化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

リサイクル率アップは必ずしもエコならず

2005-10-31 | 省エネルギー
3R政策というものがあります。環境と経済が両立した循環型社会を形成するため、Reduce,Reuse,Recycleを進めようというものです。
まったく同感で使い捨て文化は手軽ではありますが、やりすぎると資源・エネルギーの限界に達してしまいます。したがって、3Rの実行は大事です。

しかし、3Rにも限度があります。やりすぎると返って逆効果になりかねませんというお話です。

しばらく前から、「古新聞・古雑誌・衣類のぼろ」という毎度おなじみのちり紙交換の声を聞くことがなくなりました。古紙の価格が下がったために商売にならないのだそうです。ところが、製紙業界は2000年に古紙利用率56%を達成したといいます。ですから、古紙の回収は増えているのです。誰が集めているのだろうと自分の町内を考えてみたら、自分たちで集めているじゃありませんか。自治会や学校のPTAなんかが主体になって各家庭から集めてまとめて業者に渡しています。

しかもこの自治体やPTAはごみ削減と資源(古紙)回収が目的ですので、古紙の値段が下がったからやめるということはなく、むしろどんどん集めてします。そのお陰で古紙の利用率というのはどんどんあがってきているそうです。
回収可能な古紙の割合上限は65%といわれているので、56%といえば大分限界に来ているといえます。

そこでこれ以上の古紙回収は必ずしもエコ、すなわちエネルギー消費抑制にならないというお話です。

紙の原料はパルプといわれる繊維です。古紙から再生パルプを作るには除塵、漂白などに電気つまり石油等必要になります。

一方、原料木材チップを溶かして化学パルプ取り出すと、後に黒液と呼ばれるものが残ります。この黒液は燃料になりますので、木材チップから紙を作るときには石油等の燃料は必要ないのです。
ちなみにこの黒液は新エネルギーに分類されていて、1999年実績で457万kL(原油換算)も使われています。2010年の新エネルギー導入目標は原油換算1910万kLですが、黒液だけですでに24%を達成していることになります。ちなみに2003年度の原油輸入量は2億4500万kLです。

回収古紙からの再生パルプの使い道ですが、板紙(お菓子の箱など)ではすでに90%が再生パルプからできるそうです。板紙は7層の紙を重ねるそうですが、間の5層は漂白しなくても良いからだそうです。新聞紙などではまだ3割だそうですが、これを今以上増やすと紙質の低下(新聞紙がすぐ破れるようになる)する。強くするために余分な処理をするとエネルギー使用が増えてしまうこととなります。

つまり古紙の回収が今以上に増えていくと、結果として黒液が減り、さらに余計な処理をすることでかえって石油などの使用が増えるということになってしまう。
環境に良いはずのリサイクルですが、限度があるということです。

では回収してもリサイクルできない分の古紙はどうしたらよいのでしょうか。それは素直に焼却炉で燃やすことです。新エネルギー導入政策の中には、廃棄物熱利用という項目があります。つまり、焼却はするが発生する熱は使おうというものです。そうすれば、その分石油が節約できます。でも、CO2が発生するなんていわないでください。紙の原料は木です。木は大気中のCO2を吸収して成長しています。結局、紙を燃やしても大気中のCO2は増えたりしないのです。もちろん、ちゃんと森林が保全されていることが前提ですが。

省エネ製品の利用

2005-10-28 | 省エネルギー
米国環境保護局(U.S.Environmental Protection Agency)は、エナジーシターと呼ばれる高効率製品(省エネ製品)の普及により、一般家庭の電力を約100億ドル削減できたと発表した。これは2500万戸の電力使用量に相当するそうで、ほかの施策もあわせて2003年度にはCO2排出量を5700万トン削減できたという。

アメリカの一般家庭ではいまだに蛍光灯ではなく白熱電球を多用しており、エネルギー効率の悪いことこの上ないですから、こういうことはよいことです。この5700万トンのCO2削減量は非常に大きくホントかいなとも思えます。というのは日本が2000年実績から2010年までに削減する目標値5900万トンとほぼ同じですから。アメリカは日本の4倍のエネルギーを消費しているので、CO2削減量も同じ比率ならば日本の4倍になりますから、この5700万トンではまだ不十分ですが、エナジースター製品の導入効果は非常に大きいものがあるといえます。

