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外相、韓国大使に抗議 元徴用工問題「極めて無礼」

2019-07-19 17:16:46 | 日記

外相、韓国大使に抗議 元徴用工問題「極めて無礼」

                   

2019/7/19 10:49 (2019/7/19 13:21更新)

河野太郎外相は19日午前、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟を巡り、南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使を外務省に呼んだ。

日本が求めた日韓請求権協定に基づく仲裁手続きに韓国が応じなかったことに「非常に残念だ」と抗議した。

南氏が日本側が一度拒否した日韓両国企業による賠償案を再提示すると「極めて無礼だ」と非難した。

河野氏は南氏に「韓国が国際法違反の状態を野放しにしないよう直ちに是正の措置を取るよう求めたい」と伝えた。

【関連記事】こじれる日韓、悪化の一途 日本は国際法順守訴え

河野氏は日韓が国交正常化の際に結んだ1965年の日韓基本条約と日韓請求権協定は両国関係の法的基盤だと指摘。

「韓国政府が行っていることは第2次大戦後の国際秩序を根底から覆すに等しい」と述べた。

南氏は日本が7月に発表した韓国への半導体材料の輸出規制を念頭に「一方的な措置で両国民が困難な状況に陥っている」と批判した。「韓国政府に伝える」とも語り、対話による解決を訴えた。

河野氏はこの後「韓国側によって引き起こされた厳しい日韓関係の現状に鑑み、必要な措置を講じる」などと主張する外相談話を発表した。

日本政府は韓国最高裁が昨年10月に日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じたのを受け、今年1月、請求権協定の紛争解決手続きに基づき、2国間協議を申し入れた。

韓国側が受け入れず、5月に手続きを進めて仲裁委員会の設置を要請したが、韓国は7月18日の最終回答期限までに応じない方針を表明した。

日韓請求権協定は請求権問題の完全かつ最終的な解決をうたう。

日本政府は日本企業に賠償を命じる韓国最高裁の判決は同協定の国際法違反とみなす。

河野氏は南氏との面会後、記者団に「判決で日本企業に実害が生じれば必要な措置を適切に取っていく」と述べた。

韓国政府が日本企業の資産売却に向け実効的な解決策を示さなければ、徴用工問題の事実上の対抗措置とみられる半導体部品の輸出規制に追加した措置も検討する。

国際司法裁判所(ICJ)への提訴も視野に入れる。

西村康稔官房副長官は19日の記者会見でICJへの提訴について「様々な措置を検討してきている。

どのタイミングでどのような措置を講じるかは現段階で答えを差し控えたい」と話した。


韓国、「一本化」大統領と与野党、対日政策で強硬姿勢「経済が弱点」

2019-07-19 17:02:21 | 日記

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

2019-07-19 05:00:00

韓国、「一本化」大統領と与野党、対日政策で強硬姿勢「経済が弱点」

テーマ:ブログ

韓国は、大統領と与野党代表が会談して、日本へ強硬姿勢で立ち向かうことで合意した。

この「与野党協力」もいつまで保つか。

足下の経済は、2四半期連続のマイナス成長も予想される厳しい局面に入っているからだ。

 政策金利は年1.50%に引下げられたが、年内に追加の利下げも取り沙汰される「経済の緊急事態」である。

今年のGDP成長率予測も2.2%へ引下げられた。

次回の利下げ局面では、GDP成長率はさらに引き下げられるはず。

こうした中で、日本を巡る対策において、与野党の協力体制を保てず、分裂するリスクを否定できまい。

 『聯合ニュース』(7月18日付)は、「文大統領と与野5党代表、『日本の輸出規制は不当な経済報復』」と題する記事を掲載した。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と与野党5党の代表は18日に青瓦台(大統領府)で開いた会合で、

日本の対韓輸出規制強化について、自由貿易の秩序に背く不当な経済報復とし、

「日本政府は経済報復措置を直ちに撤回しなければならない」との見解で一致した。

また国全体で今回の事態を克服するための緊急の特別協力機構を設置することに合意した。

(1)

「青瓦台と与野党5党の報道官は会合後にこのような内容を盛り込んだ共同発表文を出し、

「文大統領と5党の代表が日本の輸出規制措置に対し深く議論し、このような事項に対する認識を共有した」と伝えた。

発表文には「(日本の措置は)韓日両国の友好的、互恵的関係を深刻に毀損(きそん)する措置であるという認識で政府と与野党は一致した」との内容が盛り込まれた」

 下線をつけた部分は、韓国側が意図的に毀損してきた点である。

大法院判決から8ヶ月も、日本政府の呼びかけを無視しておきながら、よくこういう身勝手な文言を挿入したと呆れる。

また、韓国艦船による海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射など、敵意ある行為を行ってきた。

日韓両国の友好的、互恵的関係は、すでに韓国によって断ち切られている。

 (2)

「また日本が輸出手続きで優遇する「ホワイト国」から韓国を除外する方針を示していることなど、

追加措置を行うことは韓日関係および北東アジアの安保協力を脅かすものであり、外交的な解決に応じるよう求めるとの内容も含まれた。

さらに「与野5党の代表は政府に対し、日本の経済報復措置による問題を解決するために多様なレベルでの積極的な外交的努力を要請し、

大統領はこれに同意して実質的対策を設けるとした」との内容も盛り込まれた」

 下線部分で、大統領が日本に対して外交的働きかけを謳っている。

そうならば、「第三国仲裁委設置」についても、回答もしない非礼は許されない。

韓国は、すべて韓国側の要求を通そうとしているが、そういう非現実的な態度を先ず改めることだ。

 (3)

