![]() | ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉新潮社このアイテムの詳細を見る |
私はこれまで、このシリーズを文庫本になってから読み続けて来たが、この巻は画期的におもしろい。書き手の身の入れようが違うとこうも迫力が違う。時間と空間を超えて俯瞰するこの視点、圧倒的である。まだ、街道しか読んではいないが、その戦略としての見方が鋭い。世界帝国である当時の中国とローマ。一方は外敵に対し、徹底して閉じることによって国を守るための万里の長城、しかし一方は徹底して開き、その圧倒的なアクセスの太さと迅速さによって国を守る戦略。全く異なるが、現在の世界の構図も同じである。現在の情報革命も似ている。圧倒的な情報網の整備が進行する中、もはや科学の世界においても閉じて、研究の優位を守ることはできない。如何に開くか、そしてリードし続けるか。その戦略的情報網を構築したものが勝利者である。現在のところ圧倒的開示によって新しい知恵と人材を導入し前進を計ることを戦略とするアメリカの情報と科学が世界をリードしている。私はこのシリーズを読めば読むほど、現在のアメリカはローマ帝国の良き側面をもっとも忠実に現在において実現している、と見えてならない。現在はアメリカ世界帝国なのである。その皇帝はもちろんアメリカ大統領である。ローマ帝国は1,000年帝国であった。アメリカ帝国は君臨したのは第2次世界大戦以降であるからまだ60年。とても1,000年は持つまい。21世紀半ばまでだろう、という声が多い。
さて、次は「橋」だ。