キム・ヨナの金メダル「返せ」の大合唱 ロシア・ドーピング問題で垣間見える韓国文化の「恨み」
産経新聞 2/7(火) 10:35配信
韓国の伝統文化の一つと言えば「恨(ハン)」。2014年ソチ五輪で、韓国で絶大な人気を誇るキム・ヨナを破って金メダルを獲得したロシアのアデリナ・ソトニコワ(20)に対する執着は激しいものがある。最近、競技に本格復帰する意向を示し、1年後の平昌五輪を出場の決意を語ると「可能性は高くない」と皮肉る。ロシアの組織的ドーピング問題で、国際オリンピック委員会(IOC)が調査対象にしたソチ五輪代表28選手の中にソトニコワが含まれることが分かると、ネットユーザーは恨みを晴らすかのようにメダルを「早く返せ」の大合唱となっている。
ソトニコワはソチ五輪後、競技生活から離れ、アイスショーなどで活動していた。このため、中央日報は昨年12月末、「ソチ五輪でキム・ヨナを抑えて金メダルを取ったソトニコワが2年連続、公式大会で『行方不明』となっている」と報じ、“あの人は今”状態である現状を伝えた。
実際、五輪後、14~15年シーズンは練習中に転倒して右足首の靱帯を断裂し、国際スケート連盟(ISU)グランプリ(GP)シリーズを欠場。15~16年ではGP第5戦で3位。これが五輪後のめぼしい成績となっている。今季は足首の負傷を理由にGPシリーズに参戦しなかった。
フィギュア界のロシア勢は今、エフゲニア・メドベジェワ、アンナ・ボゴリラヤ、エレーナ・ラディオノワ、ユリア・リプニツカヤら実力派に枚挙にいとまがない。その中で、ソトニコワは1月、ロシア・メディアのOKマガジンとのインタビューで「平昌五輪に出場して素敵な演技で人々に喜んでもらいたい」などと心境を語った。
ただ、韓国メディアは「ソトニコワが再びトップレベルの技を取り戻し、ロシア代表に選ばれるかどうかは疑問が残る」(朝鮮日報)、「今のところ、平昌五輪に出場する可能性は高くない」(東亜日報)などと懐疑的だった。
韓国でソトニコワが注目を浴び、批判の的になるのは、ソチ五輪に起因する。韓国メディアは、目立ったミスのなかったキム・ヨナが計219.11点に留まり、フリーでジャンプを失敗したソトニコワが224.59点で金メダルを獲得。キム・ヨナが2位になったことで判定疑惑が提起された。
激怒した韓国ネットユーザーはソトニコワのフェイスブックに数え切れない誹謗、侮辱的なコメントを書き込み、ソトニコワは「自国のスポーツ選手を支持するのは間違っていない。それは個人の自由。でも、ここに汚い言葉を書き込まないでください」「もしよければ、私がどんな間違いを犯したのかを教えてくれませんか?」とツイートで嘆いたほどだ。
韓国スケート連盟と大韓体育会は判定ではなく、審判陣の構成に関してISU側に提訴したが、結局、棄却された。韓国内では不完全燃焼な格好で事態を収めざるを得ず、まさに「恨」を残す形になった。
昨年12月、ロシアの組織的ドーピング問題に関連し、IOCが尿サンプルが改竄されている可能性が高いロシアのアスリート28人のうちの1人にソトニコワが含まれていることが判明。コリアタイムス紙は「ソトニコワが有罪判決を受けた場合、彼女の金メダルはキム・ヨナに渡る可能性が高い」とし、中央日報は「フィギュアスケートはドーピングに大きな関係のない種目だが、最近、急激な実力低下を経験しているソトニコワに疑いが持たれている状況だ」と問題視した。
この事態を受けて、韓国のネットユーザーが騒然。「金メダルはもともとヨナのものだ」とか「当然、クイーン・ヨナに金メダルを戻すべき」「ソトニコワ、もっと早く返すべきだったのに」など溜飲を下げるかのようなコメントを寄せていた。