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サムスン失速鮮明、輸出規制も逆風 4~6月営業益半減

2019-07-07 15:37:46 | 日記

サムスン失速鮮明、輸出規制も逆風 4~6月営業益半減

              
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2019/7/5 11:40

韓国サムスン電子の失速が鮮明だ。5日発表した2019年4~6月期の連結営業利益は前年同期比で56%減り、1~3月期の6割減に続く大幅減益となった。在庫が積み上がっている主力の半導体は当面、市況の悪化が見込まれる。その上、4日に強化された日本の対韓輸出規制は次の「成長の種」を直撃。経営への逆風が強まりつつある。

4~6月期の連結決算(速報値)は、売上高が56兆ウォン(約5兆2千億円)、営業利益が6兆5千億ウォン。スマートフォンやパソコンにデータを記憶するDRAMの平均価格が約5割下落した影響で、半導体部門の営業利益が約3兆3千億ウォンと、1年前の約4分の1の水準に縮小したもようだ。

 

米中貿易戦争の影響で「GAFA」と呼ばれる米IT(情報技術)大手のデータセンター投資が減少。サムスンはDRAMの販路を確保できず、製品在庫を通常の3倍の3カ月分抱える。

韓国有進投資証券の李承禹(イ・スンウ)常務は、DRAM価格は「年末までにさらに1割下がる」と予想。サムスンの19年通期の半導体部門の営業利益についても「18年比5割減の28兆ウォンになる」と指摘する。

韓国は輸出の2割を半導体が占める。メモリー首位のサムスンはDRAMで4割強、NAND型フラッシュメモリーで4割弱の世界シェアを持ち、同社の浮沈は韓国経済の先行きを左右する。このため、大半の国民はサムスンが大幅減益になるとの市場予測に神経をとがらせている。

そんななか、日本政府は1日、レジスト(感光材)、エッチングガス(フッ化水素)、フッ化ポリイミドの3品目に関する輸出規制強化を発表。半導体や高精細な有機ELパネルをつくるのに欠かせない材料で、韓国は「まさかの事態」(大手財閥幹部)と衝撃をもって受け止めた。

「我々はこれまでも危機を克服してきた」。3日、ソウルで開かれたサムスンの半導体フォーラム。鄭殷昇(チョン・ウンスン)社長は、約500人の取引先関係者の前でこう強調した。「皆さんの信頼に応えてみせる」とも訴えた。

今回の措置は、サムスンの業績にどれだけ影響するのか。韓国市場には影響を具体的に分析したリポートがまだ無いが、アナリストの多くは「半導体工場の操業が止まることはないだろう」と語る。操業停止となれば日本の素材メーカーにも打撃となるためで、そうなる前に日本政府が規制緩和に動くとの見立てだ。

サムスンが保有するフッ化水素の在庫は約1カ月分とされる。あるアナリストは「2~3割規模の減産をして材料を節約することは考えられる」と話す。減産は一時的には損益にマイナスだが、「メモリー価格が反転するきっかけになり得る」との見方も多い。直近のサムスン電子の株価は、6月末から約3%の下落にとどまる。

一方、韓国の半導体業界関係者は「サムスンは急所を突かれた」と指摘する。規制対象の材料が工場の標準工程ではなく、サムスンが今後の切り札と位置づける製品向けの最先端工程で使われるためだ。

具体的には、一部のレジストは高機能半導体の生産に使うEUVと呼ばれる露光装置の稼働、フッ化ポリイミドは画面が折り畳み可能な有機ELパネルの製造に使う。特にフッ化ポリイミドは日本の1社に100%調達を依存しているとされ、日本政府の個別審査に生命線を握られた形になる。

スマホとタブレットの両方の機能を備える折り畳み式スマホは、4月に不具合がみつかって米国で予定日の直前に発売を延期したのが記憶に新しい。サムスンは当時「数週間後に新たな発売予定を知らせる」としたが、現在まで説明はない。

スマホ事業は春に発売した旗艦機種の苦戦で、4~6月期の営業利益が2割以上減少したもよう。サムスンが新製品にかける期待は大きいが、輸出規制を受けて「19年に100万台の販売目標の達成は難しくなった」(韓国メディア)との見方も広がっている。

(ソウル=山田健一)


