昨日(17日)神戸で美味しい天ぷらを食べ、豊かな気持ちになった。
満腹した時は、さらさらお茶漬けが食べたくなる。
読書も同じこと。
感動の力作に出会って読み切った時の、満腹感と一種の虚脱感。
その力作とは・・・
・玉岡かおる「お家さん」(新潮文庫)
・梶よう子「北斎まんだら」(講談社時代小説文庫)
・朝井まかて「最悪の将軍」(集英社文庫)
奇しくもい今を時めく女流作家の3作、ここ1週間の間に出会った。
「お家さん」は、明治末から昭和初期にかけて、神戸の「鈴木商店」
の勃興から終焉までを、女性オーナーの鈴木よねと名番頭の金子直
吉をはじめ気鋭の社員たちが展開する、波乱万丈の起業物語。
二人は明治、大正、昭和時代の大波をかぶりつつ、軸足がぶれるこ
となく乗り切リ、当時日本最大の総合商社に育て上げたが、大正期の
米騒動の焼き討ちを契機に急坂を転げ落ちるように傾き、倒産する。
でも、鈴木商店の流れを汲んだ神戸神鋼、帝人、サッポロビール、
IHI、三井化学、昭和シェル石油、双日、日工など有力企業として
生き残り、その足跡は今も脈々と生きている。
「北斎まんだら」は、江戸後期の天才浮世絵師、葛飾北斎の娘・お
栄と美人画絵師・英泉、弟子の三九郎たちの浮世絵にかける熱い
思いを描いた長編。
浮世絵師の物語だから、当然「枕絵(春画)」話も出てくるが、女性
作家の筆致は何とも艶めかしく、くらくらする…これは余談。
朝井まかてさんの「眩(くらら)」(新潮文庫)では、お栄(葛飾応為)を
「江戸のレンブラント」として、また違った側面から描いた大作だ。
併わせて読むと、一層興味がわく。
「最悪の将軍」は、生類憐みの令で「犬公方」の悪名高い五代将軍
徳川綱吉は、大地震と富士山噴火、赤穂浪士討ち入りなどの苦難
に逢いながら、民を「政の本」としてどうあるべきか、と苦悩する。
富士山大噴火が壊滅的な被害をもたらし、江戸に大量の灰が降り
しきるのを見ながら慨嘆する。
「不徳の君主を、天はお責めになっているのであろうか」
「余は、やはり最悪の将軍であるのか」
・・・圧巻の最終場面、新しい視点で描いた「犬公方」綱吉像だろう。
暫くはお茶漬けサラサラの軽妙な小説(作者には悪いが)に浸り、
余韻を楽しむことにしよう。
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