日本と世界

世界の中の日本

20世紀の世界を米国と二分した旧ソ連の崩壊から、25日で25年となった

2016-12-25 21:41:24 | 日記
 【モスクワ=遠藤良介】

産経


20世紀の世界を米国と二分した旧ソ連の崩壊から、25日で25年となった。現在のロシアでは、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と考えるプーチン大統領の強権統治が長期化し、自律的な経済成長の展望もない。民主化と市場経済化による発展という、当時の米欧日など西側諸国がロシアに抱いた希望は消え、旧共産主義陣営に属していた東欧諸国との国力の差も鮮明になっている。

 世界銀行によると、ロシアの1人当たり国内総生産(GDP)は1991年の3485ドルから2015年の9092ドルへと2・6倍に増えた。この間に、旧共産圏だったチェコが1人当たりGDPを6・1倍、ポーランドが5・6倍、ハンガリーが3・7倍に伸ばし、ロシアをしのいでいる。ロシアの平均寿命は68歳から70歳にしか伸びなかったが、ほぼ同じ出発点だった前出の東欧3カ国は今、ロシアよりも7〜8歳長い数字だ。

 「ロシアが経済と政治の両面で、ソ連崩壊時の期待通りにならなかったのは間違いない」。サンクトペテルブルク・ヨーロッパ大学のトラービン教授はこう語り、「旧共産圏の東欧諸国に比べ、ロシア・旧ソ連諸国では経済改革が難しかったこと」を理由に挙げる。

 共産圏に組み込まれたのが第二次大戦後だった東欧諸国では、ソ連型計画経済がロシアほど根付かず、国民の欧州への帰属意識も残っていた。「欧州回帰かロシアの支配か」という二者択一が改革を促した。

 旧ソ連ではこれに対し、GDPの4分の1を占めた軍需関連を筆頭に、機械製造など多くの産業分野が国の発注や補助金で支えられていた。これらの分野は、旧ソ連政府が資金不足に陥ると即座に行き詰まり、業態の転換や市場への適応に向けた改革は困難かつ多大な「痛み」を伴った。

 ロシアのエリツィン政権は価格自由化をはじめとする「ショック療法」で切り抜けを図ったが、多くの庶民は年間26%にも達したハイパー・インフレなどによって生活を直撃される。「欧州回帰」のような座標軸もないロシア国民の多数派は安定と秩序を求め、2000年就任のプーチン大統領が強権統治を敷くのを歓迎すらした。

 1990年代の改革の成果と石油価格の高騰により、ロシアは2000〜08年に年平均7%の経済成長を達成。その後はしかし、地下資源に依存する国家主導型の経済が硬直化し、頭打ちが鮮明になっている。前出のトラービン氏は「プーチン氏が真剣な改革に取り組むとは考えられず、ロシア経済の長期的な停滞が続くだろう」と語る。

 それでも「1990年代の再来」を恐れる国民の多数派に、変革を求める大きな動きは出ていない。トラービン氏はこう話す。「今より状況の悪かった70〜80年代にも、飢えるほどではないとして人々は耐えた。強力な特務機関が反発の表面化を抑え、指導部内の対立もなかった。今日も、この3つの条件が維持される限りはプーチン体制が続くのではないか」

