韓国外相の強硬姿勢で日韓関係はさらに冷え込む
7/2(火) 6:01配信
戦後最悪の日韓関係が さらに冷え込む可能性
戦後最悪の日韓関係が、さらに冷え込む可能性が高まっている。その背景には、韓国の康京和外相の強硬な発言がある。
元々、韓国政府は、韓国最高裁が元徴用工に対する賠償を日本企業に命じた判決について原告側の主張を容認した。
これは、日韓の財産・請求権の問題が“最終的に解決済み”であることをまとめた日韓請求権協定に反している。
早ければ今夏にも、韓国の裁判所は日本製鉄や不二越が韓国に設立した合弁企業の株式に対する売却命令を出す可能性がある。
本邦企業に実害が及ぶ場合、日本政府も黙ってはいられないだろう。すでに、日本の世論にも、韓国に対して厳しい姿勢で臨む声が強くなっている。
この状況に関して、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は、日本が報復措置をとれば韓国も対抗すると強硬な姿勢を鮮明にした。
韓国は日本政府が請求権協定に基づいて通告した仲裁付託にも応えなかった。
もはや、韓国政府の行動は“手に負えない”レベルまで至っている。
政府が韓国の希望した日韓首脳会談の開催に応じなかったのは当然といえるだろう。
ただ、わが国が感情的になることは得策とは言えない。
むしろ“駄々っ子”のような韓国に、より冷静に対応することが重要だ。
政府は、国際社会の中で日本の主張に賛同する国を増やし、韓国が、わが国の求めに応じざるを得ない環境を作り出すことを考えるべきだ。
● 韓国政府を 正面から相手にする必要はない
これまで韓国では、歴史、社会、経済などに不満やいら立ちを募らせる国民の心理が蓄積されてきた。
それが、韓国の政治に無視できない影響を与えてきた。その影響度は、われわれ日本人の理解を超えている。
韓国では長期の目線で富の再分配などの改革を進めることが難しい。
また、韓国の社会心理には、“熱しやすく、冷めやすい”という特徴もあるようだ。
朴槿恵(パク・クネ)前大統領の政治スキャンダルに怒った民衆は、ろうそくをもって大規模なデモを行い最終的に前大統領は罷免された。
その時点では、国民は、文在寅(ムン・ジェイン)氏に寄り添う姿勢を鮮明に示し、所得主導の成長や北朝鮮との融和など前政権とは対照的な政策を主張した。
差のエネルギーが、文氏を大統領の地位に押し上げた。
逆に言えば、文氏は大衆に迎合する主張を行うことにより、大統領の座を手に入れることはできた。
しかし、韓国経済の成長率低迷を受けて、文氏は世論の不満を増大させてしまった。
何よりも大きかったのが、昨年7月の最低賃金引き上げ公約の撤回だ。
事実上、韓国の経済は財閥企業に牛耳られている。
収益力が相対的に劣る中小の事業者にとって、できることなら賃上げは避けたい。
加えて、経済成長が進まない(収益が増えない)中、賃上げは企業の経営体力を低下させるだろう。
文氏は企業からの反発にあい、経済政策の目玉である賃上げを撤回せざるを得なくなった。
世論は「大統領に裏切られた」との認識を強め、大統領支持率は急速に低下し始めた。
文氏は北朝鮮政策を推進することで世論の不満を解消しようとしたが、北朝鮮は米国との直接交渉を目指している。
反対に、韓国の前のめりな対北朝鮮融和姿勢は、米国の不信を買ってしまった。
一段と強まる 文政権の対日強硬姿勢
所得主導の成長と北朝鮮との融和政策が、行き詰まった文政権にとっては生命線と言ってもよいだろう。
それと同時に対日強硬姿勢は重要だ。
文政権が現在のスタンスを変えない限り、戦後最悪の日韓関係はさらにこじれるだろう。
この問題は、元徴用工への賠償問題に関する韓国の対応を振り返るとよくわかる。
韓国は日本側が求めた仲裁付託に応じなかった。
韓国は国家間の合意を守ることを拒否したのである。
韓国は、わが国の要請には一切応じず、代わりに自国の要求を突き付けることに終始している。
6月に入り韓国外務省は、日韓の企業が資金を拠出し、原告との和解を目指す案を提示した。
それをわが国が受け入れるなら、請求権協定に基づいて交渉に応じるというのだ。
見方を変えれば、韓国の政治は、元徴用工問題という国内の問題を自国で解決する力を持ち合わせていない。
国際政治において重要なことは、国家間の合意を順守することだ。
それができない相手とは、話ができない。
日本政府が、韓国の提案を拒否し、韓国が求める首脳会談の開催にも応じなかったのは至極当然の判断といえる。
韓国の政治は、論理的に自国の置かれた状況を把握するゆとりを失ってしまったように見える。
文大統領は、何とかして要求をわが国にのませることで、世論に応えたいのだろう。
それ以外、文大統領が有権者からの支持をつなぎとめる方策は見当たらない。
康京和外相に関しても、日本側の報復措置に「対抗する」と発言する以外、自らの政治家生命を維持することは難しくなっているのかもしれない。
韓国の世論は政治への不信を強めている。
元徴用工問題などをはじめ、韓国の対日強硬姿勢は、一段と激化する可能性がある。
今後、文政権は日本に、わがままかつ一方的に、さまざまな要求を突き付けるだろう。
戦後最悪の日韓関係は、一段と悪化に向かうことが懸念される。
本来、韓国は日米と連携して朝鮮半島情勢の安定に取り組まなければならない。
韓国が対日批判を強めるに伴い、国際社会における孤立感も深まるだろう。
わが国は韓国を まともに相手をする必要はない
わが国は韓国に対して、国家間の合意の順守のみを求めればよい。
それ以外、韓国にエネルギーを使う必要はないだろう。
韓国が真正面から日本側の求めに応じることも想定しづらい。
それよりも重要なことは、日本が国際世論を味方につけることだ。
これは、徹底して取り組まなければならない。
韓国による日本産水産物の禁輸措置をめぐるWTO紛争解決を見ると、日本は客観的なデータや論理的な説得力を準備すれば、国際社会での論争には勝てると考えてきた。
しかし、その認識は甘かった。
わが国は最終的な結論が出るその瞬間まで、気を抜かずに自国の主張の正当性がより多くの賛同を得られるよう、あらゆる方策を用いて各国の利害を調整しなければならないのである。
今後、韓国の政治は、一段と不安定化する恐れが高まっている。
わが国は自力で北朝鮮問題に対応しつつ、極東地域の安定を目指さなければならない。現実的な方策としては、日韓請求権協定の定めに基づいて、速やかに第3国を交えた仲裁を図ることだ。
わが国は国際世論に対して、日本の対応が国家間の合意に基づいた正当なものであること、韓国の対応が見込めない以上やむを得ないものであることを冷静に伝え、1つでも多くの国から賛同を得なければならない。
その中で日本は、安全保障面では米国との同盟関係を基礎としつつ、多国間の経済連携を進めることが世界経済の成長を支えるとの見解を各国と共有できれば良い。
夏場にも、韓国の裁判所は日本企業の資産売却を命じる可能性がある。
本当に資産が売却されれば、日韓が対話を目指すこと自体が難しくなる。
政府は寸暇を惜しんで国際世論に対して自国の行動の正当性を伝え、より良い理解と支持が得られるように利害を調整しなければならない。
政府がG20での議論を通してアジア新興国などの賛同を取り付け、わが国にとって有利に国際社会の議論が進むよう環境を整備することを期待する。
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)