「また発表文には「政府と与野党は日本の経済報復への対応に超党派的に協力し、

われわれの経済に対する被害を最小化するために努力し、

国家経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)および素材・部品・設備産業の競争力強化のために共に努力する」と盛り込まれた。

さらに、国全体で対応するために緊急の特別協力機構を設置して運営するとし、

「政府は与野党とともに日本の経済報復にともなう危機を克服するための意思疎通と統合のために努力する」との内容が盛り込まれた」

 下線部分を実りあるものにするには、文政権の身勝手な対日要求を是正させることも検討すべきである。

日本へ譲歩せずに、韓国の要求だけを「100%実現」することなどありえない。

「緊急の特別協力機構を設置」するならば、ここで議論を最初からやり直すべきだろう。

そうでなければ、野党は大統領府に利用されるだけだ。

 


新著『100年を生きる 心臓との付き合い方』(セブン&アイ出版)を上梓し、これまでに通算8000例以上の手術を担当、

2019-07-19 16:16:05 | 日記

新著『100年を生きる 心臓との付き合い方』(セブン&アイ出版)を上梓し、これまでに通算8000例以上の手術を担当、

天皇陛下執刀医として知られる順天堂医院 心臓血管外科医の天野篤先生に、心臓病手術の現状と、いざというときに備え良い医師・病院の見極め方について教えてもらった。

 この寿命100年時代に、心臓を守るために知っておくべき知識とは?

大きく変わった、心臓病治療の今

寿命100年時代といわれていますが、人間が医療を介入せず普通に生きられる年齢は115歳ぐらいだと思います。

その年齢以降は脳が自然に衰えていきますから。

晩年の健康寿命というのは、平均寿命だと10年ぐらいの開きがありますから、

そういうふうに考えると本来人間は、100歳から105歳ぐらいまでは普通に元気にいられるのではないかと思いますね」(天野さん、以下「」同)

 30年前なら80代で心臓手術をすることはあり得なかったが、

今は90代でも心臓手術を行って回復する時代を迎えたと、天野さんは語る。

心臓手術を受けたことで、健康と若さを取り戻す高齢者は多いというのだ。

「健康寿命が延びたことに加え技術革新もあり、80歳を超えての手術が可能になりました。

私は患者さんの負担をできるだけ減らすため、『はやい・うまい・やすい』をモットーにしています。

手術時間が長くなるほど出血も輸血も多くなり、患者さんのコンディションを悪くするため、素早く手術を終わらせることが手術の基本です。

30年ほど前と比べ、今は技術の進歩などにより、手術時間を大幅に短縮できるようになりました

 かつては、そのときを乗り越えることに重きを置いた手術が多く、

一度目の手術後に再手術や再治療が必要とされたが、

今では手術で使う人工弁や、バイパス手術のときに患者の体から採取して使う血管も耐久性のあるものを使うようになり、“手術の賞味期限”を延ばしているという。

「今は、一度手術をして心臓の機能を取り戻せば、その後、再手術を受けなくても元気に寿命を全うできます。

実際、心臓手術を受けた後、心臓が元気になったことで、肌ツヤがよくなったり髪の毛が黒くなったりする人も。

心臓のトラブルに対する不安から解放され、海外旅行を楽しんでいる方もいます」

高齢化時代に心臓血管外科医が注目する「足の血管」治療

写真/アフロ

 高齢化が進むこれからの時代、心臓血管外科の医師として注目すべきは、「足の血管」の治療だと天野さんは語る。

「たとえば糖尿病などが原因で動脈硬化が進み、足の血管が詰まってしまうと『慢性閉塞性動脈硬化症』や『末梢動脈疾患』などが起こります。

血流が悪くなって足先まで酸素や栄養を十分に送れなくなるために、痛みで歩行困難になったり、重篤化すると壊疽(えそ)を起こして下肢を切断しなければならないことにもなります。

