G.G.の徒然山遊録

岐阜各務原市周辺の低山の山行記録、折々の雑感、書評などの雑文を記し、山に関する情報を提供します。

「登山の哲学」の読後感

2013-10-27 | 日記

 最近、「登山の哲学」を読了しましたので読後感を書いてみました。書名に「哲学」とありますが、哲学的な事は何も書かれていません。内容は8000m超の14峰登頂の概要とその間の、2度の命拾いの話、8000mの自然環境、登山界事情、登山技術の変遷、情報機器の活用、山岳界への提言などが淡々と語られています。
  話題は8000m超の高所登山スペシャリストの体験談をベースにしたものですが、一般のアマチュア登山者にも役立つ点が多々あります。高所登山に関する知見を分り易く説明している読み物としても非常に示唆に富み、一気に読ませる面白さがあります。山好きの方に一読をお勧めしたい一冊です。
  著者の言わんとしている事を曲解している所もあるかも知れませんが、個人的に特に興味を覚えた事項、感動した事項、参考になった事項などを下に示します。 

2度の命拾いのエピソード:2度の9死に一生を得た事故、病気にも懲りずに高所登山に挑戦し続ける執念は凄い。

高度8000mの夜空:星が明るく、多過ぎて星座も識別できない。又、空は星の間の黒い隙間に見える。筆者もアルプス山上ですが、星を見て何回も感動を経験しているので著者の感激が良く分ります。

高精度な長期天気予報の威力:国内外に山の気象予測会社があり、クライマーに現地の長期天気予報を提供し、登頂の成功率向上に大いに貢献している。 
 筆者等も山行実施に先立ち、現地の天気予報(山頂付近の風速、温度を含む)をチェックし、山行日を決定している。登山適否の確認はどんな山行でも一番重要な事項と思います。

山も情報化時代:ベースキャンプにはパソコン、衛星電話、モデム、ソーラーパネル、バッテリーなどが設置され電話、インターネットで種々の情報を授受している。著者の場合、ブログで現地の状況も発信している。
 我々も山行にはデジカメ、携帯電話、GPS(スマホ)などを携帯している。又、事前に現地までの道路状況、登山道の状況、山行所要時間などを電話やインターネットで確認している。 

特別なトレーニングは無用:著者は身長180cm、体重60数kgのどちらかと言えば細身の男性で、特別なトレーニングは一切していない。高所登山のトレーニングは高所登山が一番で、これを何年も続けてきた結果、体が高所登山に適した身体になったようである。
  筆者の場合も、頻繁な山行がベストなトレーニングであると思っています。

登山技術の変遷:極地法、アルパインスタイル/組織登山、国際公募隊など登高技術、登山パーティーの組み方なども時代と共に進化しているのが良く分る。

経験は積み重ねず、並べるものこの章が強いて言えば哲学的な表現になっていて本書では一番、分かり難いが主旨は次のような事であろう。
   高所登山、一般的に登山でも毎回条件は異なるので、毎回が初回であり、過去の経験だけでは問題は乗り切れない。経験だけに頼って登るのはマニュアル通りに行動するようなものであり山では通用しない。過去の経験は問題解決の知識であり、その間隙を想像で埋めてゆく為に経験は並べて置くのが良い。

*著者:竹内 洋岳(ひろたか)(1971年生まれ)、NHK出版新書、2013.5.10発行