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韓国、「第4次産業革命」人材不足と高失業率「日本頼み復活」

2017-10-30 21:31:26 | 日記

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

2017-10-28 05:00:00

韓国、「第4次産業革命」人材不足と高失業率「日本頼み復活」

日本の就職率好転を羨望

高学歴国の人材不足とは?

 韓国の「日本詣で」が再び始まった。若者の高い失業率解消の切り札として、日本への就職依頼を強めているからだ。「反日」で盛り上がっていたときは金輪際、日本のお世話にはならないと高姿勢であった。

こういう経緯もあって、すでに期限切れの日韓通貨スワップ協定交渉では沈黙している。

そこで先ず、若者の就職問題にかこつけ、民間レベルで「関係復活」の糸口にしようという狙いだろうか。

 通貨スワップ協定と言えば、中国との間に結んでいる協定が、10月10日の期限切れ寸前に3年間の延長へ持ち込んだ。

「政経分離」という大義により、中国が延長に合意したもの。

中国は、IMF(国際通貨基金)に人民元の国際化を約束している手前もあり、韓国との通貨スワップ協定の延長に合意したのが真相だ。

 韓国は、中韓通貨スワップ協定の延長実現後に、日本との関係強化に動き出している。

冒頭の若者の就職問題で、日本へ協力を求めているからだ。一方で韓国は、「第4次産業革命」に必要な人材不足が明らかになってきた。

若者の高い失業率問題と同時に、AI(人工知能)やロボットを操作できる人材がいないという新たな問題に直面している。

大学進学率70%の韓国で、製造業の現場で通用する技術者がいないとは、摩訶不思議である。韓国の工学部教育はどうなっているのか。こういう疑問が湧くのだ。

日本の就職率好転を羨望

先ず、日本への就職依頼の問題から見ていきたい。

 『中央日報』(10月20日付)は、次のように報じた。

 (1)「全国経済人連合会(全経連)と日本経済団体連合会(経団連)は10月20日、東京経団連会館で『第27回韓日財界会議』を開き、両国の異なる雇用環境に共感し、これを解決するための共同事業を推進することにした。

現在、日本はアベノミクスと東京オリンピック(五輪)開催予定にともなう景気回復動向で雇用の需要は大きいが、少子化の長期化で人口が減少して働き手が足りない状況だ。

一方で、韓国は9月、若者の体感失業率が21.5%で、統計以来最も高い数値となった。

このような両国の問題解決のために、韓日経済界は来年春に韓国の若者を対象にソウルで日本企業が望む人材像などに関する公開セミナーを共同主催することにした」

 日韓の労働環境は、真逆の関係にある。日本は労働力不足であり、8月の有効求人倍率は1.52倍。

1974年2月以来の高水準である。

潜在経済成長率の約1%を上回る経済成長率を実現しているので、有効求人倍率が高くなって当然である。

韓国は、中央銀行の韓国銀行を初め、かねてからアベノミクスを高く評価してきた。

日本国内以上の高評価であった。韓国も同様の経済政策を行なえば、労働環境の改善が進むはずだが、文在寅政権は全くそういう関心を示さずにいる。

韓国は9月、若者の体感失業率が21.5%で、統計開始以来、最も高い数値となっている。

体感失業率とは、就職に備えてアルバイトをする者や学生も含めた失業率である。

2015年2月は12.4%であるから、現在の悪化ぶりは目を覆う惨状である。

これでは、対馬海峡を挟んだ日本の労働需給逼迫を見て、過去の高飛車な姿勢を忘れたように、揉み手をしてまでも低姿勢にならざるを得まい。

日本は今回の総選挙の結果、アベノミクスが認められた形である。

もし、民主党政権が続いていたとしたならば、どうなっていたか。景気回復は見られず、韓国のように若者の就職状況が厳しかったであろう。時の政権には一長一短がある。

長所(経済)が短所(モリ・カケ問題)よりも多ければ、その政権を持続させる選択が正しいだろう。

その意味で、日本の有権者は賢明であった。

安倍政権の持続は、日本経済が今後も順調であることを示唆するのだ。

「反安倍」のマスコミは、短所だけを取り上げていた。

(2)「許昌秀(ホ・チャンス)全経連会長は、開会の辞で『経済協力とスポーツなどソフトパワー分野、若い人材の養成と交流事業、少子・高齢化の解決法の摸索など3つの方向で両国の経済界が協力を強化することを提案したい』と話した」

 韓国側は、日本に対して3つの分野で協力を求めている。

1.経済協力とスポーツなどソフトパワー分野。

2.若い人材の養成と交流事業。

3.少子・高齢化の解決法の摸索。

 前記の3項目を見て、「あれっ」と驚かざるを得ない。

いずれも、韓国が直面する問題点ばかりである。

本来ならば、韓国政府が立案して実行すべきものである。

だが、文在寅政権は、かつての日本の民主党政権同様に、北朝鮮への人道支援など熱心だが、経済の個別具体論での動きが遅いのだ。

 1の経済協力は、日本側に何らかの支援を求めている。

過去には、重厚長大産業の技術を移転したが、今回も技術的な支援要請であろう。

韓国のAIやロボットの技術は完全に出遅れている。

だが、日本がここで義侠心を発揮しても、韓国は決して感謝しまい。

これまでの「反日」が証明している。感情的に行き違いになると悪口雑言の連発である。

今なお慰安婦問題でゴネ続けている。「少女像」を世界中ばらまいていることに現れているのだ。

 スポーツなどソフトパワー分野の協力も狙いは明らかだ。

明年の韓国での冬期オリンピックへの資金援助要請であろう。

日本企業に協賛金寄付の依頼だ。

あるいはオリンピック入場券の売りさばき協力である。

ともかく、日本から資金を引き出すことが目的であろう。

 2の若い人材の養成と交流事業は、韓国大学生の日本就職に向けて、日本企業が大いに門戸を開いてくれということだろう。

この問題も、裏で「反日」を操っている韓国政府の存在を考えると、日本が真面目に取り組んでも後で臍(ほぞ)をかむ思いがするだけだ。それほど、韓国は信頼感を失っている。