これからさらに高齢化が進むと、こういった足にトラブルを抱えた患者さんが増えるのは間違いありません。

最近は、足の血管の治療に対するさまざまなアプローチが考えられ、動脈硬化の狭くなった血管があればバイパスやステントを入れるなどの治療が行えます」

良い医者・病院の探し方

 このように、手術、治療の技術は進んできているが、実は心臓病の治療や手術の技術は、病院によって大きな格差があると、天野さんは語る。

「しっかりした病院を選ぶには、心臓血管外科では年間手術100例の病院を探すことがポイントです。

医師の技術の格差はものすごく大きいので、より良い病院と医師を選ぶことが、命を守ることにつながるのです」

 良い病院、医師とは? 天野さんは、こう続ける。

「外科と内科ともにひとつの目安となるのが、症例数と治療実績です。

さらに私は、その病院の施設長が、自ら年間250例以上の手術を執刀しているかどうかが重要だと考えています。

ですが、日本でその症例数をクリアしている心臓血管外科医は15人程しかいませんので、心臓手術を年間100例以上行っていて、

しっかりとしたエビデンスに基づいた治療を行っている病院を探すことが重要です。

 患者に負担をかけないよう手術を早く終えられる腕を持ち、合併症など手術後のトラブルをあまり作らない。そこに自信を持っている、責任を感じている医者を選ぶことですね」

 腕の良い医師に巡り合うことは、患者側の切実な希望だが、具体的にはどのように探したらよいのだろうか──。

「名医のランキング本を活用するとか、あとはインターネットサイトの患者紹介の『ベストドクターズ』など、いくつかありますが、そういうものを使ってもいいと思いますよ。

もうひとつ確実なのは、職員の評判じゃないでしょうか」

 安易に手術したがる医師には気をつけるべきだという。

「手術は基本的に一度しかできないと考えるべき。

再手術は長い期間を空けないとリスクが高くなりますから。

医師が、手術後の生活や体の負担まで考えているかどうかは見極めのポイントだと思います。

外科医が手術をしたがる空気を出してきたら要注意、内科医のきちんとした診断を仰ぐことが大事です」

セカンドオピニオンのすすめ

写真/アフロ

 治療に悩んだ場合、同じ病院の「別の科」や他院でセカンドオピニオンを受けることを勧める。

「内科で診察を受けていたなら外科で、など違う科で受診することもありです。

別の病院でセカンドオピニオンを仰ぐ場合には、それを極端に繰り返すと、ウィンドーショッピングみたいになってしまい逆に迷ってしまうので注意が必要ですね」

 また、セカンドオピニオンを仰ぐのは、症状が軽い段階で行うことが大事。

診断を受け、さらに詳しい治療や高度な治療が必要との診断を受けた段階で、それも症例数の多い病院で受けることを推奨している。

「症例数の多い病院は、患者さんがほかの病院でセカンドオピニオンを希望するケースも、ほかの病院の患者さんが受けに来るケースもあるため、手順に慣れています。

反対に、セカンドオピニオンを嫌がる病院は、安心して治療を任せられないと判断していいでしょう。

一番大事なことは、重症化する前に受けること。違う治療を提案された段階で受けるようにしましょう」

医療事故から身を守るには?

 近年、相次ぎ発覚している医療事故から身を守るためにも、手術を決断するまでに、本当に身を任せられるのかどうかを見極める必要がある。

その見極めのひとつの基準になるのが、「リスクスコア」の説明があるかないか。

 リスクスコアとは、1~10万例ほどの患者分析した解析モデルで、患者の状態によって手術の危険度がどの程度かを示す指数だ。

どの治療を受けたらどの程度のトラブルを生む可能性があるかを事前に知ることができる。

「医師がリスクスコアを提示しながら、治療の詳しい内容、期待される結果や予後について適切な説明を行っているかどうか。

実際のデータは手術をしてみないとわかりませんが、リスクスコアを患者さんに提示して説明するには、

術前にしっかりした検査を行い、適切な診断をしたうえで、その患者さんに適した治療まで提示できる幅広い知識と経験を外科医が持ち合わせていなければなりません。

ですから、リスクスコアを提示して適切な説明を行う医師は、それだけ信頼できる手順を踏んでいると判断できます。

 逆に、リスクスコアの提示がない医師や病院は、しっかりした検査をやっていなかったり、勉強が不十分であることが考えられます。

ただ単にリスクスコアを提示するだけでは不十分です。体の臓器別に状態をこまかく説明して、起きうる手術や合併症のリスクを、患者さんが理解するところまで説明しているかどうかが重要です。

もしわかるまで説明してもらえないなら、病気が待ったなしの状況でない限り、焦って手術に踏み切らない方がいいでしょう。

手術の予定日が決まっても、いつでも手術をやめることができる、信頼できる病院を選択してください」

撮影/疋田千里

天野篤先生

■天野篤(あまの・あつし) 1955年生まれ。埼玉県出身。心臓血管外科医。順天堂大学医学部附属順天堂医院院長。日本大学医学部卒業後、医師国家試験合格。関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)、亀田総合病院、新東京病院などを経て、2002年、順天堂大学医学部心臓血管外科教授に就任。2012年2月、東京大学医学部附属病院で行われた天皇陛下の心臓手術(冠動脈バイパス手術)を執刀。2016年4月より、順天堂大学医学部附属順天堂医院院長。心臓を動かした状態で行う「オフポンプ術」の第一人者で、これまでに8000例を超える手術を執刀し、98%以上の成功率を誇る。


韓国に対する「特別扱い」の終了:「逆切れ」している場合ではない。メッセージはわかっているはず。

2019-07-19 15:19:14 | 日記

日本政府は、この度、韓国に関する輸出管理上のカテゴリーを見直すとともに、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の輸出などについて、包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め、輸出審査を行うこととした。これらは、韓国の主力産業である半導体やディスプレイ製造に不可欠の素材であり、日本が市場の70~90%独占しているため、禁輸措置ではなくただの優遇措置解除ではあるものの、韓国のビジネスに影響必至と思われるため、韓国側が激烈な反応を見せている。

 

先日、某討論番組に出演して本件について話してきたところだが、改めて自分の思うところを書いておこうと思う。

 

1.   事実関係

まず、日韓マスコミの報道で誤解されている可能性が高いので改めて事実につき強調しておくと、韓国に対する禁輸措置ではない。

これまで、信頼関係に基づいて、輸出手続を包括的に許可していたのだが(ホワイト国指定)、この優遇措置を辞めて、ASEANや台湾など、一般の場合と同じく、普通の輸出手続きに戻すだけである。

今までが特別扱いだっただけだ。韓国には引き続きこれら物資を輸出することは可能である。ただし、通常の国の場合と同様、より輸出手続きには時間がかかることになるし、また、当然のことながら、審査過程で不適切な事案があれば差し止めもあり得よう。

 

この韓国に対する変更の理由として、日本政府は、①輸出管理の観点から不適切な事案があったこと、②旧朝鮮半島出身労働者問題の対応をはじめ、国家間関係の信頼が損なわれている状況にあることという2つの理由を挙げている。

 

たとえてみれば、いままで、友達だと思って、信用して鍵を渡していたけど、とても友達だとは思えないような行為ばかり繰り出してきて信頼関係もなくなったし、実際に、家を物色された形跡もあるので、鍵は返してもらって、一回一回、大丈夫か確認してからドアを開けることにしますね、ということである。家に入れないと言っているわけではない。「なぜ鍵を取り上げるんだ!」と逆切れして騒いでいる韓国に対しては、「胸に手をあてて良く考えてみたら」と言いたい。

