TOMO's Art Office Philosophy

作曲家・平山智の哲学 / Tomo Hirayama, a composer's philosophy

「ルオー財団秘蔵 ユビュ 知られざるルオーの素顔」展

2010年04月29日 | 芸術
今日は汐留の松下電工ミュージアムに「ルオー財団秘蔵 ユビュ 知られざるルオーの素顔」展を見に行ってきた。

以前、諏訪のハーモ美術館で見かけた「聖歌隊員ユビュおやじ」という版画がなんともユーモラスで面白かったので、
一体どういう意図で描かれたものか非常に興味があったのだ。



この絵は大画商アンブロワーズ・ヴォラールが執筆した「ユビュおやじの再生」という風刺物語に挿入された版画。
ジョルジュ・ルオーは自身の大作「ミセレーレ」の出版を条件に挿絵の依頼を受けたそうだ。

それにしてもキリストの受難を衝撃的に描いた「ミセレーレ」とは対象的なこの作品。
ルオーの絵に対する執念があちこちに垣間見えてとにかく楽しい。
物語の舞台となる植民地の入植者や傲慢な白人の姿がユーモラスに表現されているのだが、
版画とは思えない立体感と入念な構図のデッサンが単なる挿絵にとどまらない芸術性を与えている。



今回の展示では下絵、試作品などを一緒に並べて、版画作成の過程がわかるよう工夫されている。
請け負ったからには挿絵といえど妥協はしない、というルオーの自負心が見えてついつい微笑んでしまうのは僕だけだろうか。


ちなみに最近コレクションに加わったという「古びた町外れにて<台所>」はなかなかの名作だった。


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