韓国の銀行改革 「財閥の金庫番」脱却を

2016-12-25 21:08:57 | 日記
韓国の銀行改革 「財閥の金庫番」脱却を

ピーター・キム氏寄稿

2016/10/14付日本経済新聞 朝刊

 韓国は2017年末に実施される次期大統領選挙に向け、政治の季節に入ろうとしている。

政策議題の一つが政府と銀行、財閥のトライアングル関係を崩す銀行改革だ。


 韓国の銀行は日本に倣い、輸出主導の財閥の忠実な金庫番を務める。

その結果、日本同様に銀行部門から非効率な資金配分が行われるという問題を抱えている。

韓国の時代遅れの産業モデルと、銀行システムの改革は急務だ。

 韓国の苦境が差し迫った状態にあるのは否めない。

造船やエンジニアリング、建設など自称「戦略的重要産業」の低迷ぶりは、アジア通貨危機や世界金融危機の際よりも深刻だ。

これまでと異なるのは、韓国の銀行システムが問題の根源かもしれないという見方が理解されつつあることだ。

 従来、これらの業種には政策的融資を受ける価値があるとみなされていた。

だが最近、韓国の国民は問題の緊急性に気付いている。

大宇造船海洋などかつて輸出を主導した多くの企業が通貨危機以降、政府系の韓国産業銀行の傘下に入った。

営業利益や純利益を数十億ドル水増ししたとされる大宇造船の元最高幹部らは不正会計や横領、収賄の罪で起訴された。

 公的資金の不適切な運用に対する国民の意識が高まっているため、韓国の銀行はより高い基準への対応を迫られているのかもしれない。

8月31日には、輸出の成功の象徴だった韓進海運が日本の会社更生法の適用に当たる「法定管理」をソウル中央地裁に申請した。

成功の象徴だった大韓航空のグループ会社である韓進の破綻は、銀行を通じた輸出企業への公的支援が崩れ始めた兆しにほかならない。

 銀行株の低迷に不満を募らせていた株式投資家は、思わぬ利益を得るだろう。

数年後、韓国の銀行には国家的な義務から解放された恩恵が及び始めるはずだ。

(Peter S. Kim 未来アセット大宇マネージング・ディレクター、投資ストラテジスト)

米国の利上げ決定で、韓国は「臨戦態勢」に入った

2016-12-25 14:45:26 | 日記
勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。


   エコノミック・ショート・ショート

米国の利上げ決定で、韓国は「臨戦態勢」に入った。12月15日の利上げ発表とともに、韓国副首相は、在韓日本大使と会談したほか、麻生財務大臣と電話会談して「日韓協力」を申し合わせた。目的は、言わずと知れた日韓通貨スワップ協定についての挨拶に違いない。慰安婦問題も解決したし、日韓の間にわだかまっている問題は解消している。ここは、安心して「日本詣で」ができる環境なのだ。



一方、韓国大統領弾劾が憲法裁判所の審査に移されているので、次期韓国大統領選挙戦も活発化している。有力候補者とされる複数の野党系人物は、相変わらず大衆を煽って、「慰安婦問題の再協議」と訴えるなど、日本から見ると信じがたい動きも現れている。次期大統領選は野党候補が有利と見られるだけに、日本が日韓通貨スワップ問題で妥協することが後になっていいのかどうか、分からない面も出ている。



先ず、韓国副首相の日本接近の動きを見ておきたい。



『朝鮮日報』(12月15日付)は、次のように伝えた。



この記事は、米国の利上げ発表直後、韓国副首相が駐韓日本大使と麻生財務大臣とコンタクトを取った事実を報じたものだ。韓国が、米国の利上げによって被る悪影響を、日本との連携によっていかに減らすか焦点を合わせたものである。中国とはTHAAD(超高高度ミサイル網)設置問題で溝ができているので、「頼る先は日本」しかないことを物語っている。



(1)「韓国の柳一鎬(ユ・イルホ)経済副首相兼企画財政部長官は15日、長嶺安政駐韓日本大使と会談し、韓国の政治・経済状況や両国の経済・通商分野での協力拡大などについて意見を交わした。

柳副首相は朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する弾劾訴追案が可決されたが、経済に影響が及ばないよう努力していると強調した。

柳副首相は、『最近、韓日間の貿易や投資などの規模が多少縮小した』と指摘。

『両国の経済・金融・外国為替における協力が重要で、世界経済に及ぼす影響が大きいだけに、緊密に連携することでシナジー(相乗効果)が得られると思う』と言及した上で、『財務相会談などの協力ルートを拡大・発展させる必要がある』と強調した」。



韓国の柳副首相は、日韓の経済関係(貿易や投資など)が縮み傾向にあるとして指摘。

その上で、「日韓両国の経済・金融・外国為替における協力が重要で、世界経済に及ぼす影響が大きいだけに、緊密に連携すること」を訴えている。これは、韓国で通貨危機が起こった場合、よろしくお願いしますという挨拶である。