 

韓国側の一方的な反日行為により、日韓関係が史上最悪といって良い状況にあるのは周知の事実だ。この1年だけでも、慰安婦財団解散、旭日旗事件、レーダー照射事件、国会議員の竹島上陸、天皇陛下に対する無礼発言、極めつけは、旧朝鮮半島出身労働者判決に関する韓国政府の不誠実極まりない対応と、「信頼関係がなくなった」と言われる心当たりは山のようにあるだろう。

 

特に、旧朝鮮半島出身労働者問題については、この8か月の間、日本政府は一貫して、韓国政府が解決に向け責任ある対応を取らないのであれば、相応の措置を取らざるを得ないと公言してきたところであり、韓国政府が慌てふためいているのは怠慢そのものだと思う。

 

日本なら、「蹴ろうが殴ろうが、何もしてこない」とたかをくくってきたのだろう。しかし、もはや、日韓関係は新たなフェーズに入った。以前は、経済力の面で圧倒的に強い日本と弱い韓国、過去の韓国併合に関する贖罪意識などから、韓国からは何をされても多めに見るというのが日本の態度であったし、それを韓国は等閑視してきた。韓国の傍若無人振りは日本が甘やかしてきたツケともいえる。しかし、今や韓国と日本は一人当たりGDPはほぼ同じの対等な国同士である。韓国は立派に成長したのだ。日本としても、「子供扱いは辞めて、大人の付き合いをさせて頂きます」ということである。

 

なお、参議院選挙対策だから、参議院選挙が終わったら日本政府の態度も軟化するだろうといった無責任の報道が韓国側で見られるが、大きな誤解だと思う。今回の措置は、実際に輸出管理上の懸念があるから責任ある国際社会の一員として取っているものであり、また、日韓間の信頼関係が損なわれた現状を踏まえて取ることとしたものであり、選挙対策などではない。もはや「韓国だからといって一方的に我慢するとか多めにみるという特別待遇は今後一切辞めた」という日本の宣言だと思ってもらった方が適切だと思う。

 

日本政府の立場を改めて引用しておくと、以下のとおりである。

 

「日本を含む各国は、国際合意に基づき、安全保障のために軍用品への転用が可能な機微技術等の輸出について、実効性のある管理が求められており、そのために必要な見直しを不断に行うことは、国際社会の一員として当然の義務である。

 

これは、韓国側の輸出管理制度に不十分な点があり、従来は、日韓の意見交換を通して、韓国側が制度や運用を改善するとの信頼関係があったが、近年は日本からの申し入れにもかかわらず、十分な意見交換の機会がなくなっていたこと、

 

また近時、今回輸出許可を求めることにした製品分野において、韓国に関連する輸出管理を巡り不適切な事案が発生している。

 

こうした状況の中で、日韓関係全体について、これまで両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上で、旧朝鮮半島出身労働者問題については、G20までに満足する解決策が示されず、信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない。

 

このため、国際的な信頼関係を土台として構築されている輸出管理制度について、韓国との信頼関係を前提として取り組むことが困難になっていると判断し、従来韓国に対して実施してきた優遇措置をやめて、他国と同様の通常の輸出管理上の扱いに戻すこととした

 

今回の見直しは、安全保障を目的に輸出管理を適切に実施する観点から、その運用を見直すものであり、「対抗措置」ではない。」

 

何よりも、実際に、日本から渡された機微物資が不適切に扱われた事案があるという。北朝鮮に流出したことを示唆させるものである。先般のレーダー照射事件においても、一体韓国が何をしていたのかは明らかになっていない。北朝鮮の代理人かと疑わしくなる文在寅政権においては何があってもおかしくない気もする。

日朝首脳会談を呼び掛けている日本としては、言いにくいところもあるのかもしれないし、韓国に対する「武士の情け」なのかもしれないが、一部韓国国民が不買運動とまで言っているのだから、韓国の善良なる一般国民の反日感情をこれ以上高めないためにも、公表してしまったらいいのではないか

 

2.   WTO上もワッセナーアレンジメント上も何の問題もない。

韓国政府は、貿易ルールの恣意的な運用やWTO違反の可能性を指摘しているが、全くあたらない。むしろ、WTOやワッセナーアレンジメントといった既存の国際ルールの中で日本は然るべく対処している。

 

まず、WTOとの関係ではGATT21条において、軍事転用可能な機微物質の輸出管理は、安全保障のための例外として明確に規定されており、日本や韓国を含む各国は、これに基づき長期にわたり輸出管理を行ってきている。

 

今回の見直しは、国際合意に基づいた輸出管理の不断の見直しの一環として、従来韓国に対して実施してきた優遇措置をやめて、他国と同様の通常の輸出管理上の扱いに戻す内容であり、韓国向けの禁輸措置ではない。

 

輸出管理制度上、ある国に対して包括的輸出許可といった特別の許可を与えるかどうかは、国家の裁量に任されており、その判断は国家間の信頼関係に基づく。たとえば、日本は、包括的輸出許可をしているいわゆるホワイト国は27か国であるが、EUの指定するホワイト国は8か国であり、そもそも韓国は入っていない。

 

ちなみに、韓国と異なり極めて友好的な台湾について日本はなぜ、台湾をホワイト国にしていないかといえば、中国との取引が余りにも多いからである。同じく、北朝鮮に機微物資を流出させる恐れがあるのであれば、韓国をホワイト国に指定し続けることができないのは当然ではないだろうか。少なくとも、ASEANや台湾と比べて韓国が優遇される理由はないだろう。

