民話 おめでたい 塩引き
むが~し あるところに、意地の悪い婆さまがいたんだど。
うまくいかないことは、なんでも嫁さんのせいにして、嫁さんを泣かせたど。
ある年のくれ、婆さまは、嫁さんに百文ばかりの じぇんコ(銭)渡してこう言った。
「市さ行って正月の食べ物を買ってけ。まず、昆布、干しイワシ、わかめ、エビ、それに塩引きだな」
嫁さんは市に出ると、言われた通りに干しイワシ、昆布、わかめ、エビを少しづつ買って回った。
最後に塩引きを買おうと思ったんだが、残りのじぇんコ(銭)は、ほんのわずかになっていたど。
そこで、切り身を買おうと思ったが、どこの店も切り売りの塩引きはなかったど。
「買わねで帰れば、なんと言われることだが。なんとすべぇか」
嫁さんはすっかり困ってしまった。するとその時
「まけた、まけた。この塩引きあだま(頭)ネズミにかじられたから 大安売りだ!」と叫ぶ
男の声がした。とたんに嫁さんは走りだした。一番乗りで店先に着くと
「これしか じぇんこ(銭)ねえがら、これで売ってくれ!」
叫ぶなりありったけの じぇんコを出した。魚屋もその勢いに どでんして(ビックリ)
そのじぇんこで 塩引きを売ってくれだど。ほっとして家に帰った嫁さんは、荷物をおろすと
「塩引き買うじぇんコが足りなぐなって、困っていたども 塩引きのあだまぁネズミに
かじられたがらまける。って言う魚屋があったもの。だから残りのじぇんこで まけてもらった」
と しゃべった。したば婆さんは「なんと、あだま(頭)なの、かじらえていたって かまわね。
尾っぽさえしっかりしてればええ。したって昔から お(尾)めでたいとは言うども、
頭めでたいとは、言わねぇものな。まんず、おめでたい、おめでたい」
と 喜んだど。それからというもの、この婆さまも、嫁さんにつらく当たらなくなって
みんな仲良く暮らしたんだと。 とっぴんぱらりのぷう (森吉町に伝わる民話)
*(昔、ロシア語を勉強していた時期がありました。もうすっかり忘れました(^-^;
お金=ジェンギ。秋田弁=ジェンコ。yes=ダー 秋田弁でyes=ンダ 似てます)
⇧これが百文だそうです
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