2015年2月、「日韓通貨スワップ協定」は期限切れを迎えて自然消滅した。



当時、韓国政府は「反日」真っ盛りの高姿勢であった。「日本が必要といえば期間を延長してもよい」といった見当外れの発言をしたため、日本政府が立腹して期間延長しなかった経緯がある。今回の会談では、こうした非常識な発言をするはずもなく、「日韓協力」を全面に出している。



(2)「柳一鎬経済副首相兼企画財政部長官と麻生太郎財務相が15日電話会談し、両国の強固な協力関係が持続していることを確認した。

企画財政部が伝えた。柳副首相は韓国政府が政治状況に影響を受けることなく国政を安定的に運営しており、特に経済政策は副首相の責任でこれまでの政策基調を一貫して安定的に続けていると強調した。両氏は経済・金融分野での協力にとどまらず、韓中日の3カ国や東南アジア諸国連合(ASEAN)、20カ国・地域(G20)などの多国間協議でも緊密に協力していることで一致した」。



朴大統領の弾劾が国会で議決後、麻生財務大臣は「誰を相手にして、韓国と金融問題を話し合うか分からない」と発言していた。

韓国政府は、これを受けて麻生財務相に電話会談を申し入れたのであろう。

その結果、「両国の強固な協力関係が持続していることを確認した」というのだ。日韓スワップ協定の話し合い継続を確認したに違いない。韓国にとって、麻生財務相との電話会談は「命綱」を確認したと言えよう。



『中央日報』(12月16日付)は、「米国の金利引き上げを恐れる理由」と題して、次のように伝えた。



この記事では、米利上げによって米韓金利差が拡大するので、韓国からの資金流出が危惧されるという内容だ。これを回避するには、韓国も追随利上げを迫られる。

この利上げが、韓国の内需を冷やすはずで、すでに住宅金利が引き上げ気配である。これが、不動産相場に水をかける副作用をもたらす。韓国経済は、こうして米国利上げで大きな影響が出る事態を迎えた。



(3)「米国の基準金利の引き上げに伴い、韓国経済にも少なくない衝撃を与える可能性があると見られる。15日、米国連邦準備制度(FED)は政策金利を年0.50%~0.75%に0.25%上げた。韓国銀行は同日、基準金利の凍結を発表したが、米国の今回の金利引き上げが韓国の不動産市場に悪材料として作用するという懸念が高まっている」。



韓国は、後のパラグラフが指摘するように、米利上げに合わせて引き上げに転じている。この利上げが、不動産市場へ影響するのは不可避となった。韓国経済はこれまで不動産が唯一の好調業種であった。それだけに、韓国経済全般への悪影響が懸念される。



(4)「韓国メディア『ニューシス』によると、韓国の銀行は米国の金利引き上げに合わせて貸出金利を上げている。

韓国の家計負債は今年9月末基準で1295兆7531億ウォン(約129兆6000億円)まで上がった。負債の規模自体は大きいものの、金利が低く償還負担は大きくなかった。

しかし、韓国企業の評価によると今年6月基準で韓国内の12の都市銀行の家計貸し出し70.2%が変動金利で、それだけ韓国内の家計負債は金利上昇のリスクに脆弱な状況だ。

韓国開発研究院(KDI)は家計所得が5%下落して、金利が1%上昇する衝撃が発生すれば、家計の平均元利金償還額が1140万ウォン(2015年基準)から1300万ウォンに14%増えると推算した。増えた負債は消費中心の韓国の内需景気を萎縮させるほかない」。