 

3.メッセージはクリア:   旧朝鮮半島出身労働者問題は韓国政府自身が解決せよ。

日韓報復合戦になり、日韓関係が壊滅的になることを懸念する声が上がっており、これはもっともなことである。が、日本政府は理由があって、今回の措置をとっている。韓国に対しては、極めてクリアーなメッセージを出したということだ。具体的には、①旧朝鮮半島出身労働者問題について、韓国政府自身が責任をもって解決せよということ、及び②おそらく北朝鮮に対する流出など不適切な行為を辞めさせよ、ということである。

 

 これらにつき、韓国政府が然るべく対処をすれば、日本政府側から、第二段が発動されることはないと思う。なぜなら、日本側が今回の措置をとることとなったのは、実際に不適切な事案があることと韓国との信頼関係が特に旧朝鮮半島出身労働者問題について損なわれたことにあるからだ。

 

報復合戦などと息巻く前に、韓国政府がやるべきことをやれば良いのである。

 

韓国側の主張でいつも大変違和感を感じている点がある。韓国の司法の判断に韓国政府は従わざるを得ず、したがって、日本側(日本企業)は、韓国司法の判断を受け入れるべき、という「ロジック」である。

 

私も長く国際法を担当してきたが、はっきりいって、国際法の基礎中の基礎もわかっていない常識のない主張だと言わざるを得ない。

 

たかが韓国の一国内機関に過ぎない韓国の国内裁判所が、国家間の法的約束である条約上の義務をオーバーライドすることはできない。逆に聞きたいが、日本の裁判所が、何かの判断を出したら、韓国はハイハイと言ってそれを聞くだろうか。

 

はっきりって、韓国の国内裁判所が何をどう判断しようと、日本の知ったことではない日韓間の条約上の義務及び合意は何らの影響を受けないのであり、韓国政府は、条約上の義務履行について責任を負い続けることは当然である。こんな国際法の基礎中の基礎をわきまえていない態度には正直脱力だ。

 

 この場合、韓国政府が韓国の司法に従わざるを得ない国内事情が生じたことは事実だろうが、それは、あくまでも韓国の国内の勝手な事情である。日韓間の合意事項が変わるわけではない。韓国政府は、日韓間の合意を守るべく、司法判断に対しては国内で解決措置を取るしかない。日韓間の合意は、議事録にも明確になっているように、日本側は「徴用工」に対して個別保障をすることを申し出たにも関わらず、韓国政府が自分が徴用工は対処するのでその分も含めて一括で資金をくれと要求したために当時の韓国国家予算の数倍からなる一括賠償となったものであり、それが不足だと「徴用工」から訴えられたのであれば、韓国政府自身が支払いをすべきものである。または、当該日本の「賠償金」で飛躍的発展を遂げた韓国企業が応分の支払いをするということも感がられようが、日本側に負担を求めるのは「お門違い」というものである。

 

4.   タイミングは今一:一般の韓国国民を反日に駆り立てる危険

 以上申し上げた上でだが、今回の措置を取るタイミングについては正直疑問だと言わざるを得ない。文在寅政権は、極めて特異な革命政権だ。対日外交の破壊的失敗のみならず、北朝鮮に対する異様な親近感や共産主義的ドグマに基づく経済運営による経済失敗などで、まっとうな韓国国民は、文在寅政権に対する疑問符をつけていたところである。対日政策についても、余りにも一方的な反日行為が対日関係を損なってきている事実につき、懸念する声は多かった。いわば、全うな韓国国民の意見として、文在寅政権の対日姿勢を改めるべきという方向の力は一定程度働いていた

 

しかし、今回のタイミングとやり様が今一だったせいで、一般の韓国国民を反日に駆り立て、結果として、文在寅大統領の反日姿勢を利してしまう危険がある。

 

 全ては因果応報とはいうものの、G20で韓国の希望にも関わらず首脳会談がなかった上に、文在寅大統領の執念でトランプ大統領を訪韓させたことが背景となって(むろん米朝首脳の邂逅はあくまで米朝間で決まったことではあるものの)、板門店での米朝首脳会合がありトランプ大統領が戦時境界線を金正恩委員長と手を取り合って超えるというイベントがあった直後に、報復措置と誤解される措置を取る必要はなかったように思う。折しも、通常でも反日の機運が高まる815日は目前だ。G20前に気まずい状況を作りたくなかったという事情もわかるし、仲裁裁判呼びかけの期限がたまたま最近だったということもわかる。でも、もっと前かせめて815日以降か、そして、何より、韓国政府の態度を改めさせることが目的なのであれば、「こうこうこういう事情なので、このような措置を取らざるを得ない」と然るべく説明を韓国側に対して行い、それを公表した後に、行えば、まっとうな常識ある韓国国民は(それでも限界はあるが)心中理解はしたものと思う。

 

 日韓間の報復連鎖といった事態になれば、日韓関係は壊滅的状況になるだろう。それは、これだけ地理的に近接した隣国同士としてお互いの国益に叶わないことだ。ただ、日韓のこれまでの歴史を振り返ると、どこかの時点で、結構ハードなリセットはいずれかの時点で必要となっただろう。今がその時なのだとは思うが、できれば、然るべくリセットは行いつつも、将来の日韓関係に過度な禍根は残さないようにするべきだとも思う。両国の地理関係は永遠に変わらない。お互いどのように思おうが、引っ越しはできないのだから。また、過去の歴史の問題からくるいわば精神分析学上の心理的葛藤を別にすれば、戦略的には本来は日韓は利害を一定程度は共有できる関係にある。米国を介する同盟国同士でもある。実際問題は、多分難しいと思うが、韓国政府は、報復合戦などという前に、旧朝鮮半島出身労働者問題について誠実な対応を行うことである。そうすれば、日本側から第二弾を打つことはないと思う。まずは、仲裁に応じたらいい