韓国に対する「特別扱い」の終了:「逆切れ」している場合ではない。メッセージはわかっているはず。

2019-07-07 14:56:31 | 日記
 

日本政府は、この度、韓国に関する輸出管理上のカテゴリーを見直すとともに、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の輸出などについて、包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め、輸出審査を行うこととした。これらは、韓国の主力産業である半導体やディスプレイ製造に不可欠の素材であり、日本が市場の70~90%独占しているため、禁輸措置ではなくただの優遇措置解除ではあるものの、韓国のビジネスに影響必至と思われるため、韓国側が激烈な反応を見せている。

 

先日、某討論番組に出演して本件について話してきたところだが、改めて自分の思うところを書いておこうと思う。

 

1.   事実関係

まず、日韓マスコミの報道で誤解されている可能性が高いので改めて事実につき強調しておくと、韓国に対する禁輸措置ではない。

これまで、信頼関係に基づいて、輸出手続を包括的に許可していたのだが(ホワイト国指定)、この優遇措置を辞めて、ASEANや台湾など、一般の場合と同じく、普通の輸出手続きに戻すだけである。

今までが特別扱いだっただけだ。韓国には引き続きこれら物資を輸出することは可能である。ただし、通常の国の場合と同様、より輸出手続きには時間がかかることになるし、また、当然のことながら、審査過程で不適切な事案があれば差し止めもあり得よう。

 

この韓国に対する変更の理由として、日本政府は、①輸出管理の観点から不適切な事案があったこと、②旧朝鮮半島出身労働者問題の対応をはじめ、国家間関係の信頼が損なわれている状況にあることという2つの理由を挙げている。

 

たとえてみれば、いままで、友達だと思って、信用して鍵を渡していたけど、とても友達だとは思えないような行為ばかり繰り出してきて信頼関係もなくなったし、実際に、家を物色された形跡もあるので、鍵は返してもらって、一回一回、大丈夫か確認してからドアを開けることにしますね、ということである。家に入れないと言っているわけではない。「なぜ鍵を取り上げるんだ!」と逆切れして騒いでいる韓国に対しては、「胸に手をあてて良く考えてみたら」と言いたい。

 

韓国側の一方的な反日行為により、日韓関係が史上最悪といって良い状況にあるのは周知の事実だ。この1年だけでも、慰安婦財団解散、旭日旗事件、レーダー照射事件、国会議員の竹島上陸、天皇陛下に対する無礼発言、極めつけは、旧朝鮮半島出身労働者判決に関する韓国政府の不誠実極まりない対応と、「信頼関係がなくなった」と言われる心当たりは山のようにあるだろう。

 

特に、旧朝鮮半島出身労働者問題については、この8か月の間、日本政府は一貫して、韓国政府が解決に向け責任ある対応を取らないのであれば、相応の措置を取らざるを得ないと公言してきたところであり、韓国政府が慌てふためいているのは怠慢そのものだと思う。

 

日本なら、「蹴ろうが殴ろうが、何もしてこない」とたかをくくってきたのだろう。しかし、もはや、日韓関係は新たなフェーズに入った。以前は、経済力の面で圧倒的に強い日本と弱い韓国、過去の韓国併合に関する贖罪意識などから、韓国からは何をされても多めに見るというのが日本の態度であったし、それを韓国は等閑視してきた。韓国の傍若無人振りは日本が甘やかしてきたツケともいえる。しかし、今や韓国と日本は一人当たりGDPはほぼ同じの対等な国同士である。韓国は立派に成長したのだ。日本としても、「子供扱いは辞めて、大人の付き合いをさせて頂きます」ということである。

 

なお、参議院選挙対策だから、参議院選挙が終わったら日本政府の態度も軟化するだろうといった無責任の報道が韓国側で見られるが、大きな誤解だと思う。今回の措置は、実際に輸出管理上の懸念があるから責任ある国際社会の一員として取っているものであり、また、日韓間の信頼関係が損なわれた現状を踏まえて取ることとしたものであり、選挙対策などではない。もはや「韓国だからといって一方的に我慢するとか多めにみるという特別待遇は今後一切辞めた」という日本の宣言だと思ってもらった方が適切だと思う。

 

日本政府の立場を改めて引用しておくと、以下のとおりである。

 

「日本を含む各国は、国際合意に基づき、安全保障のために軍用品への転用が可能な機微技術等の輸出について、実効性のある管理が求められており、そのために必要な見直しを不断に行うことは、国際社会の一員として当然の義務である。

 

