化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

サハリン2のパイプライン建設中断

2006-08-29 | ガス
サハリンエナジー社はサハリン2生産井から輸出設備のあるサハリン南端までのパイプラインの建設の中断を発表しました。理由はロシア環境監視当局が環境汚染の恐れがあると指摘したことによるといいます。サハリンエナジー担当者によれば8月中旬に工事を停止し、再開時期は未定といいます。

積出港となるプリゴノドノエではLNG生産設備と積出設備の建設が進んでいますが、肝心の天然ガスのパイプラインが開通しなければ、LNGの輸出は出来ません。

サハリン2の陸上パイプラインについては当初から課題として環境に与える影響が指摘されてはいました。例えば、800kmの陸上パイプラインのサケ・マス類の生息・産卵に対しての深刻な影響、重要な1000本以上の河川を横断しての埋設、工事による土砂流出、水質汚濁の懸念、パイプラインルート上の22の活断層、地震による破損、油流失が起こる懸念、アニワ湾での浚渫作業・海洋投棄、LNGプラント、原油ターミナル建設に伴う海底浚渫作業及び土砂投棄による漁業資源への被害、投棄場所について代替案の問題などです。

これらについてはそれなりに対策や対応を進めていたと推測されますが、環境監視当局から指摘(言いがかりであっても)があればそれに従うしかありません。問題は環境監視当局が純粋に環境影響を精査しての指摘かどうかということです。

ロシアはサハリン2へのガスプロムの参加を推し進めることを考えています。プーチン大統領のエネルギー政策には、石油ガスの輸出振興で2010年までにGDPを2倍にする、というものがあります。開発そのものは外国企業にやらせておいて、完成間近になったら自国のガス会社のものにするというのは賢いやり方です。取られるほうはたまったものではありませんが。

全くただでサハリン2の権益を手に入れるわけにはいかないので、シェルとガスプロムの権益交換ということにしています。つまり、シェル保有するサハリン2の権益(55%)の25%超とガスプロム保有のZapolyaroneガス田深部の50%の権益を交換するというものです。シェルにとっては西シベリアの埋蔵量獲得による埋蔵量の上方修正というメリットがありますので、この権益交換に応じるとしていますが、ここに来て条件面で折り合いがついていないと伝えられています。

また、25%の権益ではサハリン2を支配するということにはならないので、三井物産、三菱商事(あわせて45%の権益)の持つ権益の取得を働きかけているとも伝えられています。

日本のLNG買い手として、東京電力、東北電力、九州電力、東京ガス、東邦ガス、広島ガスが購入契約をしています。購入期間は早いところでは2007年開始で20年から24年、日本企業全体での購入量は528万トン/年です。現状の日本のLNG輸入量は6000万トン/年ですのでおよそ1割に相当します。

ロシア得意の「売らないぞ」戦術に日本はどう対応していけばよいのでしょうか。単にお金を払えば買える、という状況でなくなりつつある以上、ロシア側が欲しがるようなものを日本側が持っている必要があるということになります。

予算から見た研究開発の力点

2006-08-25 | エネルギー
経済産業省傘下にNEDOという研究開発機構があります。独立行政法人ですから、傘下という言い方は良くないのかもしれませんが、これまでの習性でこう呼んでおきます。NEDOでは国のお金を使って研究開発をしていますが、いわゆる補助金を企業や大学の研究機関に出しています。この補助金の額から、国がどの分野の研究を推し進めようとしているのか、平成18年度の金額で見てみます。NEDOの正式名称は新エネルギー・産業技術総合開発機構ですから、研究の主眼はエネルギーといっていいでしょう。もちろん、国のお金としてはバイオマス関連ならが農水省も、温暖化ガス排出抑制に関わる技術には環境省からもお金は出ていますので、NEDOの予算だけで国全体のエネルギー開発の方向性を満遍なく見ることは出来ないでしょうが、おおよその方向はつかめるはずです。

まずエネルギー環境分野に1074億、別途燃料電池・水素分野に205億があります。合計で1279億がエネルギー関連に出されている補助金と見ていいでしょう。

研究には技術開発と導入・普及という段階があります。技術開発は文字通り、研究室内で新しい装置や方法を見つけ出す作業です。研究室でうまくいったものが本当に世の中に出して成果が上がるのかを検証するのが、導入・普及です。技術は研究室同士が世界一を競っているだけではだめで、世の中一般に広く普及して初めて成果が上がりますし、それゆえ税金も投入できるということです。

