化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

都市ガスの値下げ

2006-07-28 | ガス
原油の値上がりによりガソリン価格が夏休みに入って値上げになる、というニュースに接する日が多くなりました。ところが都市ガスは値下げするという。どちらもエネルギーなのに片方は上がって、もう一方が下がる。都市ガスの価格が一体どういう風に決まっているのかを調べてみました。

ガス会社は3ヵ月後との原料すなわちLNGとLPGの平均価格を計算している。この原料価格が過去の価格に比べて5%以上、高いかあるいは安くなっている場合は、その分を都市ガス価格に上乗せしたり値下げしたりしている。今回発表になっているのは4月から6月の原料平均価格がLNGで2%、LPGで18%値下がりしていることによるらしい。この改定料金は10月から12月分に適用されることになる。

東京ガスのHPによれば、この調整額は0.081×変動額/100(円/m3)という式で計算されている。この式を見ただけでは、原料が100円上がったら都市ガス価格がいくらあがるのかが良く分からない。そこで、少し計算をして見ます。

原料LNG価格はトン基準です。例えば2006年1月から6月の平均価格は財務省貿易統計によれば、41,570円/トンです。1トンのLNGはガスの体積に直すと、マレーシア産の場合1,233Nm3です。これより平均価格は33.7円/Nm3になります。原料LNG1トン当り1233円値上がりしたとすると1Nm3換算では1円/Nm3の値上がりとなります。一方、上の計算式に当てはめると
0.081×1233/100=0.998円/Nm3ですから、原料LNGが1円/Nm3値上がりすると都市ガス価格もほぼ1円/Nm3値上げする方式なっています。ガス会社が便乗値上げしないようになっているといえるでしょう。

石油もLNGも3ヶ月くらいの単位で見ると変動しており、このようにたまには下がることもあるということです。しからば、年度で見た平均価格は原油とLNGでどうなっているのかを調べてみました。先ほどと同様に貿易統計から年間輸入数量と価格のデータを入手し、少し換算しています。



2003年までは熱量基準で原油もLNGも同じ価格です。しかし、2004年に原油が値上がり始め、2005年、2006年と急騰しています。2000年から2002年の安定価格を0.5円/MJと見れば、2.4倍になっています。LNGも2005年、2006年と値上がりしていますが、1.6倍程度に収まっています。

石油もLNGも燃料ですから、燃料の用途(発電も含む)ならば熱量基準の価格はほぼ同じになるはずです。事実2003年までは全く同一の動きをしています。石油が使えてガスが使えないものといえば、自動車用ガソリンくらいです。しかし2004年以降、世界的に見て自動車が爆発的に増えたということはありません。とすれば、この原油価格の上昇は用途面からは説明できない、ということになります。何か別の意図があって上がっているのは確実でしょう。

ところでガソリンと都市ガスの価格を比較してみます。2006年原油価格は貿易統計より44.7円/Lです。石油会社はこれを原料にガソリンを作って売っていますが、先日のブログに書いたように税抜き価格は74.7円/Lです。ガスの場合、原料LNG価格は33.7円/Nm3ですが、都市ガスの小売価格(一般家庭)は120円から140円/Nm3です。ガス会社は原料の4倍以上の値段で都市ガスを売っています。石油会社とガス会社の粗利を熱量基準で計算すると石油は(74.7-44.7)/34.6=0.9円/MJに対して、ガスは(120-33.7)/41.1=2.1円/MJになります。ガス会社さん、ちょっと儲け過ぎと言っては失礼でしょうか?

日本のガソリンはアメリカよりも安い

2006-07-25 | 石油
このところ原油価格が77ドル/バレルという高値を更新している。油田を持っている人にとってはありがたいのだろうが、一消費者としてはガソリン価格の上昇が気になるところです。今のガソリン価格は高いのか、妥当なのかは評価の仕方によって見方は変わるでしょうが、日米のガソリン価格を2005年と2006年で比較してみました。

まずはアメリカ。2005年は$2.38/gal、2006年は$3.00/galです。これは全米の平均値です。値上がり率は26%にも達しています。為替を116.64/$として日本と同じ円/Lで表示すると73円/Lが92円/Lになったことになります。一見して日本の価格よりもぜんぜん安いと実感します。