9月末の韓国の家計負債は、約129兆6000億円に膨らんでいる。

都市銀行の家計向け貸出の70.2%が変動金利だ。この結果、米国の利上げに合わせて、家計債務のうち約907兆円が即時の利上げ対象になる。

家計債務という「消費目的」金利が変動金利であるのは、消費への影響がストレートに効いてくる。つまり、消費抑制効果がそれだけ大きいという意味である。



家計所得が5%下落して、金利が1%上昇すると、家計の平均元利金償還額が14%も増えるとの推計が出てきた。今後の韓国経済は、この最悪コースをたどる公算が強い。すでに、7~9月期の家計所得は40代の世帯では微減に転じている。それだけに、警戒警報が出たに等しい状況だ。



(5)「不動産情報業者『不動産114』によると、12月2日基準でソウルの高層住宅売買価格は約2年ぶりに下落傾向へ転じた。最近、韓国国会予算政策処が、住宅価格は20%下落すれば貸出で最大28兆8000億ウォン(約2兆8800億円)の損失が出る可能性があると推定し懸念は高まっている」。



ソウルの高層住宅売買価格は12月2日基準で、約2年ぶりに下落傾向に転じたという。

住宅価格は20%下落すれば、銀行貸出で最大約2兆8800億円の貸倒損失が出る試算まであるという。

ここまでくると、韓国経済は「SOS」が出たのも同然だ。この実態が広く認識されるようになると、過去2回、引き起こされた通貨危機再燃も杞憂に終わるまい。今からこれへの備えが必要であろう。



だが、韓国野党の次期大統領選の候補者は、こうした危機が迫っていることに全く無頓着で、相変わらずの「反日」で大衆扇動をしている。頼みの綱である日本の感情を害すればどうなるか。そういう配慮はゼロであり、子どもじみた発言を繰り返している。 『朝鮮日報』(12月16日付)は、次のように伝えた。



最大野党『共に民主党』の前代表で、次期大統領選挙の有力候補と目される文在寅(ムン・ジェイン)氏が15日、ソウル市内で行われた外信記者との懇談会で、慰安婦問題の日韓合意、朴槿恵(パク・クンヘ)政権が推進してきた外交政策について、事実上全て見直すべきとの考えを示した。



(6)「韓日の慰安婦合意に関し、『朴政権が日本と結んだ慰安婦合意は正当性を認めがたい』とした上で、『カネは必要ない。

日本の法的責任と謝罪をもう少し明確にする新たな交渉が必要だ』と主張した。

また、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)についても、『日本は軍事大国化の道を歩んでおり、とりわけ独島(日本名:竹島)については領有権を主張し続けている。

韓日の間で領土紛争がある状況でGSOMIAを締結するのが適切なのか疑問』だとして、国民感情も考慮した上でGSOMIA締結を再検討すべきと主張した。GSOMIAについては民主党など野党各党が協定の破棄を主張している」。



この内容は、国家間で結ばれた協定や条約が、政府が変わっても履行する義務のあることを忘れた「妄言」である。

野党に不都合だから協定を破棄してやり直す。

そういう「我が儘」が許されると考えていることに驚くのだ。

日韓慰安婦協定では、「最終的にして非可逆的」という、およそ外交文書にふさわしくない文言が入っている。これは、日本政府の強い意向で挿入したもの。韓国人の気の変わりやすさを見通した結果だが、今から見れば「正解」であった。



日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)についても、認識不足が著しい。

北朝鮮の核開発が成功したことで、日韓の安保体制が危険にさらされている。

とりわけ、韓国の北朝鮮に関する軍事情報収集能力に問題があるため、米国の強い要請もあって締結したのだ。

こうした経緯を無視して、日本は軍事大国化の道を歩んでいる。また、竹島については領有権を主張し続けている。

したがって、GSOMIAを締結するのが疑問だという。この程度の認識しか持ち得ない人間が、仮に韓国大統領に当選すれば、真っ先に「反日」姿勢の強化が予想される。



こうした道理を弁えない相手が率いるかも知れない韓国政府を、日本が通貨スワップで支援する意味があるだろうか。


15年に日韓通貨スワップ協定が自然消滅したのも、朴大統領の「反日姿勢」の結果である。日本が、骨の髄から「反日」の韓国を救済することは、政治的にも慎重であるべきだ。


(2016年12月24日)