国宝級の仏像との撮影も自由=三重県名張市西田原の弥勒寺で2016年7月2日、広瀬晃子撮影
「重要文化財の仏像と間近でツーショットが撮れる」と、里山の小さな古刹(こさつ)が人気を集めている。三重県名張市西田原の弥勒(みろく)寺(岩本善雅住職)は本堂内で自由に写真を撮影でき、“仏像の宝庫”としてネットで紹介されるなど、ファンの間で隠れた名所となっている。
736(天平8)年に建立された弥勒寺には、国重要文化財の「木造聖観音立像」「木造十一面観音立像」(いずれも平安時代後期)がある。本堂にはこの2体を含め大小12体が並ぶが、触れることを禁じているだけだ。管理人から「もっと近くに寄って見て」と声を掛けられ、参拝者が驚くことさえある。
寺の総代長、家里英夫さん(69)によると、これらの仏像はかつて本堂裏の建物に保管されていた。5年ほど前、「貴重な仏さんだからこそ、多くの人に見てもらうべきだ」という檀家(だんか)の意に沿う形で公開が決まった。参拝客が殺到する心配もなかったため、厳しい条件を設けなかった。
「京都仏教会」(京都市)などによると、国宝や国宝級の仏像がある寺のほとんどは写真撮影を禁じているという。著作権の問題や他の参拝者への配慮、文化財保護などが理由で、看板などを立てて注意を促している。県の文化財担当者も「ここまでフレンドリーに仏像と接することができる寺は聞いたことがない」と話す。
仏像ブームも手伝い、北海道や九州も含めて全国各地から弥勒寺にファンが訪れている。中には本堂に5時間も滞在して仏像と“対話する”人もいたという。
川崎市から訪れた大学研究員の久保真紀子さん(33)は「多くの寺を参拝してきたが、仏像と並んで写真が撮れるところは初めて。ファンとしてうれしい」と喜んでいた。拝観料500円。問い合わせは0595・65・3563。【広瀬晃子】