ブラジルで蝶が舞えば、地球の裏側の気象が変わるという。
もしそうなら、自由を失って、得られる自由も、ありえる。
過酷な人生であるからこそ、夢は輝く。
6 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
感動はしなかったが秀作だと思った, 2008/6/20
By 勝王 (千葉県) - レビューをすべて見る
映画としてはよく出来ていて、それなりに満足しましたが、感動というところまでは至らず。しかし、秀作だと思います。
これは実話だったんですね。全然知りませんでした。閉じこめ症候群という難病で左目しか動かせなくなった元ELLEの編集長が、まばたきだけを使って本を書く、という話。病室の中の描写ばかりになる懸念もあり、どう撮るのかと思ったら、ちゃんと風景の中で描いていて安心しました。やっぱり映画は風景を描かないといけないよなあと思います。
冒頭から、左目だけしか見えない主人公の「視点」で映像が描かれるのですが、何となくモヤモヤして視野が狭い映像に主人公の独白のナレーションで、この独白がずっと続くのはつらいな、と思いましたが、撮り方はなかなか面白いと思いました。変な映像というのはこのように必然性があればいいですね。
そこから主人公の「想像」や「記憶」の映像になっていくんですが、ここが良かったです。現実のようで、現実でないような絵。ヤヌス・カミンスキーの暗い映像がこの作品には合っていました。
難病ものは日本映画だとどうしても泣かせようとして変な設定にしたり、役者が泣いたり叫んだりするんですけれど、そういう恥ずかしい場面がないのがいいです。この主人公なんて、病気になっても愛人からの電話を元妻に「翻訳」させたりして、決して病気になったから善人、というような薄っぺらい展開じゃないんですよね。主人公の「視点」もスカートの下の脚、みたいなところばっかり映ってますし、美人が来ると「女」として見てますし。マックス・フォン・シドーの父親とのやりとりがややしつこい気はしましたが、他は違和感がなかったというのは凄いと思います。
だから悲壮感がほとんどありません。そこが最大のいいところです。
難病になってからの顔がリアルで、マチュー・アマルリックは名演だと思いました。現実と、夢と、記憶が交互に描かれていく中で、見ている方も現実が夢みたいに、記憶が現実みたいに思えてきて、それがとても切ないです。海岸で主人公の元妻と子供たちが遊ぶと場面などは夢のように思えて、それは主人公が最後に死んでしまうことを考えると、まさに夢だったのかも知れず、人生そのものも夢のようなものではないか、などという思いも出てきます。
しかし、見終わって、深い感動にまでは至らなかったのは、つまらない無理やりのドラマチックな展開がない代わりに、面白く生き生きとしたドラマチックな展開もなかったからかも知れません。実話ですからそれも仕方ないという気もします。秀作であることに間違いはないと思いました。
もしそうなら、自由を失って、得られる自由も、ありえる。
過酷な人生であるからこそ、夢は輝く。
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6 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
感動はしなかったが秀作だと思った, 2008/6/20
By 勝王 (千葉県) - レビューをすべて見る
映画としてはよく出来ていて、それなりに満足しましたが、感動というところまでは至らず。しかし、秀作だと思います。
これは実話だったんですね。全然知りませんでした。閉じこめ症候群という難病で左目しか動かせなくなった元ELLEの編集長が、まばたきだけを使って本を書く、という話。病室の中の描写ばかりになる懸念もあり、どう撮るのかと思ったら、ちゃんと風景の中で描いていて安心しました。やっぱり映画は風景を描かないといけないよなあと思います。
冒頭から、左目だけしか見えない主人公の「視点」で映像が描かれるのですが、何となくモヤモヤして視野が狭い映像に主人公の独白のナレーションで、この独白がずっと続くのはつらいな、と思いましたが、撮り方はなかなか面白いと思いました。変な映像というのはこのように必然性があればいいですね。
そこから主人公の「想像」や「記憶」の映像になっていくんですが、ここが良かったです。現実のようで、現実でないような絵。ヤヌス・カミンスキーの暗い映像がこの作品には合っていました。
難病ものは日本映画だとどうしても泣かせようとして変な設定にしたり、役者が泣いたり叫んだりするんですけれど、そういう恥ずかしい場面がないのがいいです。この主人公なんて、病気になっても愛人からの電話を元妻に「翻訳」させたりして、決して病気になったから善人、というような薄っぺらい展開じゃないんですよね。主人公の「視点」もスカートの下の脚、みたいなところばっかり映ってますし、美人が来ると「女」として見てますし。マックス・フォン・シドーの父親とのやりとりがややしつこい気はしましたが、他は違和感がなかったというのは凄いと思います。
だから悲壮感がほとんどありません。そこが最大のいいところです。
難病になってからの顔がリアルで、マチュー・アマルリックは名演だと思いました。現実と、夢と、記憶が交互に描かれていく中で、見ている方も現実が夢みたいに、記憶が現実みたいに思えてきて、それがとても切ないです。海岸で主人公の元妻と子供たちが遊ぶと場面などは夢のように思えて、それは主人公が最後に死んでしまうことを考えると、まさに夢だったのかも知れず、人生そのものも夢のようなものではないか、などという思いも出てきます。
しかし、見終わって、深い感動にまでは至らなかったのは、つまらない無理やりのドラマチックな展開がない代わりに、面白く生き生きとしたドラマチックな展開もなかったからかも知れません。実話ですからそれも仕方ないという気もします。秀作であることに間違いはないと思いました。