政治の世界でのスーパーパワーが通じないところがワールドカップの愉快なところでしょう。

ところで、アメリカや中国が蚊帳の外という意味では、京都議定書も同じです。こちらはロシアというエネルギー界の大国が参加してはいますが。
でもワールドカップと違って京都議定書にはアメリカも中国も参加しないと、実効が上がらないのは言うまでもありません。

ついでながら、ぜんぜん話は違いますがどうしてオリンピックとパラリンピックは同時に開催しないのでしょうか?
同じ会場を使って同じ競技をするのだから、健常者と障害者の試合を同時開催すればお互いの競技者が刺激し合えるし、見ているほうも面白い。開催期間が長くなるという意見もあろうが、今だって開会式に出た競技の人は閉会式を待たずに帰国するし、閉会式にでている競技の人は途中から会場入りしています。開催期間が3週間くらいになってもどうということは無いと思うのだが。絶対同時開催のほうが盛り上がります。

自動車の燃費

2006-06-12 | エネルギー
トヨタのハイブリッド(プリウス、エスティマ)の累積販売台数が世界で50万台を超えたそうだ。97年の発売から足掛け10年かかったことになる。97年の発売初年は年間300台だったが、2005年は18万台と大きく増加している。逆に言えばトヨタは少なくとも10年先を見てプリウスを開発していたということだろう。2000年には欧米での販売も開始し、2003年に二代目プリウスが上市された頃から、販売は急増した。特に海外が堅調で、国内総計20万台に対して海外の方が30万台と多い。

ハリウッドスターたちがアカデミー賞授賞式にプリウスで乗り付けるなど、大いに人々の関心を引いたのであろうが、なんといってもその低燃費があげられる。

カタログ値の10・15モード燃費は30.0km/Lである。JHFCでの実走行結果では20.7km/Lであった。比較のために同時に行なわれた一般車(ガソリン車)は10.2km/Lであるので、一口に言えばハイブリッドはガソリンが半分で済むということになる。

米国家庭での自動車のエネルギー消費についてNEDOのレポートがある。それによれば2001年の燃費は49.5ガロン/kマイルとある。日本の燃費の計算とは逆の単位になっている。日本でも低燃費といえば、ガソリン消費が少なくてよいことの意味なのだから、本来はL/kmという計算をしなければおかしい。どうして日本の燃費の単位はkm/Lなのかは、何か理由がほかにあるのだろう。とにかく、米での家庭用自動車の燃費を日本の単位に直すと8.5km/Lとなる。日本の車は全平均で20%も燃費が良いことになる。これは米国の車種がそもそも大型で重たいことによるのであろう。

米国では運輸部門は2番目に多くのエネルギーを消費しているが、CO2排出量は産業部門を抑えて1位だそうだ。米国では2,000万BDの石油製品が消費されるが、1,200万BDの原油・製品が輸入されており、OPEC依存率は40%である。このうち運輸部門では1,360万BDが使用されるが、自動車用ガソリンは890万BDになる。ガソリンの全石油製品中の割合は45%になる。

一方、参考までに日本の数値もあげてみた。482万BDの原油等を輸入しており、なんとOPEC依存率は92%である。Bushは中東への原油依存度を下げると年初の一般教書でぶち上げたが、日本はあまりに多くを依存しているので、とてもそんなことはいえない。余談ではあるが、オイルショック後85年には72%まで低下していましたが、その後の消費量増大に乗ってOPEC依存度は拡大してきています。
話を戻して、軽油・ジェット・ガソリンなどの主として輸送用に利用される量は179万BDで、このうちガソリンは105万BDである。ガソリンの比率は22%であるから、米国のガソリン比率は日本の2倍になっている。このことからも如何に米国でのガソリン消費量が多いかが分かる。

2001年の家庭のガソリン代は年間1,520ドルだそうだ。電気・ガス代が1,493ドルなので、これよりも多いことになる。110円/$で計算するとひと月のガソリン代は14,000円になる。ガソリン価格が日本の約半分であることを考え合わせると、如何に米国家庭でのガソリン消費が日本よりも多いかが理解できる。