ついで日本です。2005年は125円/Lで2006年は137円/Lですから、値上がり率は10%弱です。アメリカに比べれば、値上がり率は低く抑えられています。これからガソリン価格に占める原油コストの割合が小さいと類推されます。逆に言えば、日本のガソリン製造コストはアメリカよりも高いということです。原油価格がさらに高値を追うことになると日本のガソリン価格の値上がり率もアメリカ並みになっていくものと予想できます。ここで価格そのものはアメリカよりも随分と高くなっています。その違いは税金や自前の油田がないことにあるといわれています。そこで税金を比較してみます。

アメリカのガソリンの税金は全米平均で38セント/ガロンです。円/Lに直すと11.7円/Lです。アメリカのガソリン税は州によって異なります。最も安いのが、Gulf Coast地区です。ここはテキサス、ルイジアナ、オクラホマなで石油産業が強い地区です。逆に最も高いのがWest Coast地区でカリフォルニアがその代表でしょう。ここでは環境問題に関心が高く、高税率によりガソリン消費抑制と税金を環境対策資金にするという政策と思います。
アメリカのガソリンを税抜き価格で表示すると2005年は61.3円/Lだったものが、2006年では80.3円/Lと31%の値上がり率となります。

一方日本のガソリンにかかる税金には2種があります。ガソリン税53.8円/Lと石油石炭税2.04円/Lです。2006年から石油関税はなくなりましたので、現在はこの二つですが、合計で55.8円/Lになります。さらにこのガソリン税の5%、2.8円/Lを消費税として払います(いわゆる二重課税)ので、ガソリンの税金は合計で58.6円/Lとなります。125円/L(内税)のうちの税金分は47%に達するわけです。このガソリン税と消費税を抜いた正味のガソリン価格は、2005年が63.2円/Lで2006年は74.7円/Lとなり、値上がり率は18%に跳ね上がります。といってもアメリカの値上がり率31%よりは大分小さくなっています。

2006年のガソリン価格を比べるとアメリカが80.3円/Lで日本は74.7円/Lです。驚くことに日本のガソリン価格が安いわけです。日本の石油精製会社は原油高騰にもかかわらずよくコストアップを吸収しているという見方も出来ます。
日本のガソリンは高い、それは税金が高いからだ、全量輸入に頼っているからだ、といわれてきました。これからは日本のガソリンが高いのは税金が高いからと言い切ってしまいましょう。

アメリカのガソリン消費は920万BDです。一方、日本のガソリン消費は106万BDに過ぎません。人口が日本の倍ということを割り引いても、アメリカ人(アメ車)は日本人の4倍以上のガソリンを使っているといえます。アメリカではほとんどディーゼル車が無い、国土が広いので走る距離も長くなるなどの事情はあります。事実、通勤に車で50マイルなんて人も田舎の方ではざらのようです。それにしても、ガソリン使いすぎでしょう。ガソリン価格の高騰は相当影響ありでしょう。こんなところからもGMやフォードの苦戦はよく理解できます。

GTL軽油

2006-07-24 | ガス
GTLは石油代替エネルギーの一つです。天然ガスから液体燃料、特に軽油を合成するので、非化石燃料ではありませんが、一次エネルギーの石油依存度を下げることには貢献します。

石油依存度を直接下げるために天然ガス自動車の導入が考えられますが、車の改造に費用がかかる、天然ガススタンドが少ない、連続走行距離が短いなどの理由で、日本での普及率はなかなか向上しないのが現実です。

そこで、自動車の改造をしなくてすむように、天然ガスを自動車でそのまま利用できる液体燃料に変えるのがGTL技術です。日本ではいまだ、商業プラントは稼動していませんが、世界では確実に増えていくようです。

GTL軽油を使ったモーターレースの話題が二つあります。
一つ目は先月行なわれたルマン24時間レースです。アウディスポーツが優勝しましたが、燃料はシェルのビンツルプラント(マレーシア)で製造されたGTL軽油をブレンドしたものです。耐久レースでディーゼル車がガソリン車に勝ったのは初めてだそうです。

二つ目はOryx GTLプラントの落成式イベントです。南アフリカのサゾールブルグからドーハまで10,000kmを6週間かけてトヨタハイラックスで走破したものですが、燃料はサゾールのGTL軽油でした。

