クワガタのメス

8月も下旬の　ある夜のこと


自宅前で　足を止めた夫
何かが　いる

夫「・・・あ♪」

と言ったまま　玄関内に招き入れ
いそいそと昆虫ゼリーを差し出します

私には　黒く大きな虫　としか
認識できなかったのですが

夫は一発で　クワガタのメスだ！　と
分かったそうです

私「良く一瞬で　分かるよなぁ・・・」
夫「男ですから！」

ドヤ顔されましたがな
！_(￣▽￣)ノ彡！

見つけた瞬間　引っ繰り返って
地団太を踏むが如く
足をバタつかせていた彼女

そのままでは床が滑るだろうもん、と
ハンカチサイズのタオルを敷いて
ゼリー設置

見詰めていると　
中々　食べないんですよねー

奴等　夜行性だから、な
明かりを点けたまんまだと
動きが鈍いのか！？

だけん　暗がりの中
玄関灯に群がっていた時には
一度に五匹いたって言うし・・

その夜　私は爆睡していたんですが
丑三つ時を過ぎた刻の写真を
夫が撮影していたのでした

って事は　
今　クワ子ちゃんがいる玄関灯を消して
居間の電気を点けっ放しにした場合

クワ子ちゃんが　暗がりの中の光を求めて
居間に乱入する恐れが有るナ・・・

するってえと
我が家にはエアコンが居間にしかない故に
居間と寝室の間の扉を開け放しているから

ややもすると　目覚めた瞬間
クワ子と目が合う可能性も　否定できない

いやいや　寝相の悪さで有名な私のこと
最悪　クワ子をぶっ潰してしまっては
寝覚めも悪かろうもん

なんて妄想を悶々とした挙句に
決断した

我等が未だ起きている間は
玄関灯を点けたままに　しておこう！

何時も　夫より睡眠時間が長い私は
居間に夫を残し　先に就寝する事も多いのだが

私が安心して眠っている間に
夫は　一つの細工をした様子

朝になって気付くと
クワ子の上に

チョコレートの箱が
被せられていた

ゼリーを食べる為に
這い出た　クワ子

何だか　唐笠を頭に乗せた
白塗り人に

黒い　クワ子が
見つめられているかのような図

に　思えたのでしタ

その後　彼女は　数日に渡り
我が家内で　脱走を繰り返し

白い壁の細い柱っぽい部分に
張り付いてみたり

風呂蓋の底で　隠れん坊して
真っ裸の私を　フリーズさせたりもした

(もう、今夜こそは逃がしてあげなよ・・・)

と思った日に限って　
其処に居ないのダ

(メスだよな・・出産するんだよな・・
あ、間違った、産卵だよな～)

私「ねぇ・・来年の今頃　得体の知れない虫が
ブヒャーっと出現なんて　しないだろうねぇ・・・」

(あ、でも　卵から孵化するとか
そういう話ではなくって・・・アレ？

白くって　丸まっている幼虫めいた
アレだっけか！？)

夫「大丈夫だよ、土の中でしか　産まないから」

そういう問題かーい

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