2004年以降の原油高騰によりガソリン価格も高騰しているが、これが米国家庭を大きく圧迫していることは日本の比ではない事が分かる。しかし、2001年時点ではSUVの販売台数がまだ伸びており、一般車の10台に4台がSUVという大型化が進んでいた。その後もSUVの販売は伸びていたのであろうが、2004年、2005年にいたってフォードやGMの凋落振り、プリウスの販売急増を見ても分かるように、米国消費者の動向もガラッと変わっただろう。

バイオマスタウン

2006-06-07 | バイオマス
アメリカのバイオマスタウンの話。

シカゴからインディアナポリスに抜けるI65の間にあるRaynoldsという人口533人の小さな町。この町はとうもろこしと大豆と養豚農場が主な産業で、高齢化も進んでいる。この町が中東原油と決別し、バイオマスタウンとして自立するという。

インディアナ州はバイオマスからのエネルギーのみで成り立つバイオマスタウンのモデル地域を探していた。条件は、人口が少なく、家畜が多く、大学から近く、大きな道路に面しているというものだった。担当者は地図を広げてRaynoldsをその候補にした。バイオマスタウン構築に当たっては、州政府や連邦政府からも交付金が出される。

当初は計画に積極的でなかった住民たちも、ガソリンの高騰を受けて自分たちの考えとしてバイオタウン構築に当たるようになった。
全米のエネルギーと電力のグリッドから切り離し、完全に再生可能エネルギーのみによる生活を送ろうというものである。カリフォルニアのような先進的な地域でなく、むしろ保守中の保守の町といったふうのRaynoldsがこのような取り組みを始めるのは驚きとして見られている。

本当のモデルケースにするために、補助金をあてにするのではなくPrivate financeで発電所を作ろうとしている。資金は徐々に集まりだしており、今秋には建設が始まる。豚や牛の廃棄物、あるいは都市廃棄物からメタン発酵によりメタンガスを製造し、これによりガス発電を行なって町全体の電力をまかなう。

一方、住民たちはE85の車を購入し、ガソリンの代わりにバイオエタノールを利用しようという。すでに100台のアルコール対応車が購入されている。町の公用車3台もアルコール対応車とBDF対応車に変更されるという。

しかし、全く障害が無いというわけでは無い。
町にはE85のガソリンスタンドが無い。町で唯一のスタンドのおじさんは言う。確かにバイオタウンは長期的に見ればよいことであり賛成。でも、俺にはもう1基の地下タンクとノズルを増やすだけの資金が無い。仮に増やせたとしても、遠くからE85ガソリンを受け入れねばならず、通常ガソリンよりも安く販売出来るという保証は無い。ということで、自分のお店をE85で商売が出来ると考える人に売るという。もう一件の雑貨屋さんも閉店。床屋さんも移転したそうだ。

E85の導入が床屋さんの移転の原因であるというのは妙な話ではあるが、未来は明るいが足元は暗いということを言いたいのでしょうか。
バイオマスエネルギーの導入=既存エネルギーからの完全脱却と一足飛びに考えるのは、やはり無理があるということです。

韓国天然ガス事情

2006-06-06 | ガス
「プロ中のプロである自分にしては、気づかなければいけないことであった。」という言葉が、本日の新聞各紙にありますが、んーん、本当は意図してやってたんじゃないの、プロ中のプロなんでしょ、でなけりゃ、プロ中のプロと自分のことを言うのは言い過ぎじゃないの、と突っ込みをいれたくなる。
どこの世界でもプロ中のプロが少なくなっているのでしょうか!

CO2排出抑制効果ありとして、化石燃料のかなでは天然ガスが好んで使用されている。ガスは開発から輸送にかけて莫大な資金を必要とするので、買主が長期契約をして買うのが通例。しかし、韓国のガス会社Kogasは躊躇しており、このままでは2008年以降大幅な不足になるという報道がある。

あと数年で韓国が長期契約しているインドネシアやマレーシアの一部の契約が切れるのだが、それに代わる契約がなかなか決まらないのだそうだ。2004年に韓国経産省が決めた計画では2010年の需要は25百万トンである。ところがKEEIの予測では30百万トンである。2005年の実績では実需は経産省の計画よりも多く、足りない分をスポット購入している。スポット購入は価格が高くなる上、必ずしも手当てできるとは限らない。韓国経産省は2年ごとにこの計画を見直すとしているが、その計画見直しが出来ておらず、Kogasなどは長期契約を増やせないでいるそうだ。