北朝鮮への「横流し疑惑」で、韓国半導体産業の終わりの始まり

2019-07-19 13:28:45 | 日記

北朝鮮への「横流し疑惑」で、韓国半導体産業の終わりの始まり

7/12(金) 17:45配信

 

 韓国の半導体産業が衰退のとば口に立った。

「横流し疑惑」で開いたパンドラの箱から「地政学リスク」が飛び出したからだ。韓国観察者の鈴置高史氏が対話形式で読み解く。

「寸止め」の輸出管理強化

――世界の半導体産業は大変なことになりましたね。

鈴置: それが「大変なこと」にはなっていないのです。韓国が得意とするのがメモリー、つまり情報を記憶する半導体です。ところが、その2大アイテムであるDRAMもNAND型フラッシュメモリーも、国際的な価格は落ちついています。

「北朝鮮に核関連物質を横流しする怪しい国」と日本政府が韓国を認定しました(「日本に『怪しい国』認定された韓国 文在寅は『受けて立つ』というが、保守派は猛反発」参照)。

 7月1日に韓国向けのIT素材の輸出管理を強化すると発表したのですが、それ以降も半導体市況に特段の動きは見られないのです。

――「半導体価格が急騰。世界は混乱に陥って日本への非難が高まる」と思っていました。

鈴置: 韓国紙の日本語版や日本の左派系紙を読んで、そう思い込んでいる人が多い。恐ろしい誤解です。

 今、半導体は不況の真っ最中。一年前と比べ、メモリーの価格は半値になっていました。市場にあふれているので、日本が輸出管理を強化しようが、ユーザーは焦って手当てしようとはしません。だから市況が安定しているのです。

 サムスン電子のバランス・シートを見ると、2019年3月末時点の在庫資産は31兆4560億ウォン。1年前と比べ8・8%増です。相当部分が売れ残ったDRAMと見られています。

 半導体価格が上がらないもう1つの理由は、日本の規制強化が「寸止め」になっていることです。

「日本の輸出規制、韓国では『単なる報復ではなく、韓国潰し』と戦々恐々」でも書きましたが、韓国企業がメモリー生産に使っている素材は管理強化の対象ではないのです。

 確かに輸出管理を強化した3品目の1つ、レジスト(感光材)は半導体の製造に使います。しかし日本政府が管理を強化したレジストは極めて高品位のもので、メモリー製造用ではありません。

 だから、仮に日本からレジストの輸入が減っても韓国メーカーは直ちには困らない。輸出強化の対象となったエッチングガス(フッ化水素)も同様で、これに関してもメディアが大騒ぎするほど、韓国の半導体メーカーは困らないそうです。

「急所のすぐ横」を狙った

――なぜですか? 

鈴置: 日本製ほど純度が高くない中国、台湾、韓国製のエッチングガスも使えないことはない、のだそうです。もちろん日本製を使った時ほどの収率は出ないと言いますが。

 朝鮮日報が「日本は半導体の『急所のすぐ横』を狙ったようだ」(7月11日、韓国語版)で指摘しています。

 サムスン電子の株価は7月1日から8日まで、4日を除いて下げました。しかし、7月9日以降、12日まで戻しています。「すぐには大事に至らない」との認識が広がったからでしょう。

 朝鮮日報の先の記事によると、有機ELの製造に使うフッ化ポリイミドも、日本が輸出管理を強化するのは、サムスン電子がスマホを作る際には使わない品目だそうです。だから見出しに「急所のすぐ横」とあるのです。「寸止め」です。

――では、韓国に実害はない……。

鈴置: 短期的には。ただ、中長期的には韓国には、恐ろしい未来が待ち構えていると思います。先ほど「寸止め」と言いました。日本の突き出した剣の切っ先は韓国の喉元で止まっています。韓国が日本に強気に出たりすれば、切っ先は喉に突き刺さるでしょう。

 例えば、報復と称して日本にさらなる危害を加えれば、日本政府が輸出管理を強化する対象に、DRAM用レジストを加えるかもしれません。

 

韓国の2つの「半導体都市」

能力増強する米・日企業

――そうなったらDRAMが世界的に不足して……。

鈴置: 先ほど言いましたように、DRAMは今、余っているのです。それにDRAMを作るのは韓国企業だけではありません。確かにサムスン電子が46%、SKハイニックスが26%と高い世界シェアを誇っています。

 ただ、3位の米マイクロン・テクノロジー(Micron Technology)も21%のシェアを持っています。主力の広島工場(広島県東広島市)の生産能力の増強に動いています。

 6月11日に新工場棟の完成式典を開いて「サムスンを追い掛ける」と宣言しました。日経の「マイクロン、広島工場を1割拡張 次世代DRAM量産」(6月11日)が詳しく報じています。

 もう1種類のメモリー、NAND型に関しても東芝メモリ・ホールディングスが2020年の稼働を目指し、岩手県北上市に新工場を建設中です。

 日経産業新聞の「東芝メモリ、上場へ勝負手 売上高2兆円狙う」(6月25日)は、サムスン電子に真っ向勝負を挑む姿を描いています。

 東芝メモリのNAND型の世界シェアは約20%。サムスン電子の約33%に続く2位です。なお、SKハイニックスは5位の11%前後です。

 DRAMにしろNAND型にしろ、米・日の会社の供給能力が増す最中ですから、品不足で世界が困るなんてことはすぐには起きません。

事実を無視する左派系紙

――「日本経済に打撃」と書く新聞があります。

鈴置: 毎日新聞は「売り上げが減るフッ化水素など日本の素材メーカーが打撃を受ける」と報じました。「クローズアップ 対韓輸出規制 徴用工、通商で揺さぶり 資産売却、期限迫り」(7月2日)です。