Oryx GTLプラントは330MMcfdのカタール・リーンガスから34,000BDの超低硫黄軽油と24,000BDの一般軽油と9,00BDのナフサと1,000BDのLPGを生産します。これはカタール石油とサゾールの合弁ですが、2010年までに100,000BDへの拡張計画があります。

他に2010年にはシェルとカタール石油の合弁GTLプラント、2011年には能力145,000BDのカタール石油とエクソンモービルの合弁プラントが計画されています。カタール当局者は2010年までにカタールのGTL能力は800,000BDに達すると予想しています。

ヨーロッパの車はディーゼルがメインですが、米国はガソリン車がメインです。そこで米国でのGTL軽油の普及はスクールバスに代表されるような大型車になるものと考えられます。

ガスを液体燃料にすることで輸送や貯蔵の利便性が向上し、エネルギー密度が大きくなるので自動車にも使えるという利点のあるGTL技術ですが、課題は以下の二つです。

一つはコストです。GTLプラント建設コストは$25,000から$45,000/BDといわれており、これは通常の製油所建設コストの3倍近くになっています。昨今の原油高によりこの建設コストが賄えるかどうかが課題です。

二つ目はエネルギー効率です。GTL軽油の製造エネルギー効率が低すぎると、実質の自動車からのCO2排出量が減らないことになります。以上の二つのポイントを検証することが大事です。

世界エネルギー見通し

2006-07-21 | エネルギー
アメリカ・エネルギー情報局から世界のエネルギー見通し2006年度版が出されています。そこでは特に足元の原油高とunconventional資源の利用を最大限に反映させているようです。

以下に示すように全エネルギー需要は71%増加するとしています。
2003年 421 quadrillion btu
2030年 722 quadrillion btu
需要増加はアジアの途上国で著しい。

また、石油の需要は以下の通りです。
2003年 80 million b/d
2015年 98 million b/d
2030年 118 million b/d
石油の需要増加は47%に止まっています。現在の原油埋蔵量から今後適正なインセンティブで開発が進むという前提で、2030年のおける原油需要を満足することは充分可能としています。

2005年の見通しから比べて、原油価格は高めの予想をしています。原油価格は2003年に31ドルであったものが、2030年には57ドルになるとしています。物価上昇指数を反映させた2030年の通貨価格では107ドルになるそうです。
現在の70ドルという価格は今後下がる方向ではあるが、35-40ドルといったレベルになることは無い、としています。

非在来型資源として、オイルサンド、ビチューメン、バイオ燃料、GTLなどが今後伸びると予想しています。なかでもカナダのオイルサンドは2005年の1.6 million b/dから2030年には3.5 million b/dに延びると予想しています。カナダ政府の予想は6 million b/dともっと大きくなっています。

非在来型資源ではオイルシェールを見込んでいません。これは採掘と埋め戻しに75ドル/バーレル以上のコストとなるためです。今後利用されるようになるには、in-situ採掘法が開発される必要があるでしょう。

天然ガスは原油よりも価格が低位で安定していることから、最も需要増加が大きく2003年の95tcfから182tcfに倍増する見込みです。

世界の石油会社の勢力地図

2006-07-20 | 石油
国際石油会社・メジャーとは、原油の開発、生産、精製、販売といういわゆる上流から下流まで一環操業を行なう企業です。かつては、エクソン、モービル、テキサコ、ソーカル、ガルフ、シェル、BPがセブンシスターズと呼ばれ(何でブラザーズではないのか分かりませんが)た時代があった。しかし90年代の原油価格低迷期に大型合併があり、現在はエクソンモービル、シェブロン、シェル、BP、トタールの5社になり、スーパーメジャーと呼ばれている。さらにかつては独立系と呼ばれていたコノコフィリップスなどもメジャーと呼んでもよい位の規模になっている。

産油国いわゆるOPECとこのメジャーが原油価格の主導権を争うという図式がしばらく続いていたが、ここにきて国営石油会社という新たな勢力が台頭してきており、石油会社の勢力地図は大きく変化している。特に中国やインドなどのアジアの国営石油は積極的にM&Aを仕掛けており、中国のCNOOCがアメリカ・ユノカルをシェブロンと争ったのは記憶に新しい。結局国防上の理由から議会の反対に合い、CNOOCのもくろみは達成されなかった。しかしその後CNOOCはペトロカナダの持っていたシリアの利権を買い取るなど、積極政策に変更は無い。

