女性たちがコーヒーを飲みながらおしゃべりしたり、宿題をする小学生を近所のおじさんが見守ったり。奈良市西部の鳥見地区に、だれもが好きなときに来て、思いのまま過ごせる場所がある。コミュニティースペース「まんま」は昨春、奈良市社会福祉協議会がオープンした。

 24日、オレンジ色を基調にした明るい空間にカレーの香りが漂った。毎月第4土曜に開く「鳥見(とりミ)ン家(チ)カレーの日」だ。地区社協の人らがカレー、ニンジンのサラダ、おみそ汁を準備した。

 杖をついたおじいさんや親子連れが次々に300円ずつ払い、席につく。近くに住む男性(86)は「雨が降ったら買い物にも出られん」と初めて訪れた。「妻に先立たれてひとり暮らし。このような場があるのはありがたい」

 ログイン前の続き鳥見小5年の川谷空大翔(あおと)君は父親らと訪れた。「苦手なトマトも小さく切ってあったので食べられた」と笑顔だった。

 もとは幼稚園の職員室ひきこもりの人たちや高齢者の支援に取り組む市社協が、住民と手作業で改装した。「まんま」の名には、社会とのつながりを持ちにくかった人も、肩ひじ張らず集える場所に、との思いを込めた。お年寄りの孤立を防ぐ狙いもある。

 子育てや福祉の市民グループ、ボランティアの人たちが活動にかかわる。第1水曜の午後は、認知症の人やその家族を支える「認知症カフェ」。毎週水・土曜の朝には野菜市。アロマセラピー、体操などの教室も開かれる。

 県立大生のグループはお菓子づくりや工作など、多世代が交流できる講座を開く。地域の課題解決に興味があるという3年生の立花理駆(りく)さん(20)は「子どもは目上の人との接し方を学び、高齢者には生きがいになる。そんな交流が生まれつつあります」と話す。

 身近な人の声がけで、ひきこもっていた家を出て「まんま」に来られるようになり、活動に加わる人もいる。市社協地域支援課の石原倫子さん(39)は「家族や専門職以外の、ふつうのおっちゃん、おばちゃんと出会い、コミュニケーションをとることが、次へのステップになれば」と願う。(栗田優美)

ひきこもりのサポーター養成 10月15日から講座

 「まんま」を主な会場に、奈良市社協は10月15日から、ひきこもりの人のサポーター養成講座を開く。ひきこもりの長期化や高齢化が指摘されるなか、解決につなげるための具体的な関わり方を学ぶ。9月30日まで申し込みを受け付ける。

 長年、不登校の子に寄り添ってきたボランティア団体「ハートハース」、奈良市との共催で、来年2月まで全10回。昨年度の基礎研修に続く応用編で、本人や家族との対話、地域の居場所づくりなどを学ぶ。

 講師は現場で支援にあたる人や研究者。2月には精神科医斎藤環さんも駆けつける。基礎研修を受けていない人も、速修講座を受ければ参加できる。

 10回で1万円(資料代・保険料込み)。50人。市社協地域支援課(0742・93・3741、ongaku@silver.ocn.ne.jp)に申し込む。