最近、漫画が面白い。
漫画と言っても、今人気の「鬼滅の刃」とかではなくて、杉浦日向子さんの江戸漫画。
楽しんでいるのは名作「百日紅 北斎とその娘お栄 上、下」(ちくま文庫)。
帯評に「ふたりの天才浮世絵師を主人公に、文化爛熟する江戸の生きる人々の交流を描く
杉浦日向子の漫画代表作」とある。
北斎とその娘お栄の物語は、梶ようこ「北斎まんだら」(講談社時代小説文庫)、朝井ま
かて「眩(くらら)」(新潮文庫)などがあり、NHKテレビでもドラマ化され、宮崎あお
い(お栄)長塚京三(北斎)が熱演している。
父親の北斎を「オヤジどの」娘を「アゴ」と呼び、小説もテレビドラマでも、天才絵師親娘
の自由奔放な生きざまを描いているが、杉浦さんの漫画でも父娘が伸び伸び生きている。
「百日紅」は小説に読み疲れたときの「箸休め」のつもりで買っていたが、読みだすと面白
くてたまち魅了されてしまった。
子どものころ夢中になった漫画は福井英一「イガグリくん」、山川惣治「少年ケニア」や成人
して読んだ水島新司の野球漫画「ドカベン」などがあるが、この歳になって漫画にハマるとは。
この「百日紅」は杉浦さんが丁寧な線で描いていて、絵もとてもきれいで気持ちいいのだが、
単行本から文庫化したため、「吹き出し」の文字が小さくなっているのか、少し読みずらい。
杉浦さんは、エッセーで浮世絵など江戸文化のおおらかさを述べている。
浮世絵では当然春画も重要なテーマだが、現代のように反道徳的な隠微なものとして隠そうと
しないところがすばらしいという。
江戸の有名画家はなべて春画(枕絵、あぶな絵)も手掛けており、北斎もお栄も例外ではない。
作品の中でも、杉浦さんは大胆な男女の絡みの絵を登場させているが、いやらしさは微塵もない。
杉浦さんはエッセーで江戸画壇の最高峰でもみんな枕絵を描いており、現代で言うなら東山魁夷
が春画を描くようなものだ、と述べている。
杉浦日向子さんは江戸風俗研究家として大きな足跡を残して、2005(平成17)年に46歳
の若さで死去。
江戸の「粋」をこよなく愛し「にこにこ笑ってらくーに生きればにこにこ笑ってらくーに死ねる」
の名言残している。
1994年から2004年まで続いたNHKの「おえどでござる」は杉浦日向子、伊東四朗、えな
りかずき、重田千穂子らと絶妙のコンビを組み、秀逸なコメディ(教養)番組だった。
もっと江戸文化・風俗を語ってほしかったなあ。
<杉浦日向子さんの名作漫画「百日紅>