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伝説・民話

2021-09-11 11:27:05 | 昔っこ・民話

  影とり沼

藤原秀衡(ひでひら)の世の事だから、だいぶ昔のことである。

角間川の近くに 大きな沼があった。晴れた日にこの沼の近くを歩くと

影が 反対側に映るという 不思議な沼であった。朝に東側を通ると 人影が

西の岸に映り その人もその影に引き込まれ 溺れて死んでしまうのだった。

また、夕日の照る頃 西を通ると 馬であっても人であっても、その影は東の

岸に映り 馬も人も、沼に落ちておぼれ死ぬのであった。

 

このような事が、たびたびあったので、むらの人達は 「影とり沼」とよんで

晴れた日には、沼に近寄ろうとしなかった。用事のある時は、雨の日や曇りの日を

選び、それも急ぎの用事の時だけ歩く事にしていた。 しかし、このことを知らない

旅の人が、沼のほとりを歩いて、おぼれ死ぬことが絶えなかった。そこで村の人達は

みんなで相談して、お館さま(秀衡)に 申し上げた。

これを聞いた秀衡は、「それは、不思議なことだ。おそらくなにものかが、その沼に

住みついているに違いない。わしが行って退治してやろう」 と言って、

 

陸奥の国(青森県、岩手県、宮城県、福島県) 出羽の国(山形県、秋田県)から 

人夫を千人あまり集め、五十鈴の神をはるばる移して、毎日曇りの日が続くように祈った。

この願いが、聞き入れられて、曇りの日が続き、人の影が沼に映らなくなった。

秀衡は、人夫たちに大声を出させながら 夜も、昼も、沼の水を汲み上げさせた。

また、村人たちにはたくさんのたいまつを用意させた。夜は、たいまつの火で

あたりは、昼と変わらぬ明るさになった。

 

毎日、毎日、こうした仕事を続けたので、沼の水はめっきり少なくなった。すると

秀衡のいったように、その少なくなった水を波立たせて、沼の中を逃げ回る

怪物の姿が見えた。

しめた!と思ったとき、急に 雨が落ちてきた。あれよあれよと、いううちに

たちまち大雨となり、沼の水かさが増えだした。

これでは、いけないと秀衡は、多くの人にクワや鎌を持たせ 怪物を取り囲んで

ついに打ち殺させた。 この怪物は、「キギウ(杜父魚)」という、

 

ヒキガエルの形をした 2メートル近い怪物だった。 このキギウを岸に上げ、

「タモの木』で作った 串を刺し、頭には 大きなタモの杭を打って、

二度と生き返らない様にした。

すると、このタモの木に、いつの間にか根が生え、ぐんぐん伸びて、何年かあとには

見上げるような大木になった。  (無料イラストお借りしました)

いつのころからか、この大木が空木となって

その中に、キギウの霊魂が大蛇になって住み込み、また、通る人にいたずらを

するようになった。しかし、ある年の夏、この木に大きな雷が落ち、

この大蛇は死に、木も枯れてしまったという。

このあとに、また ひこばえが生え、これも大木となった。

根元は、15メートルばかりあり、枝は60メートルも横に広がって、

大きな日陰を作った。土地の人達は、この下に集まり、昼食をとる場所にした。

そこで、この地を「昼だて」と呼ぶようになったという。大木は、今も木陰を作り

人々の休み場所になっている。  ―大曲の話― (花火で有名な所です)

「秋田の伝説・秋田県国語教育研究会編」

 

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