少数派シリーズ/社会の弱者・人権(赤旗だより)
ウィシュマさん入管死亡事件報告書、非人道性は明らか飢餓状態放置・嘲笑浴びせる
緊急事態宣言に同調し投稿を控えていたため、投稿日と記事の日時・状況と整合性がありません。
■「最終報告書」では死因さえ特定しないまま名古屋入管の対応を正当化する内容
投稿はしんぶん赤旗を活用しております/名古屋出入国在留管理局の収容施設でスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが3月に亡くなった事件で入管庁は、最終報告書を公表しました。報告書は、体制などで改善すべき点があったとしたものの、各地の入管施設で死亡事件が相次いでいたのに、なぜ教訓化されず死を防げなかったのか、具体的検証はありません。「不当なものであったと評価することはできない」と入管庁の対応を正当化さえしました。当事者である同庁任せの調査では全容解明ができないことは明らかです。報告書は、「病死」としながら、死因特定は「困難」としました。死亡の1カ月以上前から嘔吐(おうと)を繰り返し、「食べたいが食べられない」と訴えていたにもかかわらず、摂取できた量も不明です。
亡くなる3週間前の尿検査の結果は、「飢餓状態」でしたが、内科的な処置は行われていません。この検査結果は、4月に入管庁が公表した中間報告で伏せられていました。本人が点滴や受診を求めていた事実も分かりましたが対応しませんでした。収容の契機とされるウィシュマさんのDV被害についての調査もおざなりです。報告書は、これらの原因を「医療体制の制約」や情報共有・対応の体制の問題としています。しかし、入管職員が、体調不良の訴えは仮放免を得るための「詐病」とみなしたとの記述もあり、体制があっても対応しなかった可能性は否定できません。各地の入管施設では以前から、体調不良を訴えても診療を認めようとせず、診察までかなりの日数がかかるなど被収容者にまともに向き合わない姿勢が批判されてきました。
■在留資格のない外国人は全て収容する「全件収容主義」・構造的な「問題を不問にするな
背景には、仮放免や入院の必要性について、医師の判断より施設長の判断を優先させる入管行政の構造上の問題があります。報告書は、在留資格のない外国人は全て収容する「全件収容主義」のもとで、司法審査を経ず無期限で収容する非人道的な扱いなど、国際的に批判の強い制度のあり方には一切言及していません。ウィシュマさんの仮放免を不許可とした決裁書には「支援者にあおられて仮放免を求めて執ように体調不良を訴えてきている者」「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要あり」と記されていたとしています。被収容者の訴えに耳を傾けず、長期収容を送還に追い込む手段として、組織的に用いていることをうかがわせます。
入管施設で医療を受けられず死亡した事例が後を絶たず、職員の暴力、暴言、人権侵害を告発する声も続出していたのに改善されないことは深刻です。ウィシュマさんがものを飲み込めず苦しむ様子をからかう職員がいたことは、信じがたい人権意識の欠如です。これまでの事件の際、不十分な調査でお茶を濁し、人権無視体質を温存してきたことを猛省すべきです。今回の報告書で幕引きは許されません。第三者による内部立ち入りを含めた調査、ウィシュマさん死亡前の施設内でのビデオ映像の全面開示、国会での十分な審議を行い、真相を徹底究明すべきです。その上で、外国人の人権保障の観点にたち、「全件収容主義」の廃止など、入管行政そのものを抜本的に改めなければなりません。
<ウィシュマさん死亡の経緯>
・2017年6月、留学生として入国。しかし学費が払えなくなり、日本語学校の籍を喪失。
・19年1月下旬から、超過滞在となる。
・20年8月、同居人の暴力から逃れるため交番に相談したところ、不法残留で逮捕。名古屋入管に収容される。
・21年1月頃から体調不良を訴え、3月6日、33歳で亡くなった。
・体重は収容半年で約20kg減少、仮放免や病院での点滴を求めましたが認められず。
■日本共産党・藤野保史衆院議員のコメント「戦前の特高警察から続く異様な制度」
『入管庁の外国人収容施設では、2007年以降17人が亡くなっています。「在留資格が切れた」という形式的な理由で、裁判所も通さず、入管庁の独断で収容施設に追いやるものです。収容期間の上限もありません。国際的に見ても異様な制度であり、国連機関から再三「人権侵害」を指摘されています。戦前、入管は内務省の管轄で、特高警察が実務を担っていました。外国人の権利を認めず、治安のための取り締まりの対象でした。この特高警察的な入管制度が戦後70年以上も法改正もされず、今日に至っています。現行の入管制度も、外国人を管理の対象としてか見ていません。最初から、「厄介者」扱いなのです。根底には、政府・財界が、外国人労働者を「安価」で「調整可能」な存在としてしか見ていない。必要な時だけ働かせ、不必要になったら帰国させる。そこには外国人の人権を尊重する考えはありません。外国人の受け入れの在り方を含め、入管制度の根幹を抜本的に正していくことが必要です。』
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投稿者からのひと言/遺族が求めた監視ビデオを見た妹のワヨミさんは、あまりにも酷くて見ていられず中断したと言う。法務省は監視映像2週間分を2時間に編集したというが、恐らくカットされた部分はもっと残虐なことがあったと容易に推察される。妹は「姉は助かることができたはずなのに、病院にも連れて行かれず、犬のような扱いをされていた」と号泣して訴えた。ウィシュマさんがカフェオレを上手く飲み込めずに鼻から出してしまうと、看守は「鼻から牛乳や」と嘲笑った。死亡の数時間前には、「ねえ薬(やく)決まってる?」とあたかも薬物常習者と見做す対応。床に倒れている彼女をベッドに戻す際も、看守は「重たい、重たい」を連発。人としての扱いがされていない様子だった。とにかく入管は、最初から「厄介者」の扱い。専門家は昔から訴えていたが、いわゆる外から見えないブラックボックス化していることから、入管の制度や看守も「人間の尊厳」の意識などない。これを機会にと言えば亡くなったウィシュマさんに失礼だが、一刻も早く根本的に入管制度を見直さなければならない。