エネルギー分野は新エネと省エネに大別できます。新エネとは風力、太陽光、バイオマスなどこれまでは使われてこなかった再生可能エネルギーといえます。省エネ技術は言うまでもないでしょうが、家電量販店にいくと省エネテレビ、省エネ冷蔵庫などが目に付くようになりました。
この分け方で予算を見ると技術開発421億、導入・普及で420億と全く同じです。もっと言えば導入・普及にも力を入れているということでしょう。

予算額でみると新エネ412億、省エネ428億でこれもほぼ同額といっていいでしょう。しかし内訳は両者で少々違います。新エネは開発346億、導入・普及66億ですが、省エネは逆に開発75億、導入・普及353億になっています。新エネはまだまだこれから開発しなければならないことが多いのに対して、省エネは開発を終わって導入・普及の段階のものが多いともいえます。あるいは、省エネ技術の開発は民間が独自に行なっており、国はその普及に努めるということでもありましょう。

新エネ技術開発の内訳は、太陽光171億、風力7億、太陽光・風力共通の系統連携45億、バイオマス・廃棄物67億です。数年前から注目を浴びた風力発電関連が少なく、太陽光とバイオマスに力点が置かれていて、風力発電はすでに開発振興を終わり、系統連携に研究課題を残していると考えられます。

燃料電池・水素分野は総額で新エネあるいは省エネの半分程度になっています。マスコミ登場頻度からいくと燃料電池にもっと多くを費やしても言いようにも思われますが、少し先の技術と捕らえているのかもしれません。

内訳では、PEFC(固体高分子形燃料電池)が最も多く56億、SOFC(固体酸化物形燃料電池)はその半分です。水素利用技術は28億ですからSOFCとほぼ同じです。
また、標準化・実証といった導入・普及と同義の項目が88億となっており、燃料電池本体の開発と同額になっています。

まとめてみると、新エネと省エネは同額で燃料電池・水素関連はその半額です。新エネでは技術開発に重点がおかれ、省エネは導入・普及に力点が置かれています。また、燃料電池は開発と導入が半々というところです。新エネ・省エネ全体で見れば、開発と導入に半々の予算付けになっており、この辺は国の予算の付け方なのでしょう。

最後にH18年度の特徴は温室効果ガス削減目標達成のため、排出量取引とCDMに122億が振り向けられていることでしょう。これだけのお金を出して他国からCO2枠を買うのならば、その分を自国の研究開発に当てなさい、という意見はもっともですが、既に高度に開発されている日本のエネルギー関連技術を今一段引き上げるのは、容易い事ではないという認識に立つことも必要です。

おめでとう 駒苫

2006-08-22 | スポーツ
それにしてもいい試合でした。両投手の疲労度からすれば打撃戦を予想する向きも多かったのではと思いますが、決勝戦1試合目と同じ投手戦となりました。両投手の体力、気力には脱帽です。

勝敗の分かれ目はこれまで打撃戦を勝ち上がってきた苫小牧が斉藤君を打てなかった、ということに尽きると思います。安打数は早稲田実業と同じですが、四死球・エラーを含めると負けています。特に4番が完全に抑えられたのが痛かった。逆に言えば早実の斉藤君は4番を抑えるために120%の力を出し、それ以外の打者の時には6割程度で投げていたのではないでしょうか。

本間君は不本意でしょうが、主将として4番としてよく最後までチームを引っ張ってきたとほめられるべきです。日本シリーズに出るようなチームの4番でも打てない時はあるのです。胸を張って北海道に帰ってきてください。

再試合も良い試合ではありましたが、やはり選手の、特に投手の体調はきになりますね。決勝戦なんですから、勝ち負けを決める必然性はないのでは。両校同時優勝にしてあげることは出来ないもんでしょうかね。

カナダのコールベッドメタン その2

2006-08-22 | ガス
コールベッドメタンの開発に際して、最も注意すべきことは水の処理のようです。素人は炭層中をボーリングしてガス溜りに当たると、メタンガスのみが噴出してくるように考えてしまいます。しかし実際のガス生産では多かれ少なかれ、水分を含んだガスが地上に取り出されるようです。利用するのは有機ガスだけですから、不要な水は必要ならば除害された後、排水として流すか、地中に戻されます。またむやみやたらと地層をドリリングして地下水の系態に悪影響を与えてもいけません。この様な状況や利害を整理して、環境に悪影響を与えないように開発、生産するための指針が決められています。

この指針はCBMに関わる利権者アドバイザー委員会(MAC)によって定められたもので、CBMを開発するガス石油会社、州政府そして最終利益者となる住民のいずれもが納得できるようになっているといいます。化石資源開発について長年の歴史と経験を持つアルバータ州では、この様な利害・利権の調整がうまく機能するものと考えられます。