日本でも薄型テレビが良く売れていると聞きますが、省エネ機器というメリットを消費者が感じているからでしょう。食器洗い機(アメリカでは10年以上前からアパートでも完備していました)が日本で発売されたとき、食器洗いが楽になるという効果では売れなかったものが、水道(代)が節約できるというメリットを前面に押し出したら、売れるようになったと聞きます。消費者の省エネ意識が高まるのは良いことです。

日本でも経産省が音頭をとって、トップランナー方式という省エネ機器普及を推進しています。これは、エアコン、蛍光灯、テレビ、冷蔵庫、ストーブなどの製品について、現行販売されているものの中からもっともエネルギー効率の高い製品を認定し、ほかの製品をそのトップの成績のものに近づけていく施策です。
省エネ機器の進歩には目を見張るものがあります。たとえば、1991年の冷蔵庫は413Lタイプで941kWh/年の消費電力でしたが、2003年では438Lとやや大きくなったにもかかわらず消費電力はわずか232kWh/年と75%も削減されています。また、エアコンは94年の製品で10畳用で1,499kWh/年の消費電力が、2004年には941kWh/年と37%も改善されています。

これら高効率・省エネタイプの一般電化製品の導入はCO2削減に大きく寄与するものと期待できます。なお、蛇足ながら我が家では財政上の理由によりなかなか省エネ製品の導入が進まないのが現状です。

チーム・マイナス6%とは

2005-10-27 | 省エネルギー
「チーム・マイナス6%」
いわゆる京都議定書において、日本は温暖化ガスの削減を約束しました。その削減量は1990年を基準にして6%です。このことから「チーム・マイナス6%」という表現になっていると思われます。それではCO2の発生を6%減らす(マイナス6%)ために、家庭等においてもこの冬は暖房に使う灯油やガスの使用を6%減らせばよいのでしょうか。家庭だけでなく、工場や病院や学校と行った場所でも総合して6%減らせばよいのでしょうか?「チーム・マイナス6%」という言い方からはこう想像できますが、実際はちょっと違うようです。

温暖化ガスとエネルギー起源CO2
まず、「温暖化ガス」と「CO2」は全く同じ意味ではありません。温暖化ガスとはCO2も含みますが、それ以外のフロンなどのガスも含みます。また、このフロンガスは温暖化効果がCO2よりも格段に大きいので、フロンガスを減らすことができると温暖化ガス削減量が大きくなります。
マイナス6%とは、温暖化ガスを6%減らすことであり、それはCO2排出量を6%減らすということではありません。
さらに、温暖化ガスの排出そのものを減らすことができない場合は、森林によるCO2吸収効果を加えたり、京都メカニズムという温暖化ガスの排出権を外国から買ってもよいのです。それらをあわせてマイナス6%を達成しようということです。

温暖化ガスの中ではやはりCO2が圧倒的に多いので、温暖化ガス=CO2=石油などの化石燃料の使用となり、石油使用を減らすこととの理解が一般的でしょう。
日本の1990年のエネルギー起源CO2排出量は10億4800万トンで温暖化ガス排出量12億3700万トンの85%になりますから、先の理解はほぼ妥当といえます。しかし、排出量の削減量が6%とそれほど大きくないことから、必ずしも石油の使用を6%減らすということに結びつきません。

政府の計画(H17.2.23見直し後)では、2010年の温暖化ガス排出量を対1990年比マイナス0.5%としています。これに、森林による吸収効果マイナス3.9%、京都メカニズムマイナス1.6%を加えて全部でマイナス6%です。つまり、温暖化ガス排出量の削減は0.5%に過ぎないのです。

さらにフロン等の温暖化ガスの削減を多くできそうなため、エネルギー起源CO2は削減ではなく1990年に比較して+0.6%、つまりちょっとは増えていいよ、という計画になっています。ここで、エネルギー起源CO2とは私たちが電気、灯油やガソリンを使ったとき発生するものです。今年の冬(京都議定書での取り決め、COP3とも言っていますがそれは2010年のこと)は灯油など燃料使用をマイナス6%にするどころか、+0.6%ちょっとは増えてもいいよとなります。

