化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

コンビニで燃料電池フィールド実証試験

2005-09-29 | 水素
新日石は都内のコンビニで燃料電池(三菱重工との共同開発)のフィールド実証試験を始めた。ここまでなら過去にも同様な実証試験は行なわれています。
今回、新しいのは燃料電池の排熱でお湯を沸かすのではなく、吸収式冷凍機用(矢崎総業製)の熱源として利用することです。
燃料は灯油で発電出力は10kWと家庭用の10倍になっています。

燃料電池の用途先としては、電気と同時に熱も利用できるところが望ましい、というか熱を使い切れない場所は駄目でした。その熱はお湯という形にしかなっていなかったので、これまでコンビニに燃料電池を設置したところでは、用も無いのに従業員が一生懸命お湯を使って掃除をしていたようです。お湯が一杯になると燃料電池はそれ以上発電しない設定となっており、電気だけ使うことはできなかった。用はあまり、有効活用できていなかった。

この熱を吸収式冷凍機に使えると使用量はぐっと伸びます。いわゆる空調機ですから。24時間営業のコンビニは一日中、電気を使い続けていますので燃料電池も動きっぱなし状態になり、電池にとっては好都合です。
燃料電池システムの価格の問題はありますが、エネルギー効率的に大規模発電所からの電力のみを使った場合に比べて、どれくらい良くなるのか早く知りたいものです。

スターリングエンジン

2005-09-27 | 省エネルギー
NEDOのバイオマスエネルギー転換要素技術開発としてH16年度から直噴燃焼バーナーとスターリングエンジンを組み合わせた小型発電システム開発を、中部電力が行っている。H17年度には50kWスターリングエンジンを導入して、組合わせ試験を実施する。
スターリングエンジンは丸紅経由で米国STMパワー社から提供される。

スターリングエンジンとは聞き慣れないですが、いわゆる外燃機関というやつです。現在走っている車、ガソリン車ならばオットーサイクル、軽油車ならばディーゼルサイクルですが、これらはいずれもシリンダー内で燃料を燃やす内燃機関です。

スターリングエンジンはシリンダーの外で燃料を燃やし、シリンダー内のガス(STM社のものは高圧水素)を暖めたり冷やしたりして膨張、収縮させピストンを上下させるものです。

考案されたのはずいぶん古いそうで、理論上はカルノーサイクルと同じ効率達成が可能で、低振動、低騒音などの環境性に優るのですが、これまで実用化できなかったそうです。(何故かまでは調べてない。)

外燃機関は燃料の制約が少ないのが特徴。(確かに、ガソリンエンジンに軽油を入れても駄目です。)そこで、バイオマスなども簡単に燃料として利用できることから注目されました。また、排熱の利用が可能なので総合効率が高くできます。

いいことずくめのようですが、今後の研究の成果に期待します。

世界のエネルギー消費

2005-09-22 | エネルギー
北米Gulf地域にカトリーナに続き、リタが来襲とのこと。
これはもはや人類の自然破壊活動に対する天の報復である、などというつもりは毛頭ありませんが、やはりどこかおかしいのでは、と考えてしまいます。

さて、Gulf地域は原油・天然ガス生産基地や石油精製・石油化学工場が集まっていることから、原油価格のさらなる高騰を呼ぶ、市中ガソリン価格がさらに上昇してインフレ圧力となる等の観測がなされています。それもさもありなん。

そんなニュースを聞きながら、アメリカは一体どれくらいエネルギーを消費しているのか気になったので、他の国と比較してみました。

国名   日本  ドイツ  アメリカ   中国
GDP    4.87  3.00   11.73   1.64 (兆ドル)
人口   12,768  8,260   28,142   129,988 (万人)
GDP   3.81   3.63   4.20   0.13 (万ドル/一人)
経常収支   1,762  1,141  ▲6,659   686 (億ドル)
エネルギー消費   593   391   2,703   1,386 (*原油換算・百万kL)
うち電力消費  119   59   292   46(原油換算・百万kL)
エネルギー消費  4.64  4.73   9.60   1.07(原油換算・kL/一人)
エネルギー消費  1.22   1.30 2.29 8.23(原油換算-kL/万ドル)

*原油比重=0.85で換算している。

アメリカは一人あたりGDP4.2万ドルであり、一人あたりのエネルギー消費は日本の2倍強、電力消費は2.5倍になっている。燃費の悪い車を一人一台乗り回し、広い住宅に住み(うらやましいですが)、電力を食う家電製品で家が埋まっているという姿が想像できます。10年前でも洗濯乾燥機、食器洗い機があるのは当たり前の国ですから。
(もっとも彼らの家は広いですから、家中が家電製品で埋まっているという表現は当たらないかも)
総消費量では日本の4.5倍です。確かに多い。せめて日本・ドイツくらいには省エネ進めてくださいといいたいですね。
もちろん侮れないのは中国で、一人あたりでは日本人の1/4程度の消費量ですが、人口は10倍ですから総量では2.3倍も消費しています。アメリカのおよそ半分ですが、これは今後急激に増え続けるでしょう。
今でも毎年、夏場には電力不足で停電が頻発しています。
一人あたりのGDPが日本の1/30ですから、今の30倍になるという計算も出来ます。少なくみても、一人あたりの消費量が今の日本と同等となると仮定すると、総量では現在のアメリカの2倍以上です。
そうならないことを祈るばかりです。



電気自動車の逆襲

2005-09-16 | 省エネルギー
三菱自動車や富士重工がはやりの燃料電池自動車開発を中止し、電気自動車に開発を集中するという。あのGMやフォードでさえ、一社では開発投資が大きすぎるとして共同開発するのですから、賢明な選択です。もっともGMやフォードの場合は、本業での業績が良くないので、とても開発に回すお金がないという事情もあるようですが。
「晴れた日にはGMが見える」といわれたような会社の社債がジャンクボンドになるのですから、大変です。

さて、燃料電池自動車とハイブリッド車の戦いに電気自動車が参戦というのは良いことでしょう。プリウスやインサイトで成功しつつあるトヨタ、ホンダはさらに大型の車種にハイブリッド仕様を拡張し、さらにはディーゼルハイブリッドで高効率を狙うという方針のようです。
鳴り物入りの燃料電池自動車も、水素供給インフラや水素源の課題、FCV車本体のコストダウンを克服するにはさらに10年くらいはかかるとのことで、当面はハイブリッドでの攻勢をかけるはずです。

本題の電気自動車。これまでは街中をこまめに走る、あるいは空港内ビルなどで使われていたにすぎません。ここにきてハイブリッド用の開発とも相まって、モーターの小型化・高出力化、バッテリーのエネルギー密度向上と充電時間の短縮が進み、一気に前線に出てきたようです。
特にインホイールモーターが実用化されるといよいよ電気自動車も市販が視野に入ります。

また、加速性能はエンジン車の比ではないようで、この点からも注目が集まっています。電気自動車そのものの車両効率はエンジン車よりもそもそも高いので、たとえば再生可能エネルギーを利用すると総合効率も格段に高くなります。
深夜電力を利用して夜に充電する方法も、発電所効率の向上に寄与する分を考慮すれば、実質的に化石燃料使用量削減に寄与することもあり得ます。

電気自動車なんて、と思っていましたが、意外にFCVより効率的かもしれません。
そのうち、少しまじめに調べてみなくては。