アルバータ州政府は州内の化石燃料資源を重要な経済資源と位置づけています。中でもCBMを含むガス資源の重要度は増す一方です。2004年では2/3のドリリングがガス向けだったそうですが、2006年には3/4にその比率が上がっていることからも覗えます。2005年12月のガス販売高は544億円といいますから、年間では6000億円を超える産業です。アルバータ州の人口は318万人ですから、ガス関連産業が占める比重は大きなものがあるといえます。

この資源を独力で有効に活用しようというのが、これまでづっと続いてきたアルバータ州の政策と言えるのでしょう。

高校野球

2006-08-21 | スポーツ
高校時代に野球以外のスポーツをやっていたものにとって、高校野球はあまり面白いものでは無ありません。もちろん、野球そのものがつまらないとか、野球部員が気に食わないということではありません。何で野球部はインターハイに出ないの、何で野球だけ毎年甲子園でやってんの?何で一つの会場で50試合近くもやんなきゃいけないの、という高校野球特別扱いに不満があるからです。しかし、今年の高校野球は暑く、面白いのは言うまでもありません。地元が勝ち残っていればもちろんのことです。

苫小牧の3連覇、なんて全く夢の夢です。ちょっと前までは南北北海道代表といえば、一回戦が勝てるかどうか、ベスト8に残ろうものなら大騒ぎだったことを思うと、信じられません。

それにしても昨日はそれまでの乱打戦と打って変わって、投手戦でした。両投手とも実力を出し切ったという感じがします。ご苦労様でした。

両投手とも昨日までに相当数の球数を投げています。もう連投は無理でしょう。出来たとしても、将来に影響すると思います。

エース同士の対決は昨日で引き分けだったわけですから、柔道などの団体戦のように今日は二番手、三番手ピッチャーに投げさすべきでしょう。連盟からそういう通達を出せないものでしょうか?

自チームの勝利のために将来あるピッチャーの肩を壊してしまっては、本末転倒というものです。
勝敗の行方以前に、こういった大会運営のことを考えなければいけないと思います。

とはいえ、やっぱり苫小牧よ、三度目の正直で優勝旗を持って帰ってきてください。そして今年ことは優勝パレードを盛大にやってください。


CO2を半永久的に隔離する方法

2006-08-09 | 環境
最近ハーバード大、MIT、コロンビア大のグループは海底の中にCO2を圧入する方法を提案しています。この方法では半永久的にCO2を隔離することが可能との見通しです。昨今の世界のエネルギー需要の増加に対応するためには、地球上に最も多く存在している石炭の利用を抜きに考えることは出来ません。しかし石炭はCO2排出係数がもっとも大きな化石燃料ですから、地球温暖化抑止の観点からは、その利用を抑制しなければなりません。そこで、石炭火力発電所から排出される燃焼排ガス中のCO2を分離して、地中や海中、海底に隔離する方法が世界各国で研究されています。

特に油層中に圧入する方法は、原油生産量の向上にも役立つため、この方面の検討がおおうなされています。しかし、密封方法が確立できているわけではないので、ある程度時間がたつと漏れ出てくるのではという、課題があります。

ハーバード大などのグループが提案している方法は以下のようなものです。水面下3000m程度の海底のさらに海底下200mの場所にCO2を圧入すると、高圧・低温のためCO2は液体となる。周囲の流体よりも高密度なため流動せずに安定する。さらに水和物が形成されることで液体CO2の流動がさらに妨げられる現象も起こるので、地震などの振動があってもCO2が漏れ出すことは半永久的に無いといいます。

この様な隔離のできる場所については、アメリカの200マイル経済水域ゾーンを想定すると、現在の全米でのCO2排出量の1000年分以上を貯めることができる計算となり、実質的には無制限に隔離可能だといいます。

このようにCO2を隔離する場所を探す苦労はないようです。とすればCO2を分離、圧縮、圧入する設備が一番の検討課題となります。もちろん、実験的にそのような場所に圧入してみる必要があることは言うまでもありませんが。

化石燃料の埋蔵量には限りがあるので、いつまでの化石燃料に依存は出来ないという意見への本質的な反論にはなりませんが、少なくともCO2排出による地球温暖化の防止には役立つ方法といえます。

パイプラインのリークによりアラスカ原油生産停止

2006-08-08 | 石油
アラスカのPrudhoe Bayパイプラインで腐食による原油リークがあり、パイプラインでの送油を停止しているという。ここはアラスカノーススロープと呼ばれる油田地帯で、1967年にエクソンモービル、コノコフィリップスとBPにより開発されてきました。現在はBPがその操業に当たっています。原油生産量は40万BDといいますから、全米生産量の8%に相当するようです。このニュースを受けて、WTI価格は77ドル/バレルまで上昇しました。6月の最高値を更新することは無かったようですが、2ドル以上の上昇といいます。

