両国吊橋を渡りながら右手を見下ろすと、御覧のように川根両国車両区がよく見えました。まるで模型のジオラマのようでした。これはNゲージのジオラマ製作のよい参考になるぞ、と思いました。
周知のように、鉄道模型のNゲージは1/150スケールですので、そのジオラマはだいたいは俯瞰する形で見下ろすことになります。目線の高さや目線より上の位置で製作することはまずありません。
なので、高い所から見下ろすような形で模型の製作を進めるわけですが、鉄道模型のモデルになる実際の鉄道を、上図のように上から俯瞰する機会というのはそうそうありません。線路や駅の上をまたぐ陸橋や車道などから見下ろしたり、高い駅ビルや隣接するビルなどから見下ろしたりする程度でしょう。
大井川鐡道においても、高い位置から鉄道を眺められる場所というのは限られています。本線では新金谷駅の車両区の南側の陸橋ぐらいしか思い浮かびません。井川線では山奥の林道から遠く離れて見下ろせるポイントが幾つかあるそうですが、近接して見下ろせる場所はここ両国吊橋ぐらいだと思います。
しかも両国吊橋はゆるキャンの聖地の一つとして知られ、原作でもアニメ3期でも、吊橋を渡る志摩リンと土岐綾乃の場面に上図に近いアングルで川根両国車両区も出ています。上図のような駐機車輌は描かれていませんでしたが、奥の機関車庫や線路はそのまま描かれています。
さきに川根両国駅のホームからもチラリと見えていた列車は、御覧のように「訓練」のヘッドマークが付けられた訓練用の一編成でした。DD20形機関車、スロフ客車、そして上図のクハ600形客車の3輌編成でした。
その訓練列車は、機関車庫に通じる四本の線路のひとつに停まっていましたが、機関車庫へ収容するためではなさそうでした。同じ線路の機関車庫内に別の車輌がシートを被せて保管してあったからです。
両国吊橋を少し北へ渡って移動し、川根両国車両区を斜めから見ました。この角度からは川根両国駅からの本線も見えますが、駅内の線路がストレートに車両区の線路にポイントなどで繋がっていない様子でした。
訓練列車のクハ600形を望遠モードで撮りました。車番はクハ604でした。
機関車庫の脇へ伸びる三本の側線に駐機してある車輌群を見ました。左の機関車庫わきの側線にシートをかぶせて置いてあるのが、おそらくDD100形ディーゼル機関車でしょう。かつて井川線にて8輌が運用されていましたが、いまはDD107号機のみが残り、廃車となった後もずっと川根両国車両区にて静態保存されています。
その隣の、真ん中の側線には3輌の貨車が見えました。手前は川根両国駅でも見かけたcトキ200形貨車ですが、真ん中の貨車はよく見えず、奥の貨車は初めて見る形式でした。奥の貨車は中央が窪んだトレーラーのような形状で、コンクリートらしい方形の塊を5個載せていました。
デジカメの望遠モードを最大限に発揮して、その中央が窪んだ形状の貨車を見つめました。そうか、あれが井川線に1輌が現存しているというcシキ300形貨車か、と思い至りました。
cシキ300形貨車は、井川線の前身である中部電力専用線において、井川ダム建設の際に発電機や変圧器の大型機材を輸送する必要があったため、昭和二十九年(1954)に飯野産業(現・日立造船)で2両が製造された2軸ボギー低床式大物車の一種です。現在はシキ301のみが在籍し、井川線の保線工事や土砂崩れの復旧工事などで必要な重機を運搬するために使用されているそうです。
このcシキ300形貨車もNゲージの模型は出ていませんが、国鉄のシキ70形貨車にほぼ一致する姿で、全長が約1メートルほど短いだけなので、甲府モデルさんが出しているシキ70形貨車の1/150ペーパーキットを利用して、長さを約6ミリほど縮めれば、cシキ300形貨車っぽく作れそうだな、と考えています。
その後、機関車庫の内部を望遠モードで覗いてみて、右から2番目の線路上にトーマスファミリーのラスティーに扮したDB1形ディーゼル機関車が入っているのを確かめました。すでに廃車となっていますが、いまも現役として機関車庫内外の牽引移動用に使われているといい、トーマスイベントの度にラスティーとして展示されていることもしばしばだそうです。
その右隣の線路にも貨車が見えました。川根両国駅でも見かけたcト100形貨車のようでした。
川根両国車両区、なかなか楽しめました。
現在、5か年計画で進めているNゲージジオラマの製作においては井川線をモデルにしていますが、車両区を再現製作するとなれば、当然ながら上図の川根両国車両区がモデルとなります。建物も少なくて機関車庫は御覧の通りのシンプルなタイプで、線路のレイアウトも分かりやすいので、これに八割ぐらい似せる感じで規模も八割ぐらいにして再現製作を試みてみようか、と思案しています。 (続く)