中国の国営石油にはSinopec、CNPC、CNOOCがあるが、いずれも中長期的なエネルギー確保という中国共産党の政策要求に答えるため、積極的な買収を継続しているのであろう。

国営石油は政府という強いバックアップを受けて、国際石油市場で大きな影響力を持つようになってきている。ロシアのガスプロムが天然ガス価格交渉でガス供給停止という強硬手段をいともたやすく使ってきたのも、国営石油会社ならではである。もっとも、ロシア政府の意向によりガスプロムが動いたと考えるのが普通ではあるが。

国営石油会社の資産買収に当たっては、政府のエネルギー安全保障・確保という政策に沿って、買収価格が高かろうと経済性を抜きにして進めている、したがって国際石油会社はその割を食って、石油資源・資産価格が上がってしまっている、という指摘がある。

Wood Mackenzie社のアナリストはこの意見を否定している。確かに油田資源資産の買収価格は2004年当初は22ドル/バーレルであり、2006年初では40ドル近くまで高騰はしている。しかし、国際石油会社と国営石油の買収価格を比較すると、むしろ国際石油会社のほうが買収価格は高くなっている。というわけで、国営石油会社がなりふり構わず石油資源を買いあさっているという言い方は、妥当では無いだろう。

とはいえ国営石油の勢力が台頭していることには間違い無い。このような中にあって、日本の会社は世界の中の石油資源確保という競争に伍していけるだろうか、という問題提起がある。脱石油、石油代替エネルギー開発と確保は待ったなしの状況ではあり、進めていかなければならないが、これはあくまで中長期的な課題であって、この冬の灯油の確保も怠ってはならない。

原油高が石油会社にプレッシャー

2006-07-18 | 石油
石油会社といえば日本ではENEOSなどのガソリン販売・精製を思い浮かべますが、世界でOil companyといえば原油を生産している会社のことです。日本のENEOSももちろん原油を生産してはいますが、むしろ帝国石油や石油資源開発という社名を上げたほうが分かりやすいでしょう。原油価格が上昇して石油会社は売り上げが直接伸びるのですが、このことが大きなプレッシャーとなっているそうです。

それは、消費者から見ると原油が値上がりし、ガソリンが値上がりし、石油会社は莫大な利益を得ているのに、もっと原油生産を増やしてガソリンの供給量を増やして、価格を下げるようにすべきという考えです。

しかし石油会社にも数々の言い訳があるようです。
(1)油田の開発は長期投資
鉱区の採掘権を取り、油層を探し当て、原油を生産するには長い時間がかかります。ここ1,2年原油が高いからといって、その価格を当てにして開発に着手すると原油価格が急落し原油が余った時のリスクが大きすぎるというものです。石油会社は過去何回もこのoil glutを経験していて、学習しているというわけです。

DOEの2006年長期原油価格見通しでは、昨年見通しより大幅に上昇しているといっても2010年で45ドル、2020年で46ドルです。足元の価格水準に比べて随分と低くなっています。最もピークオイル説を主張する人は、こんなもんでは済まされんと反論するでしょう。しかし、私企業が行なっている以上、過大なリスクを抱え込むことは出来ません。

(2)国営石油の台頭と鉱区の奪い合い
近年では石油会社を国営にするところが増えました。ガスプロム(ロシア)、ペメックス(メキシコ)、ペドベサ(ベネズエラ)、ペトロナス(マレーシア)、ペトロブラス(ブラジル)などです。これら国営企業はひどい時には契約を一方的に破棄し、開発コストの低い鉱区を占有し、外国メジャーには開発コストの高いあるいはリスクの大きい鉱区を割り当てるという状況になっています。

(3)過去の利益と開発投資
2004年以降、石油会社の収益は向上していますが、2000年から2003年にかけては収益が減少していく中にあって、収益以上の開発投資をしてきたという事実があります。例えば、2002年は利益30Billion$以下ですが、開発投資は60Billion$を超えています。つまり、以前から利益を確保せず原油開発には当然取り組んでおり、これからも同様ですということでしょう。