ところが、基準年は1990年です。(フロン等は95年が基準) 今から15年前を基準にしていますから現在の燃料等の使用量はどうなっているかも問題です。1990年といえばバブル最盛期で、その後は失われた10年というくらいですから、燃料等の使用も大して伸びていないと思いきや、2003年には1990年に比べて8%増えています。エネルギー弾性値はおよそ1といわれていましたが、経済はのびなくてもエネルギー使用は着実にのびていたのです。手元にある資料は2000年のものですが、エネルギー起源CO2排出量は11億6100万トンであり、1990年に比べて10.8%増加しています。1990年に比べて+0.6%にするということは、すなわち2000年に比べてマイナス10.2%にするということです。そういう意味では「チーム・マイナス10%」という言い方の方がふさわしいかもしれません。

実際の燃料使用削減量
このマイナス10%に相当するエネルギー起源CO2削減量は11億6100万トン引く10億5600万トンですから、1億500万トンの削減量となります。これを原油に換算すると4020万kLになります。(原油のCO2排出係数0.0684kg-CO2/MJ、発熱量を38.2MJ/Lとして計算しています。)2003年の全原油輸入量は2億4500万kLですから、4020万kLといえばそれの16.4%に相当します。CO2削減量を石油だけで達成しようとすると、今の使用量を16.4%という膨大な量を減らすことになります。実際は、日本の一次エネルギー供給量は原油換算で5億8800万kL、石油の割合は47%ですから、石油以外の化石燃料も減らすことで達成していくものです。

新エネルギー
「バイオマスニッポン」というプロジェクトに代表されるように、この石油使用量削減4020万kLを達成するためには、省エネルギーが基本となりますが、新エネルギーすなわちCO2を新たに発生しないエネルギーの活用も期待されています。
政府目標では2010年の新エネルギー導入量を原油換算で1910万kLにしています。これは先の4020万kL削減のかなりの部分に相当してきます。しかしこれは、2010年の目標値です。1999年現在ですでに新エネルギーは693万kL相当利用されていますから、2010年までの増加量は1220万kLに過ぎません。ですから、新エネルギーの導入だけでは2010年までのCO2排出量削減(原油換算4020万kL)の30%しか達成できません。やはり、省エネやエネルギーの効率的利用を推し進めることが一番必要です。
ちなみに計画上今後増やしていく予定の新エネルギーは以下の通りです。
廃棄物発電     440万kL
バイオマス熱利用  300万kL
廃棄物熱利用    170万kL
風力発電      130万kL
太陽光発電    110万kL
この中には今流行りの燃料電池も水素エネルギーという言葉も入ってきません。もちろん各論的には燃料電池技術開発への期待はありますが、それは高効率コジェネの一種というとらえ方、つまり省エネ機器の一種です。燃料電池の燃料は今後も天然ガスや石油です。
また、風力発電や太陽光発電の占める割合はわずかで、もっぱら廃棄物の有効利用が第一です。例えば風力発電は2010年までの原油換算削減量4020万kLに対して、3.2%に過ぎません。寄与度という点からはそれほど大きくないといえます。バイオマスといっても熱利用ですから、間伐材や廃材の薪ストーブ利用に期待しているということもあります。もちろん、木質バイオマスのガス化熱利用などという方法もありますが熱利用ですから、あんまり高等なことをしなくてもよい訳です。つまり今の段階では導入が容易な方法を当てにせざるを得ない言うことです。COP3という約束事は2010年が達成できたら終わりと言うわけではなく、その後も順次削減を続けていくと言うことのようですから、今からあんまり高度技術を当てにしてもいけないということでしょう。

「チーム・マイナス6%」とはいうものの、今の時点から燃料利用を10%減らそうという運動のようです。そしてもっとも効果があり確実なのは、省エネを進めるということのようで、クールビズに次いでウォームビズを流行らせようということです。
省エネの具体的方策や利用分野別CO2削減量についてはまた別の機会をみてまとめます。