これは、韓国側の輸出管理制度に不十分な点があり、従来は、日韓の意見交換を通して、韓国側が制度や運用を改善するとの信頼関係があったが、近年は日本からの申し入れにもかかわらず、十分な意見交換の機会がなくなっていたこと、

 

また近時、今回輸出許可を求めることにした製品分野において、韓国に関連する輸出管理を巡り不適切な事案が発生している。

 

こうした状況の中で、日韓関係全体について、これまで両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上で、旧朝鮮半島出身労働者問題については、G20までに満足する解決策が示されず、信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない。

 

このため、国際的な信頼関係を土台として構築されている輸出管理制度について、韓国との信頼関係を前提として取り組むことが困難になっていると判断し、従来韓国に対して実施してきた優遇措置をやめて、他国と同様の通常の輸出管理上の扱いに戻すこととした

 

今回の見直しは、安全保障を目的に輸出管理を適切に実施する観点から、その運用を見直すものであり、「対抗措置」ではない。」

 

何よりも、実際に、日本から渡された機微物資が不適切に扱われた事案があるという。北朝鮮に流出したことを示唆させるものである。先般のレーダー照射事件においても、一体韓国が何をしていたのかは明らかになっていない。北朝鮮の代理人かと疑わしくなる文在寅政権においては何があってもおかしくない気もする。

日朝首脳会談を呼び掛けている日本としては、言いにくいところもあるのかもしれないし、韓国に対する「武士の情け」なのかもしれないが、一部韓国国民が不買運動とまで言っているのだから、韓国の善良なる一般国民の反日感情をこれ以上高めないためにも、公表してしまったらいいのではないか

 

2.   WTO上もワッセナーアレンジメント上も何の問題もない。

韓国政府は、貿易ルールの恣意的な運用やWTO違反の可能性を指摘しているが、全くあたらない。むしろ、WTOやワッセナーアレンジメントといった既存の国際ルールの中で日本は然るべく対処している。

 

まず、WTOとの関係ではGATT21条において、軍事転用可能な機微物質の輸出管理は、安全保障のための例外として明確に規定されており、日本や韓国を含む各国は、これに基づき長期にわたり輸出管理を行ってきている。

 

今回の見直しは、国際合意に基づいた輸出管理の不断の見直しの一環として、従来韓国に対して実施してきた優遇措置をやめて、他国と同様の通常の輸出管理上の扱いに戻す内容であり、韓国向けの禁輸措置ではない。

 

輸出管理制度上、ある国に対して包括的輸出許可といった特別の許可を与えるかどうかは、国家の裁量に任されており、その判断は国家間の信頼関係に基づく。たとえば、日本は、包括的輸出許可をしているいわゆるホワイト国は27か国であるが、EUの指定するホワイト国は8か国であり、そもそも韓国は入っていない。

 

ちなみに、韓国と異なり極めて友好的な台湾について日本はなぜ、台湾をホワイト国にしていないかといえば、中国との取引が余りにも多いからである。同じく、北朝鮮に機微物資を流出させる恐れがあるのであれば、韓国をホワイト国に指定し続けることができないのは当然ではないだろうか。少なくとも、ASEANや台湾と比べて韓国が優遇される理由はないだろう。

 

3.メッセージはクリア:   旧朝鮮半島出身労働者問題は韓国政府自身が解決せよ。

日韓報復合戦になり、日韓関係が壊滅的になることを懸念する声が上がっており、これはもっともなことである。が、日本政府は理由があって、今回の措置をとっている。韓国に対しては、極めてクリアーなメッセージを出したということだ。具体的には、①旧朝鮮半島出身労働者問題について、韓国政府自身が責任をもって解決せよということ、及び②おそらく北朝鮮に対する流出など不適切な行為を辞めさせよ、ということである。

 

 これらにつき、韓国政府が然るべく対処をすれば、日本政府側から、第二段が発動されることはないと思う。なぜなら、日本側が今回の措置をとることとなったのは、実際に不適切な事案があることと韓国との信頼関係が特に旧朝鮮半島出身労働者問題について損なわれたことにあるからだ。

 

報復合戦などと息巻く前に、韓国政府がやるべきことをやれば良いのである。

 

韓国側の主張でいつも大変違和感を感じている点がある。韓国の司法の判断に韓国政府は従わざるを得ず、したがって、日本側(日本企業)は、韓国司法の判断を受け入れるべき、という「ロジック」である。

 

私も長く国際法を担当してきたが、はっきりいって、国際法の基礎中の基礎もわかっていない常識のない主張だと言わざるを得ない。

 

