気のせいか、前宣伝が巧みな映画ほど見てがっかりする。中国の中央公文書館が、旧日本軍の「戦犯」供述書の公開を始め、「侵略中の反人道的な暴行を暴き出す」という惹句(じゃっく)に踊らされてサイトをのぞいてみたが、とんだ食わせものだった。
▼初日は鈴木啓久第117師団長、2日目は藤田茂第59師団長の供述書が公開されたが、ああ、懐かしい。彼らの供述書は、Aという写真家が平成10年、日本の新聞社などに持ち込んだ代物である。ある地方紙などは、供述書をもとに1面トップで『「慰安婦連行」軍の命令』と報じたが、裏付ける証拠はとうとう出てこなかった。
▼もちろん、朝日新聞も大きくとりあげたが、なぜか「慰安婦」の見出しはなく、「罪を清書 普通の日本人に戻れた」(平成10年4月5日付)と情感たっぷりに描いた。記事の末尾に「当時は真実を言うことが期待できる状況ではなかった」との証言をアリバイで付け足してはいたが。
▼今後も日本軍の残虐ぶりを示す「供述」が次から次に出ようが、信憑(しんぴょう)性はゼロに近い。彼らは、シベリア抑留を経て中国・撫順の戦犯管理所に送られ、生きるか死ぬかの極限状況で洗脳工作を受けた。