400台の燃料電池による実証試験

2005-10-20 | 水素
NEDOは今年度予定している「定置用燃料電池大規模実証事業」の交付先を決定した。これは1台につき600万円の補助金をつけて、全国で400台(補助金総額24億円)の燃料電池を一般家庭等に設置し、今後2年にわたって使用中のデータを取ろうというものです。この燃料電池システムは1台あたり800万円といわれているので、残りの200万円は使用者が100万円、実施者が100万円を負担するわけです。
実施者は1台設置すると100万円の赤字ですから、一社でそんなに多くはできません。最も多く設置するのは東ガスで141台、新日石114台となっています。使用者は一度に100万円払うのではなく、おそらく毎月の燃料代として10年くらいかけて払うことになるのでしょう。
一般家庭等なので、本当の一般家庭(三浦雄一郎氏など)や会社の社宅などである。戸建てでマンション等は含まないはず。そういえば、首相官邸にも燃料電池が導入されたというニュースが以前にありました。

実施者は東京ガスや大阪ガスなどのガス会社、新日石や出光などの石油会社、岩谷産業などのLPガス会社が参加しています。また、燃料電池システムのメーカーは三洋電機、東芝燃料電池システム、荏原製作所、松下電器産業でこの順に147台、94台、91台、68台となっています。

燃料電池(FC)は水素を燃料としますので、このような大規模な実証事業が始まったことで、水素社会の入り口とか水素エネルギーの時代などといってはいけません。FCの燃料は水素ですが、これらのFCシステムの燃料は都市ガスやLPGです。だからガス会社やLPGを売っている会社が実施者になっています。元の燃料は依然として石油や天然ガスです。FCシステムはいわゆるコジェネ(マイクロガスタービンやガスエンジン発電機)の一種で、お湯を作るときに一緒に電気もできる(原理的には発電するとき熱が出る)ので、燃料のエネルギーを効率よく使う手段に過ぎません。その燃料は化石燃料ですよ。水素燃料じゃありませんから。

使用者から見ると燃料代(ガス代やLPG代)だけ払えば、ある程度の電気代が安くなる(全部の電気がまかなえるわけではないので、依然として電力会社からは伝記を購入します。)というメリットがあります。そのメリットの一部を使用者負担として支払うのでしょう。おそらくガス料金やLPG料金体系にFCコースなんてものができるのでしょう。
電力会社にしてみれば、だまっていては売り上げが落ちるから大変です。近年の電力会社の新規採用者はその大部分が、オール電化住宅の営業に回っているという話も聞きます。電力VSガスの家庭用市場争奪戦です。市場争奪ですから、安くて便利なほうが勝つのでしょうが、ぜひそれによってエネルギー使用効率が向上する結果となってほしいものです。

さてどれくらいFCシステムの効率がよいかというと、NEDOから9月の2週間にわたるデータを比較した結果が発表されています。それによると、トップ10番目のデータで見ると、発電効率で30%強、熱回収効率で47%ですから80%弱が使われていることになります。たとえば、火力発電所の効率は38%程度ですから、発電効率は高くありませんが、熱回収(この熱でお湯を沸かして給湯に使う)ができるので、総合的に効率が高いのです。大型発電所では熱の使い道はそれほどないので、一生懸命海水で冷やしています。
また、電気よりも熱(お湯)のほうが沢山できるので、電気も作る湯沸かし器とも呼べます。この効率が高いおかげで、CO2排出量を38%も削減しているという結果になっています。
COP3の約束は-6%(チームマイナス6%の呼び名は定着しつつあるのかな)、2004年度からは-14%ですから十分に目標を達成しています。(ただし値段の問題はありますが)何も水素社会でなくても、既存のエネルギーを効率よく使えばそれでよいという考え方もあります。

後は装置の信頼性、やっぱり最低10年くらいは持ってくれないと。それから価格の問題です。全国の一般家庭に600万円の補助を出していたら、政府は破綻しますので。
10分の一、あるいは20分の一くらいに価格は引き下げないといけないですね。
それにしても着々と定置用燃料電池システムは進歩しているという感です。

中国でDMEプラント

2005-10-16 | 石炭
中国で低品位石炭からDME(ジメチルエーテル)を製造するプラントが建設されるそうである。DME生産能力は年産15万トンで2007年末には稼働するとみられる。

