石垣りん
2005-07-01 | 読書
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-朝のパン-
毎朝
太陽が地平線から顔を出すように
パンが
鉄板の上から顔を出します。
どちらにも
火が燃えています。
私のいのちの
燃える思いは
どこからせり上がってくるのでしょう。
いちにちのはじめにパンを
指先でちぎって口にはこぶ
大切な儀式を
「日常」と申します。
やがて
屋根という屋根の下から顔を出す
こんがりとあたたかいものは
にんげん
です。
-洗たく物-
私どもは身に着けたものを
洗っては干し
洗っては干しました。
そして少しでも身ぎれいに暮らそうといたします。
ということは
どうしようもなくまわりを汚してしまう
生きているいのちの罪業のようなものを
すすぎ、乾かし、折りたたんでは
取り出すことでした。
雨の晴れ間に
白いものがひるがえっています。
あれはおこないです。
ごく日常的なことです。
あの旗の下にニンゲンという国があります。
弱い小さい国です。
(「略歴」より)
私自身も10年ぶりくらいに詩集を取り出したので、今読むとまたちょっと新鮮な気持ちになれます。
石垣りんさんは1920年の生まれだそうで、終戦を25歳で迎えたことになりますね。そして、残念ながら昨年亡くなりました。
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