たかが韓国の一国内機関に過ぎない韓国の国内裁判所が、国家間の法的約束である条約上の義務をオーバーライドすることはできない。逆に聞きたいが、日本の裁判所が、何かの判断を出したら、韓国はハイハイと言ってそれを聞くだろうか。

 

はっきりって、韓国の国内裁判所が何をどう判断しようと、日本の知ったことではない日韓間の条約上の義務及び合意は何らの影響を受けないのであり、韓国政府は、条約上の義務履行について責任を負い続けることは当然である。こんな国際法の基礎中の基礎をわきまえていない態度には正直脱力だ。

 

 この場合、韓国政府が韓国の司法に従わざるを得ない国内事情が生じたことは事実だろうが、それは、あくまでも韓国の国内の勝手な事情である。日韓間の合意事項が変わるわけではない。韓国政府は、日韓間の合意を守るべく、司法判断に対しては国内で解決措置を取るしかない。日韓間の合意は、議事録にも明確になっているように、日本側は「徴用工」に対して個別保障をすることを申し出たにも関わらず、韓国政府が自分が徴用工は対処するのでその分も含めて一括で資金をくれと要求したために当時の韓国国家予算の数倍からなる一括賠償となったものであり、それが不足だと「徴用工」から訴えられたのであれば、韓国政府自身が支払いをすべきものである。または、当該日本の「賠償金」で飛躍的発展を遂げた韓国企業が応分の支払いをするということも感がられようが、日本側に負担を求めるのは「お門違い」というものである。

 

4.   タイミングは今一:一般の韓国国民を反日に駆り立てる危険

 以上申し上げた上でだが、今回の措置を取るタイミングについては正直疑問だと言わざるを得ない。文在寅政権は、極めて特異な革命政権だ。対日外交の破壊的失敗のみならず、北朝鮮に対する異様な親近感や共産主義的ドグマに基づく経済運営による経済失敗などで、まっとうな韓国国民は、文在寅政権に対する疑問符をつけていたところである。対日政策についても、余りにも一方的な反日行為が対日関係を損なってきている事実につき、懸念する声は多かった。いわば、全うな韓国国民の意見として、文在寅政権の対日姿勢を改めるべきという方向の力は一定程度働いていた

 

しかし、今回のタイミングとやり様が今一だったせいで、一般の韓国国民を反日に駆り立て、結果として、文在寅大統領の反日姿勢を利してしまう危険がある。

 

 全ては因果応報とはいうものの、G20で韓国の希望にも関わらず首脳会談がなかった上に、文在寅大統領の執念でトランプ大統領を訪韓させたことが背景となって(むろん米朝首脳の邂逅はあくまで米朝間で決まったことではあるものの)、板門店での米朝首脳会合がありトランプ大統領が戦時境界線を金正恩委員長と手を取り合って超えるというイベントがあった直後に、報復措置と誤解される措置を取る必要はなかったように思う。折しも、通常でも反日の機運が高まる815日は目前だ。G20前に気まずい状況を作りたくなかったという事情もわかるし、仲裁裁判呼びかけの期限がたまたま最近だったということもわかる。でも、もっと前かせめて815日以降か、そして、何より、韓国政府の態度を改めさせることが目的なのであれば、「こうこうこういう事情なので、このような措置を取らざるを得ない」と然るべく説明を韓国側に対して行い、それを公表した後に、行えば、まっとうな常識ある韓国国民は(それでも限界はあるが)心中理解はしたものと思う。

 

 日韓間の報復連鎖といった事態になれば、日韓関係は壊滅的状況になるだろう。それは、これだけ地理的に近接した隣国同士としてお互いの国益に叶わないことだ。ただ、日韓のこれまでの歴史を振り返ると、どこかの時点で、結構ハードなリセットはいずれかの時点で必要となっただろう。今がその時なのだとは思うが、できれば、然るべくリセットは行いつつも、将来の日韓関係に過度な禍根は残さないようにするべきだとも思う。両国の地理関係は永遠に変わらない。お互いどのように思おうが、引っ越しはできないのだから。また、過去の歴史の問題からくるいわば精神分析学上の心理的葛藤を別にすれば、戦略的には本来は日韓は利害を一定程度は共有できる関係にある。米国を介する同盟国同士でもある。実際問題は、多分難しいと思うが、韓国政府は、報復合戦などという前に、旧朝鮮半島出身労働者問題について誠実な対応を行うことである。そうすれば、日本側から第二弾を打つことはないと思う。まずは、仲裁に応じたらいい


