今回S氏が「どうしても買いたいものがあるので・・・」と言ったのは、上図のプラモデル用の工具類のことであった。では、とコーナーに近寄って色々みながら話をした。
S氏が「絶対ないと困る、最低限必要な道具があるって聞きましたけど、どれですか」と尋ねてきたので、私は無言のまま指で6点を指さして教えた。接着剤、ニッパー、ピンセット、アートナイフ、ヤスリ、作業用マット、であった。
「・・・それだけあればええんですか?」
「うん、私がプラモ作る時にいつも使うのがこの6点だからね・・・」
「なるほど、必需品は6点・・・。それに次ぐ道具は何がありますか?」
「うーん、まずはピンバイス、ラインチゼル・・・」
「あっ、ちょっと待って下さい、ピン・・バイス・・?」
そこで該当品を指して教えると、相手はメモしながら「これがピンバイス・・ですか、どういうふうに使うのです?」と聞きました。
「穴を開けるのに使います」
「あっ、それは必要度高そうですねえ」
「時々使いますからな」
「・・・ええと、次のラインチゼルってのは?」
「表面に線や溝などを彫るのに使います」
「はあ・・そんな道具もあるんですねえ・・・」
こんな調子で、陳列されている各種の道具についてS氏との質疑応答が続いたが、とりあえず最初の6点を買うということで、値段の比較をはじめたS氏であった。
「いやー、みんなけっこういい値段しますねえ・・・」
「こういうのはどれもピンキリやけどね、長く使うのならばちゃんとした良いものを買うのが良い。ニッパーやピンセットとかは品質が命だから、少々高くても思い切ったほうがええと思う」
「なるほど・・・、ヤスリやアートナイフや作業用マットもそうなんですかね?」
「いや、それらは好みによるかな。品物によっては割と使えるものが100均ショップでも買えるからね」
「えっ、100円のアートナイフや作業用マットがあるんですか!」
「うん、セリアやダイソーとかで模型用工具を売ってるんでね。ヤスリなんかも私はセリアで買ってます」
「それええですねえ、メモしとこう・・・」
それで、後で近くのダイソーやセリアへ下見に寄ることに決まり、S氏はとりあえずタミヤ製のニッパーおよびピンセットを購入したのであったが、直後に接着剤を忘れたことに気付いて、またコーナーに戻った。
「星野さん、接着剤は何を使っておられるのです?」
「2種類ある、ええと、これとこれです。タミヤのリモネンセメント、クレオスのミスターセメントS」
「・・・どういう接着剤なんですか?」
「リモネンセメントはね、同じタミヤのこっちの白いキャップの四角いやつ、オレンジキャップの六角形と質は同じだけど、接着剤特有のシンナー臭が無くて、オレンジの香りになってるの。とくに女性には好評らしくてモケジョ連中はみんな使ってる。で、ミスターセメントSは、水みたいなサラサラの液状で、チョンと付けると合わせ目や隙間にサーッと流れて行ってゆきわたるの。この両方を場合に応じて使い分けてます」
「なるほど、じゃあ僕もこの2点にします・・・」
それから上図の塗料類のコーナーへ行って質疑応答を重ねた。今回は下見のみだったが、S氏はプラモデルの塗料の数の多さにびっくりしていて、続いてエアブラシなどの塗装用具の豊富さと高価さに驚いていた。
「こういう塗装の道具とかも100均で買えたりするんですか?」
「たぶん買えないと思う。売ってるの見たこと無いからね・・・」
「じゃあ、費用を節約するんやったら、中古品を探すってことになるわけですか?」
「うーん、それは好みによるね。例えばエアブラシなんかは中古品でいくと信頼性がいまいちになるし、新品もいまは中華製の安価品でも割と使えるのがあるから、そういうのが通販で買えたりする。私も中華製のエアブラシを幾つか買ってるけど、問題無く使えてますね・・・」
「なるほど・・・、幾つかって、複数必要なんですか?」
「・・・これ、この道具が塗料を吹き付けるためのもの、ハンドピースと言うのやけど、塗料を吹き出す穴の口径が幾つかあってね、プラモ用のは大体0.3ミリなの。他に0.2ミリや0.5ミリとかもあって、僕はこの3つのサイズのハンドピースを使ってるのでね」
「0.2ミリと0.3ミリと0.5ミリは使い方が違うのですか?」
「いや、使い方は変わらんです、同じ。吹き付けた時の範囲が違うだけ。普通は0.3ミリを使うけど、細かいところや狭い範囲を塗るんやったら0.2ミリが適してるし、ティーガーみたいな大きな車体には0.5ミリのほうが合ってるので、黒森峰女学園の戦車の塗装はたいてい0.5ミリのほうを使ってたね・・・」
「ふーん、僕はまず大洗の戦車から作りたいんで、塗装の段階になって初めて買うなら、0.3ミリ口径のほうで良いんですか?」
「それでええと思う。あとは自分で使っていって、必要なら好みに応じてもう1つ加えたりすればええの。それからこれ、これはコンプレッサーと言って空気を送り出す装置なんだけど、これもピンキリなんで、好みで選べばええよ。ただし、ハンドピースとつなぐホースのサイズが幾つかあるからジョイントも各サイズがある。サイズが合うものを調べて買うこと・・・。あと、音の大きさが様々なんで、なるべく作動音が静かな品を選ぶとか」
「なるほど・・・」
S氏は、私のブログを読んでいるためか、まずは大洗の戦車から作りたいと話した。初めてプラモデルを作るので、組み立るだけでも精一杯かもしれないし、塗装はその段階になってからまた考えるほうが良い、塗料も自分でイメージに合うカラーを好みで選んで買えば良いので、そのようにアドバイスしておいたが、その内容を全てメモして、その後の移動中にいちいち読み直して覚えているS氏であった。
たぶん、仕事においてもきちんとメモをとる几帳面なタイプなんだろうな、と思ったことであった。 (続く)