嘘の吐き方(うそのつきかた)

人はみんな嘘をついていると思います。僕もそうです。このページが嘘を吐き突き続ける人達のヒントになれば幸いです。

僕の住んでいる四角い部屋

2001年11月21日 23時43分46秒 | 駄文(詩とは呼べない)
真っ暗な部屋だった。
その真っ暗な部屋で
俺は一人で苦しんでいた。
一人で苦しんでいるのに
誰かが側に居るような気配がした。
おそらくきっと、彼が俺を連れて行くんだと思った。
彼は静かに俺を苦しめるが、言葉を一言も話さなかった。
彼は言葉を話さないのに、なんらかの手段で俺に語りかけていた。
彼はゆっくりと俺の死を願っていた。
彼は静かな微笑みと共に俺の真後ろに居た。
彼はいつも俺の真後ろに居た。
彼を直接見ることは出来ない。
何かで彼を感じるしかない。
俺は透明な鏡で彼を見た。
透明な鏡ではぼんやりとしか彼は映らなかったが、
それでも何も無いよりはいくらかマシだった。

真っ暗な部屋だった。
フイに俺は―――
彼の望みが「全てを諦めた時の俺の命」であることを感じた。
だから俺は必死になって周り中を手で探った。
その時になってようやく、
部屋が傾いている事に気付いた。
この部屋は斜めに傾いていた。
船の上にあるのかもしれない。
あるいは地震でめちゃめちゃに壊れた部屋の一室だったのかもしれない。

真っ暗な部屋だった。
俺は生きるための光を探した。
その為に最初に必要なのは覚悟だった。
このくだらない、どうしようも無い世界を生き抜くための覚悟だった。
「本当に君は生き続けたいの?」
彼は無言で僕に尋ねた。
俺は
「とにかく生きるしか無い」
そう答えるのが精一杯だった。
それが俺の中の精一杯の言い訳だった。
言葉の限界だった。
理由を説明することなんか出来なかった。
生きた証を見せることも出来なかった。
希望の光を見せることも出来なかった。

真っ暗な部屋だった。
そこいら中を手で探った。
電灯のスイッチはそこら中の壁という壁についていた。
俺はとにかく無我夢中でスイッチを押しまくった。
どれがこの部屋のスイッチなのか解らなくても、
押し続ければ部屋が明るくなるような気がしたからだ。

真っ暗な部屋だった。
僕が自分で点けたのか、
あるいは彼が点けてくれたのかわからなかったが、
ぼんやりとした薄明かりが灯った。
彼は僕を見逃してくれたのだろうか?
その薄明かりの中で僕は一番大事な事に気が付いた。
僕は身につけているモノが多すぎる。
これでは部屋の事なんか何も解るはずが無い。
何十枚も着ていた服を脱ぎ、
メガネを叩き割って完全に素っ裸になって、
ようやく綺麗な部屋を見ることが出来た。

大事な事は、いつも一番最後にしか解らない。
それでもやっぱり僕には、この部屋は狭すぎると思う。