 でも、韓国の半導体メーカーへの輸出が減ったとしても、その分、増産する日本や米国の半導体メーカーが買ってくれるのだから同じことです。

 東京新聞の「【核心】対韓輸出規制 保護主義 日本にも痛み」(7月2日)や、朝日新聞の「韓国半導体危機、日本に余波 輸出規制、韓国『在庫多くて数カ月分』」(7月4日)も「返り血」を心配しました。

 日本の半導体製造装置メーカーは輸出先を失う。韓国の半導体を輸入していた日本の会社も部品不足で困る、との理屈です。

 しかし半導体製造装置は、韓国企業の衰退の代わりに能力を増強する日・米の企業に売れることになります。韓国製半導体のユーザーは日・米メーカーから調達することになるでしょう。

 産業の実態や変化を調べずに、「大変なことになる」「安倍が悪い」と書くのは無責任極まりないと思います。

韓国から逃げだすユーザー

――日本政府は輸出管理の強化を武器に、韓国2社のシェアを落としていくのですね。

鈴置: 日本政府が誘導する必要はないかもしれません。なぜなら、韓国2社の半導体を買っていた世界の会社が、調達先を多様化して日・米の半導体メーカーへの注文を増やすであろうからです。

 いつ供給不安に陥るか分からない会社を頼りにはできません。

日韓の摩擦がこれだけ有名になったのですから、もし韓国企業に依存し続け半導体の手当てに失敗したら、株主から訴えられてしまいます。

 世界のビジネスマンは米政府の動きに注目しています。もし、日本の輸出管理の強化に米国が口を挟むなら、今回の事件は日本の暴走と見なされたでしょう。

 しかし、米国は10日たっても動かない。そこで「日本は米国にお墨付きをもらっているのだな」と世界の関係者は見なし始めました。

 7月10日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官はポンペオ(Mike Pompeo)国務長官に電話し、日本を非難しました。

 韓国外交部の発表によると「日本の措置は米国企業にも世界の貿易秩序にも悪影響を与える」と訴え、これに対しポンペオ長官は「理解する」を表明したそうです。要は「一応、話は聞いた」ということでしょう。

 韓国政府は高官も相次ぎワシントンに送っています。

が、米国は日本の措置に見るべき反応を示していません。国務省も「日韓は共に米国の友人であり、同盟国だ」と原則論を述べるばかりです。

「米国は韓国を助けないな」と見た半導体のユーザーは、韓国の半導体産業の将来に疑問を持って、調達先を韓国から日・米に切り替えるでしょう。

 すでにその動きが表面化しています。日経は「対韓輸出規制、広がる影響 VAIOは代替調達検討」(7月9日)で、ソニーから分社したパソコンメーカーのVAIO(バイオ、長野県安曇野市)が半導体を韓国以外から調達するよう検討し始めたと報じました。

撤収の前に焦土化

――「米国が口を挟まない」だけで、「脱・韓国」が始まるのですか? 

鈴置: 安全保障上からも韓国が米国に見捨てられることを示唆するからです。半導体は安全保障に直結する戦略製品です。普通の商品ではありません。

 DRAMの約72%、NAND型の約44%を韓国の2社で作っています。これを米国が許してきたのも、韓国が忠実な同盟国だったからです。

 ところが今、米韓関係の雲行きが相当に怪しくなっている。

文在寅(ムン・ジェイン)政権は国際社会がこぞって経済制裁を科している北朝鮮に堂々と援助を始めました(「文在寅は金正恩の使い走り、北朝鮮のミサイル発射で韓国が食糧支援という猿芝居」参照)。

 妙な自信を持った韓国は日本にはもちろんのこと、米国に対しても「何するモノぞ」とばかりに高飛車に出ているのです(『米韓同盟消滅』第3章「中二病にかかった韓国人」参照)。

 一方、トランプ(Donald Trump)政権は北朝鮮を非核化するためには在韓米軍の撤収、あるいは米韓同盟の廃棄までも取引材料とする勢いです(「ついに『在韓米軍』撤収の号砲が鳴る 米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った」参照)

 同盟は維持しても在韓米軍が撤収する、あるいは削減するだけで、朝鮮半島は不安定化します。そんな国の企業に、米国が戦略物資の半分を作らせるでしょうか。

 麗澤大学の西岡力・客員教授は米国の安全保障の専門家から「我々がこの半島から撤収する時は、焦土化して引き上げる」と聞かされたそうです。

 焦土化とは物理的に燃やしてしまう、ということではなく経済的な資産を破壊する、との意味です。同盟を廃棄した後、つまり中立化した韓国は中国の衛星国となる可能性が極めて高い。

 中国の衛星国に世界のメモリーの半分を作らせるわけにはいかないと米国は考えるでしょう。米国の考えを見てとった半導体ユーザーは「今から購入先を変えておこう」と動くと思います。

傲慢な日本と強引な米国

――日本の輸出管理強化の背景には米国がいる……。

鈴置: 安全保障の専門家にはそう見る人が多い。1980年代に圧倒的な強さを発揮した日本のメモリーが一気に衰退し、韓国メーカーに市場を奪われたのを思い出して下さい。

 米政府はありとあらゆる手を使って日本に圧力をかけました。日本は輸出価格を引き上げさせられたうえ、自国市場での外国製半導体のシェアを20%に引き上げる、といった約束を飲まされました。