40万BDは確かに少なくは無い量です。米国エネルギー省はBPやその他の製油所からの要請があれば備蓄原油を融通すると発表しています。また、西海岸の製油所には充分量の在庫があるので、このBPアラスカの生産停止が直ちに原油供給不足につながりはしないといえます。したがって、WTI価格が上がったのは、相場が上がりたがっていたから上がったのであって、BPの事故はその口実にされたに過ぎないという見方があります。

細かいことを補足すればアラスカノーススロープ原油は重質で高硫黄分(Dirty and sour)なので、この原油を精製している製油所ならば代替のLight and sweet原油の処理は容易です。逆にWTIをメインに処理しているような製油所に大量のノーススロープ原油を処理しようとしても出来ない相談になります。

WTI価格について、見掛けの最高値は本年6月の77.30ドル/バレルですが、インフレ調整後の価格で言うと1981年の86ドル/バレルが最高値だそうです。つまり、81年当事に比べれば原油価格は安いということになります。確かに日本でも、当事はガソリン1Lが160円位していたように記憶しています。今はまだ140円ですし81年当時の物価で価格を調整すれば160円は200円近い値になるのかもしれません。

BPはまだ当該地区の全パイプラインの検査を終えていないので、復旧にどれくらいの日数がかかるのかを公表していません。少なくとも16kmに及ぶ部分のパイプはすべて交換する、ということを表明しているようです。そもそもBPのこの地域では3月に5,000バレルの原油リークがあったという前科があります。この事故を受けて米政府よりパイプラインの総点検を要請されて、5月以降に順次実施してきたなかで今回の事故を見つけたようです。

ノーススロープでの更なる油田開発については、下院で承認が取れたのに上院で承認されなかったという状況があるそうです。もともとこの施設は米アモコの所有でしたが、BPがアモコを合併したことでBPの所有となった経緯があります。米国石油資源をイギリスの会社に開発させていいのか、という論調が議会の決定に影響しているのかもしれません。

カナダのコールベッドメタン

2006-08-04 | ガス
カナダでは現在3000本以上のコールベッドメタン(CBM)生産井が稼動しています。日本ではあまり馴染みの無いこのガス資源についてOGJの記事を引用します。アルバータ州にあるWest Canada Sedimentary Basinでは500mcfdのCBMが生産されていますが、これはアルバータでの全ガス産出量の3.6%にあたります。そして2010年には1.6bcfd、2015年には2.5bcfdに拡大していくと予想されています。その推定可採埋蔵量は167tcfですから、単純計算で180年分となります。日本に身近なサハリン2の天然ガス埋蔵量は14tcfですから、その10倍はあるということで、アルバータ州の埋蔵量の大きさが理解できます。

アルバータでのCBMはオイルショック後の1970年代に着目されるようになりました。1990年代にアルバータ州政府は、既存のガス関連規制を補完する形でCBM開発に対応する規制を整備してきました。

アルバータ州は昔からその地下資源の開発に関して、生産量に応じたロイヤリティーを州政府が得るような仕組みを構築しています。余談ですが、地下資源が豊富なアルバータ州はこのロイヤリティー収入があるので州政府の財布が暖かいという住民にとってはありがたい状況になっています。

そのため、他の州では5%くらいかかる州税がありません。(但しタバコと燃料には5%の州税がかかります。)ちなみに国の消費税(GST)7%はすべてのものにかかります。同じものを買ってもアルバータでの消費税は7%ですが、隣のブリティッスコロンビアでは12%になります。

商業的規模で始めて生産が開始されたのは2002年で、場所はエドモントンとカルガリーに至るHorseshoe Canyon formationというところです。ここは石炭とCBMが一緒に算出されるという世界でも珍しい資源構造のようです。

アルバータのCBMの特徴はドライコールから算出されることです。そのためガス中に水分を含んでおらず、脱水操作や排水処理の心配をする必要がないという利点があります。

次回に続く

風力発電の仲介業者

2006-08-03 | 再生可能E
風力発電など再生可能エネルギー導入を加速する仕組みとして風力発電仲介業者の活用があげられます。風力発電等は一般に地域の電力会社によって買い上げられています。風力発電等は発電コストが高いので地域電力会社にとっては逆ザヤになりかねない。有体に言えば購入量をあまり増やしたくは無いという事情、つまり経済的な制約があります。また、日本とりわけ北海道のように地域電力会社のグリッドが小さな地域では、風力発電など変動の大きい電力の受け入れは総発電量の5%未満に抑えなければならないという、技術的な制約もあります。このうち、経済的制約を緩和しようというのが電力仲介業者の活用です。