DMEは一般にはまだなじみがないですが、沸点が-25℃で6atmで液体になる、ガス燃料です。LPGに近いと思って良い。
LPGは家庭で使用されたり、タクシーの燃料になっていますから、DMEも同様になじみやすいと考えられます。

とにかく燃料・エネルギー源のほしい中国としては、利用価値の小さい低品位石炭(褐炭)から、自動車用燃料が作れればよいと言うわけです。

人類の燃料転換は薪、石炭、石油と進んできましたが、これらは前の燃料が枯渇したから新しい燃料を使い出したというわけではなく、安くて便利なものに変わっていっただけです。そして、その流れ・消費者の要求は変わることがないでしょう。

石油の次に天然ガスが来ているという人もいますが、馬鹿いっちゃいけません。天然ガスを使うようになってはいますが、石油から全面的に変わったわけではありません。その比率は落ちたとはいえ、いまだに石油へのエネルギー依存度はほかの燃料よりも高く、50%弱はあります。何故、今でも石油が一番かと言えば、貯蔵が楽、液体なので移し替え、供給や運搬が楽だからです。

天然ガス自動車というものがありますが、いっこうに普及する気配がありません。天然ガス自動車ならばCO2排出量もガソリン車に比べて26%減ります。温暖化ガス排出抑制に大いに寄与するのですが、いっこうに増える気配がありません。燃料電池自動車を開発、とまどろっこしいことをしないで、とりあえず天然ガス自動車を普及させればよい。ところが、天然ガスはガス体なので、貯蔵や運搬に手間と費用がかかるという問題があります。それでいっこうに普及しないのです。

先にも言いましたが、DMEはガス体ですがLPGと同様に6atmに圧縮すると液体になるので、使いやすいのです。石炭という固体燃料を液体化する方策の一つとしてDME合成を中国では選択したわけです。

これには、原油価格が上昇して石炭からの合成が経済的に成り立つようになったことも大きいでしょう。
かつて石炭の直接液化技術開発を行なっている時代に、「石炭の液化はコストがかかって駄目でしょう」といわれたものです。「原油価格が45ドルになれば、経済的にも成り立ちます。」などと返答していたことを思い出します。
今の原油価格、70ドルなら間違いなく成立する訳です。中国内には低品位石炭が多く埋蔵していますので、これから液体燃料ができれば自給率の向上にも寄与するというものでしょう。

でもDME合成をしてもCO2排出量は減らないって。中国にしてみれば地球環境問題よりも、夏場の停電、冬場の暖房燃料不足の方が深刻な問題でしょう。


宮古島でバイオエタノールの実車走行試験とプラント建設始まる

2005-10-07 | バイオマス
環境省補助事業として、㈱りゅうせき、関西化学機械、ヤンマーなどが補助金4.3億でE3実車走行試験とサトウキビ糖蜜からバイオエタノールを生産する設備の建設に着手する。

バイオマスからエタノールを製造するのは、いわゆるお酒を造るのと同じです。エタノールをエンジンで燃やして発生するCO2は、もとはバイオマスが大気から吸収したものなので、カーボンニュートラルとなり、結果として化石燃料消費を削減できる。
閣議決定した「京都議定書目標達成計画」では、輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料の利用について、2010年度に原油換算50万kLを見込んでいる。
日本のガソリン消費量は約6000万KL/年なのでその3%をエタノールで代替すると180万kLとなり、2010年度の目標の3倍に相当する量になります。
要はバイオマス原料をどのように調達するか、にかかっている。

余談ながら石油製品は連産品であり、石油会社は同じ原油からどれだけ多くのガソリンを生産できるかで収益が決まるという面がある。ガソリン消費量だけが減少するとしたらE3計画に諸手を挙げて賛成とはいかない。

大学の役割

2005-10-06 | 社会
大学と大学教授に関する話題。

何年か前から国立大学は独立行政法人となりました。何から誰から独立して、法人格を有してどんな権限が生まれ、どんな法的義務が生じたのでしょうか。
そもそも大学は自治が基本ですから、今さら独立というのもおかしいような。