ところで日本はというと、LNGの輸入量は2004年で60百万トンである。韓国の3倍近い。この量は日本の一次エネルギーの14%に相当する。石油、石炭についで3番目です。この総一次エネルギーのうち発電に使われる量は42%(いわゆる電力化率)ですが、発電燃料中(水力なども含めて)では28%であり、その比率は原子力を抑えて一番である。われわれが使う電気は天然ガスから最も多く作られているということです。

話を戻して、韓国の天然ガス不足量は2008年で5.7百万トン、2010年では8.2百万トンに達すると予測されている。韓国でも日本同様に、天然ガスは電力用や産業用に使われている。日本はとりあえず自分の分は長期契約により確保されているからいいや、となるでしょうか。韓国が不足分をなりふり構わずスポットで調達を始めると、スポット価格の急騰に加えフレートの急騰にも及ぶかもしれない。
他人事と無関心でいるわけにはいかないのである。

石炭の話 その2

2006-06-01 | 石炭
石炭価格はカロリーベースで天然ガスや石油よりも安い。したがって発電に利用した場合、安価な電力を供給できるというメリットがある。また、米国の国内エネルギーなので価格の安定性、安全保障の観点からも良い燃料では有る。

しかし、CO2排出量と温暖化という課題が重石になっている。

石炭を積極的に使っていこうという意見はこうだ。

American Electric Power社はCO2排出制限を設ければ2010年以降、エネルギー供給の成長が阻害されると主張する。

石炭の消費量ではすでに数年前にアメリカを追い越している中国がCO2排出制限などせずに石炭を利用し続けているのに、米国内でクリーンコールのために時間とお金を費やすことは無いという意見もある。

ブッシュ政権はCO2排出制限には反対しているなどなど。

石炭を発電に使い続けることは経済的に理にかなっているが、CO2排出を全く無視しても言いというわけで無い。
そこで、排出されるCO2を分離して、地中に埋め戻すあるいは注入するという方法が解決策として注目される。また、CO2分離やSOx抑制のために現状の微粉炭燃焼に変わりガス化燃焼技術の導入も考えられるべきであろう。

2025年までは石炭の使用は拡大を続けるだろうから、CO2排出削減の技術開発はマーケットにゆだねられるべきで、政府の規制で行なわれるべきで無い。例えば前出のPeabody社はイリノイ南部とケンタッキー西部にそれぞれ150万kWの石炭火力発電を計画している。

このような企業を後押しするようにオハイオの公共局はクリーンコール技術のためのコストをエネルギー価格に建設完了前に転嫁することを了承した。この技術はガス化燃焼なのでSOx排出も抑制され酸性雨被害も無くなる。

微粉炭燃焼はIGCC(Integrated Gasification Combined Cycle)ガス化よりも15-20%安価であり、この点が有利である。
一方、ガス化のほうがCO2隔離には有利である。CO2隔離技術は10年以内に経済的にも技術的にも実現すると見られている。

すでにノースダコタのガス化プラントではサスカチュワンにCO2を送り、旧い油田に注入して産油量アップを図っている。BPも同様の試みをロス近郊の製油所でコークスからのCO2を用いて行なう計画である。Bush政権もFuturegenというPJで25万kW発電所からのCO2隔離技術開発を計画しているが、このPJは遅れており2012年に運転開始である。しかし、時期的に遅いし規模も小さいという批判はある。


しかし石炭の使用に消極的な意見もある。

Natural Resources Defence Councilは石炭の使用は毎年10億トンのCO2を増加させると主張する。

石炭の使用そのものに反対するのはExelonやDuke Energyなどの原子力関連企業である。

石炭は時代遅れの燃料ではなく、まだまだ活躍の場はある。その埋蔵量が石油よりも多いことや埋蔵地域が石油のように偏っていないことなどの利点もある。LPGの岩盤備蓄が出来るのだから、CO2の油層注入も技術的に可能になる日も近いと考えられる。