化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

CO2排出と地球温暖化 アメリカの事情

2006-01-30 | 環境
NYTimesの記事によれば「NASAの気候専門家がNASAから発言を封じられている」という。

この専門家が先月、地球温暖化に関連して温暖化ガスの迅速な排出削減を主張したため、現在は彼が外部に発信する情報のすべて(投稿、メディアのインタビュー、Webサイトへの掲載等)をNASA広報部が事前に検閲しているということである。

この専門家はかつて温暖化対策としては、燃焼で発生するすすを減少させることがCO2抑制よりも容易で効果的な方法であると主張していた。その当時はホワイトハウスの信頼も厚かったようである。

アメリカは京都議定書に参加していない。温暖化ガスにより地球温暖化が進んでいるという見解には一定の理解を示しているが、途上国が参加しない京都議定書による温暖化ガス排出削減は実効がないと主張している。

アメリカ国内には温暖化が進んでいるのは、温暖化ガスの排出が主原因ではなく、地球上で熱を発生させていること自体が原因である、との意見もある。となれば、燃焼の結果排出されるCO2が問題なのではなく、燃焼により熱が発生していること自体、熱の発生そのものが増えたことが問題となる。これに従えば、CO2を排出しない原子力発電も熱を発生させているので、地球温暖化の原因となる。

この意見に従えば、石炭、石油よりも天然ガスを利用する方が温暖化を抑制できるということにならず、省エネこそが温暖化抑制の決め手となる。

いずれにせよ、省エネを進めること、エネルギーの効率的利用を図ることが重要なのである。

米国ハイブリッド車に税優遇

2006-01-20 | 省エネルギー
米国財務省のスノー長官はハイブリッド車と希薄燃焼車に対する税優遇を発表した。

ハイブリッド車を購入するとディーラーから証明書が発行される。これを所得申告時に添付すると税金が還付される仕組み。最大で$3,400になるようである。

米国でもようやく省エネルギー車やCO2排出削減に対して、本格的な取り組みが始まったということだろうか。しかし、ハイブリッドの技術を持っているのは実質上、日本のトヨタとホンダだけではないだろうか。GM製のハイブリッド車は確かにあるが、大分以前からトヨタが技術協力していたように思う。

この税優遇はよいことであり、ハイブリッド車の導入の加速に寄与するはず。しかし、だからといってGMやFordの経営状況改善にも寄与するかどうかは分かりません。
ハイブリッド車と同じような税優遇の仕組みはリーンバーンエンジン車にも適用されるようだ。

やっぱり、ハイブリッド車が欲しくなります。

2030年に石油依存度40%に

2006-01-17 | エネルギー
経済産業省は2030年までのエネルギー政策の基本方針となる新エネルギー戦略の検討に着手した。新・エネルギー政策であって新エネルギー・政策ではないでしょう。

一次エネルギーに占める石油の割合を現状の50%から2030年には40%未満にするという。ということは、石油以外の一次エネルギーの利用を引き上げることを意味する。天然ガスの積極的活用や新エネルギーの利用を増やす方向である。そのため、新エネルギー産業の確立を推進するそうである。

また、電力需要に占める原子力の割合は現状の30%を少なくとも維持、それ以上に高める方針である。そのため使用済核燃料を再処理してプルトニウムを利用する核燃料サイクルの早期確立も目指す。

石油依存度を下げるもう一つの方法に、石油利用の省エネを推進し、石油使用量そのものを他の一次エネルギー使用量に対して相対的に減少させれば、石油依存度は下がる。そのため、2030年までに日本のエネルギー効率を現在より30%程度改選する。
現状はGDP1万ドル当たりのエネルギー使用量は原油換算1.22kLであるから、0.85kLまで下げることになる。原油価格を$60/bblとすれば1.22kLは$460になる。1万ドル生産するのに460ドル、つまりエネルギーコストは4.6%というのが日本の生産構造とも言える。

