異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説『呆け茄子の花 その十八』

2016年08月19日 21時46分54秒 | 小説『呆け茄子の花』

街中のビルの六階にある「事務所」へ向かった。

「無料弁護士相談会」へ足を向けた尚樹は女性弁護士と向き合うことになった。

国が運営する『法テラス』は、弁護士会が各事務所の輪番で回っていて、

尚樹は「切れそうな」眼差しの女性弁護士だった。

会話すると、人の当たりはやはり女性らしい穏やかなものだった。

弁「だいたい、いくらぐらいだと把握していますか?ザックリとで良いですよ」

尚「目算ですが、500万位だと思います。」

弁「主に何に使っていましたか?」

尚「出会い系のポイント代です。」

弁「それはどのような切っ掛けからですか?」

尚「・・・、寂しさからでしょうか?」

弁「なるほど、何が原因だとお思いですか?」

尚「私は『精神疾患』を抱えているので、

『同調している人が居ないという寂しさ』でしょうか?

弁「なるほど、おおよそは解りました。今後のご相談はどういたしましょう?」

尚「どういうことですか?」

弁「順番で各事務所の人間がここで相談を受けているので、

継続的にここで相談は出来ないのです。私で良ければ次回からは私の事務所で

相談に応じますが・・・」

尚「是非今後もお願いします。」

別に尚樹にこだわりがあったわけではない。

単に新たな弁護士に始めから同じ話をするのが苦痛だったのだ。

弁「解りました。次回からここへお出でください。

次の相談の時には、今来ている未返済の請求書を持ってきてください。

それと、これからは簡単なもので良いので『家計簿』付けてください。」

尚「ハイ解りました。」

名刺には「西都第一法律事務所」裏を見ると西都のど真ん中に立地していた。

 

その十九へと続く