(4)業界の構造
エクソンモービル、BP、シェル、トタール、シェブロン、コノコフィリップスなどのメジャーは100Billion$を超える資産(油田)を持ってはいますが、これらメジャーの合計は全合計の半分以下です。半分以上はいわゆるIndependentと呼ばれる中小の石油会社であり、彼らはその規模ゆえ短期の開発行動しかとりません。メジャーだけで石油供給を担っているわけではありません。

(5)油田開発に必要な要人と機材
油田開発には専用の機材と技術者が必要です。しかし95年以降の原油価格低迷により2003年まで石油会社は従業員を減らしてきました。直ぐに油田開発を拡大しようにも技術者がいません。さらに2004年以降は人件費が10%以上も上昇し、機材の価格は5倍です。機材はリースされるのが普通ですが、機材が足りないという状況です。

というように油田開発を大幅拡大して原油生産を増やせという世論に、直ぐに対応できるわけではなく、これが大きなプレッシャーになっているということです。
油田開発投資をめぐるこの辺の状況は、ピークオイル説を勢い付ける一つの要因とも言えるでしょう。

Coal to Liquid

2006-07-12 | 石炭
日本語で言えば石炭の液化ですが、より正確に表現するならば石炭を原料として液体燃料を製造する技術、ということになります。石炭液化には直接法と間接法がありますが、今の主流は間接法です。

間接という意味は、石炭から一旦合成ガスを作ってそのガスから液体燃料をFT合成するからです。CTGとGTLを組み合わせた方法といえます。直接法に比べて回り道にはなりますが、直接法は技術的に課題を残していることから、南アフリカ(SASOL社)では間接法の商業プラントを長年にわたって操業しています。近年はGTLやガス化技術が進んで、コスト的には直接法も間接法も大差ないのではと想像されます。

米国は中東原油依存から脱却したいわけですが、その方法の一つに国内資源である石炭の利用があります。発電分野では石炭火力の割合が51%で、石油はわずかに2.5%です。日本の発電燃料は石炭24%、石油11%ですから、いかにアメリカの電力が石炭に依存しているかが分かります。

ついでに言えば各国の主要電力源は次に用になっています。カナダは水力58%、インドは石炭で70%、中国も石炭で77%、ロシアは天然ガスで43%、フランスは原子力で78%、ブラジルは水力で83%です。この主要電力源を見ていると各国のあり方の一面が分かります。

日本は天然ガス、石炭、原子力がほぼ4分の1で、石油と水力が各1割と他の国に比べてバランスの良い割合になっています。最も裏を返せばどれも自国では取れないので、分散させているわけです。

ところでいずれの国も電力の石油への依存は小さいことがわかります。(中東産油国を除く)つまり石油、液体燃料は発電ではなく輸送用燃料として使われているわけです。それは液体燃料がもっともエネルギー密度が高く、ガス燃料ではタンクが大きくなりすぎ、固体燃料は内燃機関で燃やせないからです。

アメリカのRentechという会社が、イリノイ州にある天然ガスから肥料を作るプラントを買ったとのこと。この会社はGTL技術を得意とする会社なので、肥料を作るのではなくこのプラントを改造などして、CTLを事業化しようとしています。同社はミシシッピーに二基目、ワイオミングに三基目を計画しているとも伝えられます。
同様にタルサにあるSyntroleum社もCTLを計画しているようです。シカゴのGreatPoint Energy社は、ラボスケールですが石炭をガス化して、その合成ガスからメタンリッチな都市ガスを製造する検討を行なっています。

いずれも原油価格の高騰で石炭液化の採算性が取れるようになる、と踏んでいます。石炭液化のコストはおおよそ$25/バレルといわれていますが、軽油がバレル100ドルを越えるような価格の現状ならば、充分経済的に成り立つのでしょう。

但し、CO2排出の問題がついて回っています。石炭から軽油を作るとCO2の発生が増加するという指摘があります。NYTimesの記事によれば、原油から軽油を作って使うと2.98kg-CO2/Lの発生量だが、石炭からだと5.37とほぼ2倍に増加してしまうそうです。この差の大部分は石炭から軽油を製造する段階で発生しており、困った問題になります。
ということは石炭液化工程で発生するCO2は隔離、固定化が不可欠ということになるでしょう。