8月に台風が相次いで上陸したことで、タマネギやニンジンなどの野菜のほか、サンマの値段が高くなっている。30日には台風10号も上陸。農作物への影響を心配する声も上がる。

■カレー店も困惑

 3個で298円。8月下旬、名古屋市中区のスーパーに並べられた北海道産タマネギの価格だ。購入した一人暮らしの女性(73)は「健康のためにタマネギは欠かさず買っている。最近かなり値段が上がってると感じる」と話した。

 名古屋市中央卸売市場では、8月下旬のタマネギの卸値は約3200円(20キロあたり)で、過去5年の平均の1・6倍。8月に相次いで上陸した台風が影響しているという。

 三つの台風が8月に上陸した北海道。日本一のタマネギ産地、オホーツク地方の北見市農業生産法人は、タマネギ農地約33ヘクタールの大半が川の氾濫(はんらん)などで冠水した。畑には商品にならないタマネギが放置されたまま。台風10号へも手の打ちようがないといい、男性役員(51)は「こんな被害は初めて。もう勘弁してほしい」と嘆く。

 収穫した農作物は臨時貨物列車の通称「タマネギ列車」で運ばれるが、この列車も走るJR石北(せきほく)線の路盤が台風で崩れ、20日から不通が続く。トラックで代行輸送しているが、全面復旧は少なくとも1カ月以上かかるという。

 ほかにも、ジャガイモ(一昨年の全国シェア83%)、カボチャ(同56%)、ニンジン(同31%)の価格が高騰している。名古屋市中区の「カレークミン」では、看板メニューの「野菜のカレー」(840円)に、この4種類すべてを使う。店主の稲葉達男さん(62)は「特にルーづくりで大量に使うタマネギの値上げは痛い」。材料費は高くなっているが、「お客さんのためにも値上げはできるだけ我慢します」と苦笑する。

ログイン前の続き■しけ続き、出漁減る

 秋の味覚として親しまれているサンマ。30日、名古屋市北区鮮魚店「ととや魚春」では、1匹350~500円で売られていた。例年は7月ごろに店先に並ぶが、今年は1カ月ほど遅かったという。店主の男性(68)は「8月にしては高いかもしれない」というが、「出始めが一番おいしい」とアピールする。

 名古屋市中央卸売市場では、前年同時期と比べて約1・7倍の高値だ。21~27日の価格は1キロあたり1050円だった。中央卸売市場の担当者は「例年は9月に入ると値段が下がる傾向にあるが、今年は値が下がるのが遅くなる可能性もある」と説明する。

 値上がりの原因は、8月に相次いだ台風によるしけで漁船の出漁回数が減ったことだとみられている。

 漁業情報サービスセンター(東京)によると、8月4~29日に全国で水揚げされたサンマは約3600トンで前年の半分以下。担当者は「日本近海からサンマの漁場が遠くなってしまったうえ、台風で出ばなをくじかれた」と分析する