異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説『呆け茄子の花 その十九』

2016年08月26日 21時36分33秒 | 小説『呆け茄子の花』

「西都第一法律事務所」は、繁華なビル街のひとつにあった。

いわゆる「合同事務所」であって、「個人事務所」では無かった。

事務所の立地の良さとしては、歩いて10分以内に地方裁判所があることだ。

季節は徐々に夏の盛りから、足抜けするような季節の狭間であった。

尚樹は、もはや自分の能力では裁ききれない「請求書」を

何度かに分けて、事務所に持ち込み「破産手続き」に

必要な書類、私文書、公文書を言われるがままに用意し、持ち込んだ。

しかし、その間毎度のように、『複雑性PTSD及びうつ病』から来る

「倦怠感」が容赦なく訪れ、尚樹をベッドに釘付けにして

法律事務所に行けなくなり、また「行けなかったことの罪悪感」が

そのことがまた、自分を苛むことになった。

数々の書類を見ながら、弁護士は慌てることなく言い放った。

「やはり、自己破産しかないと思いますが、心配することはないですよ。」と。