昔、ある大きな沼のふちを 鶴が歩いていたど。
そごさ、沼の中から カメが頭をもたげて「鶴、鶴おめはいいな。その長い足で
どごでも歩ぐにいいし それに空からだばなんでも見るにいいし、
俺なの何年たっても水の中ばかりで 情けねえもんだ」
「おめ そんたに見でえのか?」
「見でなぁ、見せてけれ」と亀
「それだば、俺の背中さ乗れ。だどもなんぼ珍しい物あったって、絶対に口あぐなよ!」
そして鶴は亀をおぶって飛んでいったど。
亀は珍しい物、りっぱな物を見て大よろこび。とうとう「いいなあ」と言ってしまったど。
とたんに亀はドシーンと地面にまっさかさま。
鶴は「死んでしまったべなぁ かわいそうなことをした」と思って
空からおりて亀をさがしたど。すると亀は 草むらの中に落ちていた。
「亀、亀 なんとした。口あぐなって(開けるな) 俺あんだけ言ったべ」
「なんと すまねがった。だども大したごどねぇ。甲羅さ ちょっとばし(少し)
ひびっこ入ったようだども」と亀は答えた。
それから 亀の甲羅さ ひびはいったど。 とっぴんぱらりのぷう。
ー秋田市に伝わる民話ー
ガザニア
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