大学教授の起業を奨励するかのような風潮があるが、そもそも起業や金儲けを在任中から考えているような教授に最高学府としての教育権限を与えていいのか。そんな教授にまっとうな教育ができるのだろうか、疑問でならない。

技術系大卒の能力が落ちてきていると民間企業から指摘があります。大学はもっと教育に力を入れてほしいと。(事務系についてはここでは話題にしません。)
確かにそう感じますが、先に書いたように起業のことばかりを考えているような教授ばかりでは、どうにもなりません。

大学にも言い分はあるようです。これまで、相当額の税金を使って大学は研究をやっているが、アメリカの大学のように大学発の実用技術が少ない。もっと、大学から実用技術が出るように、特許取得や起業化を推進せよ、との政策です。
でも、大学が起業ばかりをするようになったら、民間会社の研究所は何をするのでしょうか。国研とどこが違うのでしょうか。

大学と国研、民間企業にはそれぞれの譲れない役割があるはずす。大学のProductsはなんと言っても学生、卒業生です。そのプロダクツの質を上げることこそが、大学の役割のはずです。その教育をそっちのけで、学生(院生)はあたかも労務費のかからない労働力のように使って、自分の研究を遂行するようなやり方は明らかに間違っています。
教育の質を上げるためには、最先端の研究が教育材料として必要なので大学は最先端の研究をやるのです。なにも起業するためではありません。結果として、卒業生がそのまま起業することは大いに歓迎です。
また、技術開発に対する哲学を最初に教えるのも大学の役目のはずです。哲学を教えるためには教授の全人格が問われます。もちろん、民間企業でも開発哲学は社風といったものを通じて、受け継がれているものと思います。

大学が最先端技術を通じて、技術系人材を作り、国研が技術の基礎となる開発を受け持ち、民間企業が実用技術に仕上げて、製品化するという基本的な役割を変える必要は何もない。
民間にできることは民間ですから、郵便局は民間企業になった方がよいでしょうが、大学まで民間企業と同じ、営利目的になることには反対です。

日中ガス田開発に関する協議

2005-10-03 | ガス
東シナ海のガス田開発に関する日本と中国の協議があった。
残念ながら協議は物別れというか、進展は無いようである。

中国は先日から日中の中間線付近(もちろん中国側)での天然ガスの生産を開始したようで、フレアでそのことを確認できた。また、プラットフォーム付近には護衛艦が待機しているという。

日本側は、そのガス田は日本側領海にも繋がっており、中国側の生産により日本の資源が吸い取られている可能性があると主張。中国側に地質構造データの開示を求めている。

中国のエネルギー事情は、今更言う必要もないくらい逼迫しており、アメリカ石油会社(Unocal)買収(結局は議会の反対で断念)や年中行事になった夏場の停電を見れば明らかである。なんとしても資源を確保したいと行動すること自体は自然である。
護衛艦まで出すのはやり過ぎと思うが、少なくとも中間線の自国側での採掘であるから、違法とはいえない。

日本は埋蔵量や生産量のデータではなく、地質構造のデータを要求しているのだから、中国側は開示すべきとしているが、果たしてそうだろうか。これらのデータはただで入手できるたぐいのものではないはず。それなりの時間とお金がかかったはず。
油田が繋がっていて自国の石油を吸い取られるとクウェートに侵攻したイラクの主張と今回の日本の主張にどれほどの違いがあるのだろうか。

そもそも資源開発は大きなリスクがありまた、資本投資も必要な事業のはず。人が掘り当てたフィールドにかんして、後から自分にも取り分があると主張しても、取り合ってもらえないのは当たり前だろう。
日本も中間線の日本側で早く採掘を始めればよいのであって、対抗策はそれ以外にないと思う。

中国が我が資源開発に躍起になるのは、資源が必要だからです。GDP1万ドルあたりの原油消費量は日本が1.20kL(世界一だろう)に対して、中国は8.23kLと7倍以上である。このエネルギー利用効率の低さこそが問題です。
東シナ海のガス田開発にかんする協議は局地戦(例えです。本当に戦争するわけではありません。念のため)として、大局的には日本の省エネ技術を中国に輸出する(原油価格が上がればあがるほど、省エネ技術の価値も上がる)ことが大事と思われる。