電力は原子力や天然ガスに増やす。暖房等の熱需要についても電気利用や天然ガスへの転換が可能であるが、自動車すなわち輸送部門(船や飛行機も)では石油に代わるエネルギーは見当たらない。石油ほどエネルギー密度の高い燃料はないからです。経産省の目標では、現在ほぼ100%に近い運輸部門の石油依存度を80%以下にするとなっている。ここが一番難しいが、電気自動車などで代替できる分野は意外とありそうです。


家庭用燃料電池

2006-01-15 | 水素
ガス会社や石油会社から家庭用燃料電池システムの販売が始まり、国の補助金を受けて実証試験が始まっている。課題は耐久性と価格と言われている。

東京ガス 都市ガス 10万円
新日石  LPG    6万円
新日石  灯油   6万円
価格は年間契約価格で、メンテナンス費用として消費者が支払う金額である。これ以外に、使用燃料費が消費者の出費となるが、トータルとして今支払っている電気代とガス代(あるいは灯油代)の合計値と同じになるように、ガス会社や石油会社は特別料金設定をしているようである。使う側の立場にたてば、今と同じ料金である。ただし、コジェネ機器を利用するのでCO2発生量というか、燃料使用そのものは削減できるということになる。

メンテナンス費用とはリース代金のようなものだが、現状では燃料電池1台は数百万円から1000万円くらいする。各メーカーは設置(販売)に当たって、国の補助金を一台辺り400万円受ける。それでも各メーカーは持ち出しになるが、機器の普及や実際に使用するデータ取得のための費用(開発費の一種)として考えている。

新聞発表では、都市ガス用の耐用年数が3年、LPGや灯油用は1年といっている。これは1年で燃料電池が壊れるのではなくて、改質や脱硫に使っている触媒を交換する期間と思われる。あるいは、燃料電池のスタックそのものの寿命なのかもしれない。いずれにせよ、消費者から見ればリース品なので、そのタイミングで部品の一部を交換したり、あるいは機器そのものをもっとバージョンアップされたものに交換してもらえることになり、特段の不都合は生じない仕組みである。

こうやって実際の使用を通じて性能の検証と不具合の微調整を続けていくこととなるのでしょう。一方の、コストについては大量に普及したときの量産効果を考慮してもまだまだ目標に到達するには時間がかかりそうである。

オイルサンド

2006-01-13 | 石油
カナダ、正確にはアルバータ州からというべきかも知れないが、オイルサンドから生産される石油を輸入するため、経済産業省と石油各社は検討を始める。

アルバータ州にはサウジアラビアの原油埋蔵量に匹敵する量のオイルサンドがあると推定されている。オイルサンドはタールサンドとも言われるように、重質油分を含んだ土のことです。サンドと呼んでいますが、見た目は黒い土です。砂状なのはむしろオイルシェールの方ですね。

このオイルサンドから経済的にオイルを回収するには8%程度の含有量が必要といわれていましたが、このところの原油高を受けて採算は著しく向上しているものと思われます。オイルサンドからお湯を使って油分を抽出し、この油水混合物からさらに軽油相当油でタール分を抽出します。抽出されるのはタール状ですから、そのままでは既存の石油精製にまわすことができませんので、水素化分解や熱分解により軽質油に変換します。この軽質油が人造原油として、原油と同様に市場で取引されるわけです。オイルサンド開発会社のSyncrudeではこの人造原油をSSB(Syncrude sour crude)と呼んでいます。

水素化分解をするには大量の水素と分解装置が必要です。あるいは熱分解すればコークスが副生物として残ります。欲しいのは液体燃料ですので、このコークスは廃棄というか山積にされているはずです。硫黄含有量が8%とかありますから、そのまま燃料にするには強力な排煙脱硫装置が必要です。

Syncrude社にはかつて三菱石油が出資していたはずです。そのまま新日石に受け継がれているのかもしれません。また、石油公団も別の会社と組んでオイルサンド開発を進めていたはずです。

原油調達先の分散という観点からは、望ましいこと思います。また、人造原油を生産するキー技術の水素化分解や熱分解においては日本の技術も大いに活用できるのではないでしょうか。