日本の輸出規制、韓国では「単なる報復ではなく、韓国潰し」と戦々恐々

2019-07-07 14:37:48 | 日記

日本の輸出規制、韓国では「単なる報復ではなく、韓国潰し」と戦々恐々

デイリー新潮2019年07月04日17時45分

 

 7月4日、日本政府は韓国に対する輸出規制の強化策を発動した。「報復はけしからん」と息巻く韓国人が多い中で「そんな生易しいことでは終わらない。日本は我が国を潰すつもりだ」と見切る韓国メディアが出てきた。(鈴置高史/韓国観察者)

ウォンが急落

 7月4日のウォン相場は前日比2・70ウォン高の1ドル=1168・60ウォンで引けた。1日から3日まで、韓国向けIT製品の素材の輸出規制強化――いわゆる「日本の対韓報復」を嫌気し売られていたウォンが、少し持ち直した。

 今年第1四半期のGDPがマイナス成長と判明した4月25日以降、ウォンは売られ一時は1200ウォンに迫った(「蟻地獄に堕ちた韓国経済、『日本と通貨スワップを結ぼう』と言い出したご都合主義」参照)。

 ただ、ドルの利上げ観測から6月24日以降は1150ウォン台に落ちついていた。しかし日本が「大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて」を発表した7月1日以降、再びウォンは売られた。

 7月1日は前日比4・10ウォン安の1158・80ウォン、2日は7・20ウォン安の1166・00ウォン、そして3日は5・30ウォン安の1171・30ウォンと下げ続けた。

即効性の毒物「資本逃避」

 IT製品の素材が円滑に日本から入らなくなると、半導体など主力産業がマヒすると韓国は焦っている。だが、その心配の前に、韓国経済の持病たる資本逃避を懸念せざるを得なくなった。

 資本逃避は産業のマヒと比べ「即効性」が強い。韓国政府の防衛ラインと見られる1200ウォンを割り込めば、今すぐにも大規模な資本逃避が起きかねないからだ。

 防衛ラインを死守するためには、外貨準備のドルを使ってウォンを買い支える必要がある。すると市場は外貨準備が先細りになると見透かし、ウォン売りに拍車をかける可能性が高い。

 韓国はこの「蟻地獄」に1997年、2008年、2011年の3回、はまった(「韓国、輸出急減で通貨危機の足音 日米に見放されたらジ・エンド?」参照)。

 韓国は今も、半導体価格の急落と中国経済の不振により輸出が急減し、通貨危機の再現を恐れている(「蟻地獄に堕ちた韓国経済、『日本と通貨スワップを結ぼう』と言い出したご都合主義」参照)

 そこに「日本の報復」という悪材料が加わった。韓国からすれば「モノ」を通じた報復に見えて実は、すぐに効く「カネ」による毒物を盛られたことになる。

「国産化」では間に合わない

 韓国政府は対抗策を打ち出した。7月3日、政府と与党「共に民主党」、青瓦台(大統領府)の3者は協議会を開き、日本からの輸入が難しくなる素材を国産化するために、年間1兆ウォンを投資することを決めた。

 韓国経済新聞が「<速報>党・政府・青瓦台、『半導体に先制投資』…素材・部品・装備に毎年1兆投資」(7月3日、韓国語版)で報じた。

 この記事は3日午前の会議を同じ日の朝9時過ぎに報じるという異様な早さだった。市場の動揺を抑える狙いで書かれたと見られる。

 もちろん、こんな記事でウォン売りは抑えられなかった。国産化は短時間ではできないことは誰もが知っている。

 経済産業省が発表した「大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて」によると管理強化は2段構えだ。

 まず、IT製品を製造する際に使う3つの素材の韓国向け輸出を、契約ごとに審査・許可する方式に変える。これまでは1度許可を得れば、継続的に輸出できた。

 3つの素材とは、有機ELの製造に使うフッ化ポリイミド、半導体製造工程で使うレジスト(感光材)とエッチングガス(フッ化水素)である。

 レジストの場合、韓国でも製造しているが品質が低い。朝鮮日報の「日本の緻密な攻勢…韓国が輸入を多角化できない素材だけをズバリ探し出した」(7月3日、韓国語版)は「韓国製は10ナノ級以下の超微細工程では使えない。日本製品と同水準のレジストを作るのは『ゼロ』から研究開発する必要がある」と嘆いた。

