電車が目前に迫る中での救出劇だったという。踏切内に取り残されていた80代男性を救ったとして大阪府警貝塚署は、いずれも会社員の京太樹(きょう・たいき)さん(24)=奈良県生駒市=と岡田夏輝さん(24)=大阪市住之江区=に感謝状を贈った。2人は会社の同僚。息の合ったコンビプレーが光った。
6月23日午後6時45分ごろ、南海電鉄貝塚駅近く。仕事終わりにコンビニの駐車場で休憩していたときだった。遮断機が下りた踏切内で、自転車とともによろけている男性の姿が目に入った。「考える前に体が動いていた」(京さん)。
男性は踏切の外と勘違いしていたのか、その場を動こうとしない。落ち着かせるように「大丈夫やで」と繰り返し声を掛け、帰宅途中に居合わせた貝塚署員(56)と協力して男性を支えた。京さんに続いて駆け付けていた岡田さんが遮断棒を持ち上げ、その間に男性を無事脱出させた。電車は男性に気付き減速こそしていたが、約200メートル手前まで迫っていたという。
2人は貝塚市の鉄鋼鎔断(ようだん)加工会社「菰下(こもした)鎔断」の同僚。営業部に所属し、年次が2つ上の京さんは、今年4月に入社した岡田さんの指導係を務めている。ともに営業先を回ることも多く、2人は「良いコンビ」と声をそろえる。
貝塚署の田中和也署長から感謝状を受け取った京さんは「『助けないと』ということだけで、電車が迫っているかどうかなんて考えていなかった」と振り返りつつ、「(同じような場面に遭遇しても)まず身の安全を確認してから行動を」と冷静さも忘れなかった。
そんな京さんに岡田さんは「やっぱり頼れる先輩。気付いたときにはもう走り出していたので」。当の先輩は照れくさそうに笑った。(中井芳野) 産経新聞