反「アパホテル」デモ “無料旅行”とネット募集も参加者100人弱…予定はその10倍だった
産経新聞 2/13(月) 10:00配信
反「アパホテル」デモ “無料旅行”とネット募集も参加者100人弱…予定はその10倍だった
中国人団体が実施したアパホテルへの抗議デモ=5日午後、東京都新宿区(菊本和人撮影)(写真:産経新聞)
日曜日の東京・新宿を横断した在日中国人による「反アパホテル」デモ。「1千人参加」が目標とされていたが、実際に行列に加わったのは100人弱。大きな盛り上がりとはならなかったが、デモ開催情報はインターネットの中国人向けの情報掲示板などを通じ、「無料旅行」などとして拡散した。公安関係者は「短期間で情報が広がり、ある程度の動員がなされた。『第2弾』への警戒が必要だ」と振り返っている。
■新宿を横断、「300人参加」主張も…
今月5日午後、小雨が降る新宿は異様な雰囲気に包まれた。
「中国に帰れ」「日本から出ていけ」。新宿中央公園を出発した中国人のデモは、不測の事態に備えた警察官たちの徹底したガードのもと、反対する団体などの怒号を浴びながら進んだ。
デモに突入しようとした人を警察官が取り押さえる場面もたびたび見られた。折しもこの日は、ある右派系団体の定例集会の日程と重なったこともあり、デモに反対する勢力が数百人規模に膨らんだとみられる。
デモ隊は「JAPAN好きだ」と書かれた横断幕や、パンダの絵とともに「中日友好」「民族の尊厳を守る」と記されたカードを掲げ、新宿御苑前のアパホテル付近まで約2・5キロを歩いた。
沿道を覆い尽くしたデモの喧噪(けんそう)に、様子を見ていた通行人の男性は、「日本が好き、と書かれた横断幕は見えたが、一体何が起きているのかさっぱり分からない」と混乱した様子で話した。
デモ隊は当初、アパホテル側に書面を提出する見通しだったというが、混乱のためかそれも行われず、デモは1時間ほどで終了した。
主催者は、参加者は約300人と主張するが、実際は100人弱とみられる。参加者の1人は「最大で1千人くらい参加する予定だったが、嫌がらせが予想されて何人も辞退した」と話した。
■主催者、名前明かさず
デモを行ったのは、日本で生活する中国人企業経営者や会社員らでつくる「中日民間友好委員会」。アパホテルが「南京大虐殺」や「慰安婦強制連行」などを否定する書籍を客室に備えた問題に抗議するため、このデモのために結成された団体だ。
デモ終了後、主催者の女性は「ご迷惑をおかけしました」と謝罪。「参加した人は勇気ある中国人。日中友好が大切だ」と話した。女性は10年間日本に住んでいるというが、名前や年齢、職業は明らかにせず、日本と中国双方から集まった記者の質問にも多くを語らなかった。
公安関係者の話を総合すると、デモが計画されたのは1月下旬ごろ。その後、インターネット上で情報が拡散していった。
中国人たちに向けたアルバイト情報などを発信する掲示板では1月下旬、「和平旅行」(平和旅行)と題された募集がかかった。冒頭には無料を意味する「免費」の表示。題名だけをみると旅行案内のようだが、中身はデモ参加を呼びかける内容だ。
「中日民間友好委員会」名で、2月5日午後3時から「東京都内の大きな駅近く」で行われる行進について参加を募っている。
注意書きとしては「群衆の反感を招かず、理解を得る」と書かれている。反感を招かないためか「スローガンを叫ぶようなことはしない」「ゴミは拾う」とも記されていた。
また、デモの主催者側は中国大使館に連絡した形跡があり、大使館からは「安全に留意して、法律は順守するように」と回答があったと記されている。大使館側がデモ内容を把握して、黙認していたことが伺える内容だ。
■デモは「これでおしまい」?
これまで国内で中国人がメーンのデモ活動は異例で、警察も機動隊を投入するなどし、警備態勢を強化して臨んだ。
公安関係者は「ネットや口コミで短期間で情報が広がり、ある程度の動員がなされた」と分析。「デモ参加者側が言い返したり、エスカレートした場合には暴徒化したりする懸念もあったが、そういう局面もなかった。比較的平穏に推移したといえる」と話す。
デモに参加していた1人は「これでおしまいだろう」とも話しており、今後継続的に行われないとの見通しを示したが、別の公安関係者は「国際情勢や中国側の反応によっては、今後、さらなるデモが起きる可能性もある」と指摘。事態を注視する姿勢を見せている。