 第2段は「信頼できる『ホワイト国』の分類から韓国を外す」である。

WTOで韓国は「藪蛇」に

 韓国メディアが一斉に報じる、もう1つの対抗策が「WTO(世界貿易機関)への提訴」である。日本が報復措置として韓国製品を差別するのは自由貿易の精神に違反している、との主張だ。

 だが、「訴えても勝てない」との見方が韓国でも多い。なぜなら、今回の措置はあくまで「制度の厳格な運用」であり、「韓国に対する優遇措置の廃止」に過ぎないからだ。

 下手に訴えると韓国の「藪蛇」になる可能性もある。「大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて」に、興味深いくだりがある。経産省の発表文を引用する。

・輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されていますが、関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況です。 ・こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこととします。

 日韓のメディアは「対韓報復」の原因に、いわゆる「徴用工」裁判の判決や、自衛隊機に対する射撃管制レーダーの照射をあげる。発表文の「大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていること」がそれに相当するのだろう。

韓国は「核武装幇助」

 では、それに続く「大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこと」とは何を意味するのか。国連の対北朝鮮制裁を韓国が堂々と破っていることを指すと思われる。

 韓国電力の子会社は密輸された北朝鮮の石炭を購入し使っていた。洋上で北朝鮮の船舶に石油などを積み替える「瀬取り」の国際的な監視網にも韓国は参加していない。北朝鮮に近い左派の文在寅(ムン・ジェイン)政権が「瀬取り」を黙認するためと疑う向きが多い。

 北朝鮮の開城にある南北共同連絡事務所の運営用として韓国政府は石油を提供している。平壌で南北首脳会談を開いた後の2018年11月、「北朝鮮から送られたマツタケのお返し」として韓国政府は「ミカン200トン」を送った。保守の自由韓国党は「送ったのはミカンだけだったか」と疑念を表明した。

 韓国は人道支援を名目に北朝鮮に対するコメ支援も開始した。これを突破口に、開城工業団地や金剛山観光事業を再開し、現金も北朝鮮に送る計画だ。

 要は、韓国はモノやカネを北朝鮮に送り、核武装を幇助しているのだ(「文在寅は金正恩の使い走り、北朝鮮のミサイル発射で韓国が食糧支援という猿芝居」参照)。

ウラン濃縮にも使うガス

 もし、韓国が「不公正貿易だ」とWTOに訴え出れば、日本は「韓国が国連制裁を破っているので『怪しい国』に認定しただけ」と反論するつもりであろう。

 だからこそ、今回の韓国に対する輸出管理強化の2段階目が「外為法輸出貿易管理令で定める『ホワイト国』から韓国を外す手続きの開始」となっているのに違いない。

 「信頼できる国」を意味する「ホワイト国」から外されれば、大量破壊兵器と通常兵器の開発と製造に使われる恐れのある物質や技術の日本からの輸入に関し、日本政府の審査が必要となる。

 7月4日の制裁発動を控えた3日、世耕弘成経産相は「特に兵器などに転用される可能性がある技術を輸出する際には、しっかりとした管理を常に行うことが求められている。そういう意味で、不断の見直しの努力を行うのは国際社会の一員として当然だ」と、韓国の怪しさをさりげなく強調した。

 なお、純度の高いエッチングガスはウラン濃縮の工程でも使われる物質である。韓国の反撃を期に、日本は西側の国に対し「北朝鮮だけではなく、その核武装を助ける韓国も経済制裁の対象にすべきだ」と呼び掛けるかもしれない。

韓国を潰す気だ

 韓国では「怪しい国に認定された」との自覚が増している。中央日報は「日本『半導体素材の軍事転用に注目』…韓国を『安保憂慮国』扱いか」(7月3日、日本語版)で「エッチングガスが韓国の最終需要者に届いているのか、第3者に渡っていないか、民生用に使われているのかを綿密に管理する、と日本政府が表明した」と書いた。

 左派系紙、ハンギョレはさらに踏み込んだ。「日本、経済報復を超え、国際貿易秩序における“韓国排除”狙うか」(7月3日、日本語版)である。左派系弁護士団体に所属するソン・ギホ弁護士の以下のコメントを紹介した。

