むかし、ある長者の家に きだてのいい嫁っこがいたんだと。長者の家では毎年 田植えが終われば
手伝ってくれた人がたを集めて、さなぶりのご馳走をふるまった。
ある年、このさなぶりの席で お腹の調子の悪かった嫁っこ、おもわず臭い屁を
たれてしまったなだど。したば、長者 ごしゃぐ、ごしゃぐ(怒る) しまいに こんな
不調法者を嫁にしておけないと、追い出してしまったど。
実家に戻された嫁っこだども、実はお腹に長者の子どもがいたんだと。
嫁っこは、しかたなく実家で 男わらしを産んで一人で育てたわけだ。
その子が七つになったときのこと、嫁っこに こう聞いたっけど。
「みんなには おどうが(父さんが)いるのに、なしてオラばし(オラばかり)
おどういねぇの」 そこで、嫁っこは 自分が 追い出されたわけを話してやった。
黙って話を聞いていた 男わらしだども、聞き終わると畑に行って 茄子の苗を
掘り起こしてきた。そしてそれを持って 長者の家の前まで行くと こう叫んだと。
「なすの苗っこ いらんか~ 金の茄子のなる苗っこ~」
長者の家の使用人が出てきて 「この、ばしこぎ(嘘つき)わらしが!」 て
追い払ったども すぐに戻ってきて 「金の茄子のなる苗っこいらんか~」て
大声で言うわけだ。 そうするうちに とうとう長者が、家からではってきた(出てきた)
そこで、使用人が 「金の茄子がなるだと、とんだ ばしこぎわらしだ」 と 長者に言いつけた。
すると、男わらしは 「本当に金の茄子がなるなだ!」と、さらに言い張ったど。
そこで、長者が 「本当だが?」と、男わらしに聞くと 「んだ!本当に金の茄子が
なるなだ。だども、ひとつだけ決まりがあるどもな」
「決まりってなんだ」 「生まれてから一度も屁をたれたことのねぇ人が 植えねば
えげね。そうすれば金の茄子が必ずなるなだ」
これを聞いた長者は大笑いした 「一度も屁をたれね人間など、どごにいるってが」
すると、男わらしは 「へば、なんでオラのおっ母を 追い出したなだ」と
涙を浮かべて聞き返したど。
はっとした長者が 男わらしの顔をよくよく見ると 自分の顔とそっくりだものな。
すべてを悟った長者は、すぐに嫁っこを迎えに行って謝った。
そして、それから親子三人で仲良く暮らしたと。 ( 湯沢地方に伝わる民話)
とっぴんぱらりのぷう。
金の茄子ではないですが わがやのたまご茄子です。
方言わからないと思いますが わからない箇所は 通訳しますのでお申し付けください(笑)