 米政府はこれにより日本メーカーのシェアを落としました。その隙を狙って韓国企業が急伸したのです。

――米国は強引だったのですね。

鈴置: 当時の、バブルの頃の日本や米国の空気を知らない人はそう思うでしょうね。日本は多くの工業製品で米国製品のシェアを奪い、飛ぶ鳥落とす勢いでした。

 日本人の鼻息も荒く、今の中国人や韓国人を見る感じでした。日米経済摩擦が激しくなる中で書かれたのが『「NO」と言える日本』(1989年1月)です。

 著者はソニーの創業者の盛田昭夫氏と、当時は衆議院議員だった石原慎太郎氏。この本にはこんな一節もあったのです。

・仮に日本が、半導体をソ連に売ってアメリカに売らないと言えば、それだけで軍事力のバランスががらりと様相を変えてしまう。そんなことを考えるのならアメリカは日本を占領する、とあるアメリカ人たちは言っています(14―15ページ)。

 もちろん、日本はソ連に半導体を売りませんでした。米国は日本を再占領もしなかった。でも「米国離れする日本」によるメモリーの独占は阻止したのです。

「米国の陰謀」から目をそらす

――韓国人は「米国の陰謀」に気づいているのでしょうか? 

鈴置: 「日本の陰謀」に関しては語り始めました。サムスン電子はメモリーからシステムLSI(大規模集積回路)など、非メモリー分野に経営の重心を移そうとしています。

 日本が今回、輸出管理を強化するレジストは「メモリー製造用ではなく、システムLSIを作るのに必要な水準の品目である」と韓国各紙は書いています(「日本の輸出規制、韓国では『単なる報復ではなく、韓国潰し』と戦々恐々」参照)。

 要は、日本の措置はサムスン電子がライバルに育つのを阻止する狙い、と韓国の専門家は見始めたわけです。ただ、「米国の陰謀」とまで報じたメディアは、ほとんどありません。

 そう書いてしまえば、今回の日韓半導体戦争で米国が韓国の味方をしてくれない、と書くのと同じになってしまう。さらには安全保障面でも「米国に見捨てられる」ことを意味します。「もっとも見たくない現実」から、韓国人は目をそらしたいのでしょう。

ロケット砲の射程に入った主力工場

――次の政権が保守派に戻ったら? 

鈴置: 仮にそうなっても、半導体の世界での「韓国離れ」は起きるでしょう。

 北朝鮮が最近、300ミリの8連装ロケット砲を配備した模様です。5月4日、北朝鮮がロシア製の「イスカンデル」と見られる弾道ミサイルを試射しました(「文在寅金正恩の使い走り、北朝鮮のミサイル発射で韓国が食糧支援という猿芝居」参照)。

 その時、同時に撃ったのが300ミリのロケット砲と思われます。射程は200キロ超で、GPSによる精密誘導が可能とされています。在韓米陸軍の主力基地である京畿道・平沢(ピョンテク)と隣接する烏山(オサン)空軍基地を攻撃するのが主な目的です。

 ただ、この300ミリロケット砲の射程圏にサムスン電子の主力工場である平沢工場と、SKハイニックスの主力の清州(チョンジュ)工場(忠清北道)が十分に入ってしまうのです。

 米国は北朝鮮を非核化するために、いざという時は中国との国境沿いの核基地に対する先制核攻撃も辞さない構えです(「米国が北朝鮮を先制攻撃するなら核を使うか? その時、韓国は? 読者の疑問に答える」参照)。

 その際、北朝鮮は軍事境界線沿いのロケット砲・長距離砲部隊で反撃します。ロケットや砲弾は迎撃ミサイルでは撃ち落とせません。

 韓国の、世界の主軸メモリー工場はかなり危ない場所に立地しているのです。政権が保守か左派かには関係なく、韓国の2社は半導体ユーザーにとって「危険な会社」なのです。

――米国が北朝鮮を先制攻撃するとは限りません。

鈴置: :しかし、この「危険な2工場」を放置しておけば、つまり西側の脆弱性をそのままにしておけば、北朝鮮に対する威嚇が効かなくなります。北朝鮮は「先制攻撃したいならやってみろ。世界中でメモリーが足りなくなるぞ」と言えるのです。

半導体の衰退は韓国の衰退

 それに保守といっても、韓国の保守は中国の顔色を見る人ばかりです(『米韓同盟消滅』第2章「『外交自爆』は朴槿恵政権から始まった」参照)。

 保守派の韓国だって中国の衛星国に戻っていきます。

そうなればメモリー生産の半分を中国がコントロールすることになります。

 世界の半導体ユーザーも米政府も、それは望まない。韓国以外の場所で、韓国資本以外が半導体を製造する体制を構築したいと思うのは当然です。

 今回の日韓摩擦を期に、韓国の半導体産業が衰退の道をたどる可能性が出てきました。

半導体の輸出は韓国の全輸出の20%を占めます。サムスン電子の時価総額は韓国市場全体の20%以上。半導体産業の衰退は韓国の衰退に直結します。

――日本政府の今回の措置は韓国政府を攻めるのではなく、韓国の基幹産業を攻撃するのが目的なのですね? 

鈴置: 少なくとも結果的にはそうなりそうです。文在寅政権は日本にどんなに痛い目にあわされようと、譲歩するつもりはないでしょう。結局、韓国の半導体産業が身代わりに痛めつけられるわけです。

 ただ、日本がそこまで図ったかどうか。日本政府にそんな戦略性があるとは考えにくい。でも、米政府なら、そこまで謀るはずです。

――つまり、今回の事件の黒幕は米政府? 

鈴置: そう見えます。証拠は持っていませんが。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年7月12日 掲載