・韓国に対する部品輸出に安保の憂慮があるという根拠が全くないのに、法を改正して日本の貿易秩序において韓国の地位を根本的に変えようとする措置だ。 ・日本の強硬派たちが強制徴用に対する一時的報復のレベルを超えて、国際分業秩序から韓国を排除し、韓国の経済成長を抑制すると共に、安保憂慮を口実にして南北間の接近を牽制しようとする長期的戦略のもと動いている。

 単なる報復ではなく、北朝鮮と手を組んだ韓国を潰すつもりだ――と読んだのだ。報復なら韓国が譲歩すれば止まる。だが、韓国を潰すつもりなら、対応のしようがない。

 米国が中国の通商上の不正を批判しながら中国製品に対する関税を引き上げ、西側のサプライ・チェーンから締め出そうとしているのと同じ構図である。

米国に助けてもらえない

 日韓が対立する時、韓国のメディアは必ず「米国に日本を諫めてもらおう」と言い出す。しかし今回は、そうした意見は全く見られない。理由は2つあるだろう。

 ちょうど今、米国が中国製品に対する関税引き上げを通じ、中国を屈服させようとしている。そんな時、「日本のWTO違反」を言いたてても、米国が話を聞いてくれるわけもない。

 もう1つは、韓国が米国からレッド・チーム――敵方と見なされ始めたことだ。4月11日にワシントンで開いた米韓首脳会談は実質2分間で終わった(「米韓首脳会談で赤っ恥をかかされた韓国、文在寅の要求をトランプはことごとく拒否」参照)。

 6月30日の米朝首脳会談は、板門店の韓国側施設で開かれたというのに、文在寅大統領は参加を拒否された。韓国は北朝鮮の使い走りと米国に見なされたからだ。

 北朝鮮からさえも韓国は一人前のプレーヤーとして扱われなくなった。6月27日には「蚊帳の外から口出しするな」と罵倒されてしまった(「北朝鮮が韓国に“仲介者失格”の烙印 それでも文在寅が続ける猿芝居の限界が来た」参照)。

 すっかり孤立した韓国は、常套手段である「日本を孤立させて圧迫する作戦」が使えなくなったのだ。

日米が組んで「韓国叩き」か

 日本の安全保障専門家には、今回の対韓制裁は発動前に米国と十分に打ち合わせたと見る人が多い。確かに、そう見える。

 朝鮮日報は「制裁の本質はサムスン潰し」と断じた。「<日本の経済報復>カギはEUV、サムスンの次世代半導体の工程を狙った」(7月3日、韓国語版)である。要約しつつ翻訳する。

・業界によると、日本が輸出を規制するレジストは次世代露光装置の「EUV(極紫外線)」タイプだ。DRAMの製造に使うレジストではない。 ・サムスン電子はDRAM依存体質を改善するため98兆ウォンを投資し、ファウウンドリーと呼ばれる半導体の受託生産事業に軸足を移す計画だ。 ・その必須の武器が5ナノ級の線幅の半導体を作れる「EUV」だった。が、日本の輸出規制によりファウンドリー世界1位、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)追撃が困難になる。

 米国は世界の企業に、中国の大手通信会社、ファーウェイ(華為技術)との取引をやめるよう呼び掛けている。だが、韓国企業は基地局などファーウェイの通信設備の購入を中止しないうえ、ファーウェイに対する電子部品の販売も続けるつもりだ。

 サムスン電子はファーウェイにDRAMを大量に売っており、取引を中断すれば経営上の打撃が大きい。しかし米国の要請を無視すれば、どんな報復を受けるか分からない。もちろん中国からも「米国の言いなりになるな」と圧力がかかる。

韓国は米中の間で板挟みとなり、戦々恐々としていた。そこに思いがけない日本からの横矢。言うことを聞かない韓国企業に対し、米国が日本の制裁を使って警告したとも受けとれる。

サムスンの挫折は韓国の挫折

 日本政府にそこまでの意図があるかは不明である。だが、サムスン電子の時価総額は韓国全体の20%前後を占める。「サムスンの挫折」は当然、「韓国の挫折」である。

 「対韓制裁」以降、サムスン電子の株は売られ続けた。7月4日の終値は前日に比べ550ウォン高の45950ウォンだったが、発表前の6月28日と比べ、2・2%安い水準だ。

 サムスン電子が下げると、ほぼ自動的にKOSPI(韓国株価総合指数)も下げる。するとウォンも下がる、というパターンに入るのが普通だ。際どい状況になってきた。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ) 韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年7月4日 掲載