お話の舞台はコロラド州です。Valiというスキーリゾート会社があります。全米の約1割のスキー客が利用するという大手の会社です。年間の消費電力量は15.2万MWhといいますから平均電力は17,000kWになります。別の言い方をすれば一般家庭14,000軒分に相当します。

先日、この全電力を風力発電により賄うと発表しました。といっても自分でスキー場に風力発電機を立てて発電するわけではありません。Renewable Choice Energy社から全電力量に相当するクレジットを購入します。クレジットとは通常の電力と風力電力との差額分と考えればよいでしょう。RCE社は風力事業者からこのクレジット分の電力を購入します。風力事業者はミネソタ、カンザスなどコロラド以外にありますが、それは問題にしません。

実際の電力は風力発電事業者から地域グリッドに供給されます。また、Vali社は地域グリッドから電力の供給を受けます。それらのグリッドが物理的につながっているかどうかは関係ないのです。つまり電力の流れはこれまでと変わらないのですが、風力発電のコスト高の分のみをRCE社を通じてクレジットという形で購入することで、風力発電の経済的制約を解消するという方法です。

Vali社にとっては地元の石炭火力発電->温暖化->雪が減る->スキー客が減る、という悪循環を断ち切るために風力電力の使用に踏み切ったわけで、一種の設備投資といえるでしょう。Vali社は1990年のスキーリゾート開発を通じて、自然破壊の会社というレッテルを張られた一面もあり、風力電力の使用によりそのような悪いイメージを払拭する効果もあるでしょう。

Vali社の風力電力購入量は全米第2位だそうで、第1位はWhole Foods Marketというスーパーマーケット会社です。
日本でも市民○○というもののみでなく、ビジネスとしてこの様な仕組みが出てくることを期待したいところです。

ロシアの石油パイプラインでリーク事故

2006-08-01 | エネルギー
土曜日にロシアの石油パイプラインでリーク事故があり、当該パイプラインでの原油の供給が突然にストップしてしまった。幸いにも漏洩量はそれほど多くは無く、月曜日午後には原油供給は再開されたという。現実にはそれほど大きな被害がでたわけではないですが、その影響は小さいものではないといえるでしょう。特に、ロシアから石油の供給を受けている近隣諸国にとっては、故意であろうと事故であろうと原油供給が止まることにその違いはありません。事故に備えて予備タンクへの備蓄はしているでしょうが、それだけで安心かといえば、そうではないと思われます。ロシアはサウジについで世界第2の石油輸出国ですから、石油供給ストップのニュースに原油価格は当然反応し再び75ドルをヒットしています。

このパイプラインはDruzhba(読めない、ドルゾバ?)パイプラインというそうですが、シベリア原油を2,500マイル、ということは4,000km、離れた中央・東ヨーロッパまで120万BDも送っているそうです。リーク量は39トンといいますから、それほど大きなものではないでしょう。幸いにリーク地点の近くに川がないので、汚染は広まらず既に32トン分は回収されたといいます。このパイプラインは1960年代に建設されていて、耐用年数的には寿命のようです。パイプライン寿命がたったの40年しかないというのは知りませんでしたが、パイプそのものの寿命は確かにこんなもんかもしれません。昨年の調査では487箇所に不具合があり、小さなプールほどのリークは頻繁に起きているといいますから、ちょっとわれわれの常識からは考えられません。
ソ連崩壊後の混乱期にはきちんとメンテナンスされていなかったことも影響しているのでしょう。ということはこのパイプラインに代わる新たなパイプラインを早々に作らないといけないということになります。そんなお金を準備できるのでしょうか?

ところでリトアニアの製油所は処理量の8割をこのパイプラインからの供給に頼っているそうです。原油がいきなり供給停止になったときは、予備の原油タンクに切り替えて、装置稼働率を60%に下げて対応したといいます。仲の悪いロシアに原油を依存しなければならないというジレンマを抱えているわけですが、何もロシアに限ったことではなく、消費国と資源産出国の関係を友好に保っておくのは難しいことです。事故により供給を停止したが、故意に復旧を遅らせてなんてこと、やろうと思えばできるわけです。日本のエネルギー政策の第一目的が安定供給確保なのは当然なのですね。最も日本に限らず、すべての国がエネルギーの確保に血眼になっている、といってもいいでしょう。