3の少子・高齢化の解決法の模索は、すでに下記の通り、日韓政府の間で打ち合わせが行なわれている。

これも、日本側の実施状況を韓国側に教えるだけの話で、日本には何のメリットもない。

 『中央日報』(10月20日付)は、「韓日、人口担当相会議、共同対応の必要性を確認」と題して、次のように伝えた。

 この記事では、韓国の少子化対策が日本に比べて、いかに遅れていたか。

韓国の担当大臣が、その旨を発言している。

日本は「1億総活躍担当相」を置いており、責任が明確になっている。韓国は、この点についても認識を改めたようだ。

 (3)「韓日両国の少子化解消対策は、似ている点が多い。

仕事と生活のバランス、青年層の経済的基盤の強化などに積極的に取り組んでいる。

しかし、大統領リーダーシップの後押しがない韓国とは違い、日本は安倍晋三首相が着実に推し進めている。

日本の合計特殊出生率も2014年1.42、2015年1.46と上昇している。

安倍首相の強い意志の象徴が人口問題を総括する『1億総活躍担当相』だ。

2015年に人口問題を担当する大臣を新設した。1億総活躍担当相の主な役割は50年後にも人口1億人を維持するというものだ」

 私は、率直に言って日本での安倍首相に関する冷静な評価が乏しいと思う。

「森友・加計」(モリ・カケ)問題というスキャンダラスな話で、全てを覆い尽くしてしまっているからだ。

外交問題から始まり少子化対策に至るまで、韓国に比べてパフォーマンスははるかに上を行っている。

むろん、欠点はあるだろうが、マスメディアはイデオロギーの立場を離れ、良い点を評価する度量の大きさを持つべきだ。

国民の方が、安倍政権へ客観的な評価を下しているのだ。

(4)「この日、韓日担当相会談をした朴凌厚長官と松山担当相は両国の少子高齢化対策を共有し、未来の人口問題への共同対応の必要性を確認した。

また、東アジアの人口問題解決のためのプラットホームを作り、中国など周辺国を合流させる案を進めることにした。

朴長官は『少子高齢化に対応するために両国の担当者らが持続的に会って議論していく』とし『日本政府が、少子化の原因と対策を簡潔に把握して集中していることを発見した。それが、今回の会議の最も大きな収穫』と述べた」

 韓国の朴長官は、次のように言っている。

日本政府が、少子化の原因と対策を簡潔に把握し、それに向けて政策努力を集中していることを知った。

それが、今回の会議の最も大きな収穫であると、今になって実にのんびりしたことを言っている。

韓国の合計特殊出生率は、1.01(2016年)と崖っぷちに追いやられている。

それにも関わらず、日本のような具体策が打たれなかった。行政の怠慢である。日本に比べて、問題意識が希薄なのだ。
 

高学歴国の人材不足とは?

韓国は、失業問題の一方で、AIやロボット操作の人材が不足という新たな問題が起こっている。

過大な失業者を抱えながら、新規部門の人材が足りないとはどういうことか。

政府の雇用対策が、量的な充足を優先して質的な対策をないがしろにしてきた証拠であろう。

企業自身が社内での人材教育を怠ってきた結果とも言える。日本から見れば、考えられないことの連続である。

 韓国政府の雇用対策は、非正規雇用の正規化と最低賃金の引き上げだけである。

これでは、「第4次産業革命」と言われる現在、必要な人材が不足して当然であろう。

産業構造の転換を見据えて、それにふさわしい人材は確保できるのか。そういう準備がされていなかった。

 『中央日報』(10月21日付)は、「韓国、第4次産業革命発の人材不足がくる」と題して、次のように報じた。

 韓国では、産業構造転換にあわせた雇用政策の存在しないことが、「高失業率と人材不足」という矛盾した問題を発生させている。

雇用問題を量的な側面で捉え、質的な把握がされていない結果であろう。

一体、韓国政府の役割はどこにあるのか。こういう問題の把握がゼロであることを証明している。

「反日」となると目の色を変えるが、雇用という地道な問題になるとお手上げで、日本にSOSを打ってくる。日本へ甘ったれている証拠だ。

 (5)「韓国は第4次産業革命に対する関心と熱気は相当高いが、世界経済フォーラム(WEF)の評価ではその準備度が世界25位にとどまった。

最も衝撃的な点は、新技術の人材不足事態がすでに表れている点だ。

李賢淳(イ・ヒョンスン)斗山グループ最高技術責任者(CTO)は、『産業現場の流れから第4次産業革命技術を従来の事業に取り入れたところ生産性が大きく向上した。

単純計算で国内全体に拡大適用すれば400万人の単純労働者が職場を失うという結論が出た』。情報通信技術(ICT)の発達で主要製造業に機械と装備を電子的に制御する『スマート工場』が普及した結果ということだ』

 AIとロボットの本格導入となれば、韓国では400万人の失業者が出るという。

だが、後のパラグラフで取り上げられるように、AIとロボット操作ができる人材がいないというのだ。

何とも不思議である。現状のままで推移すれば、AIとロボットの導入が遅れて、韓国産業の競争力は低下する。今、その瀬戸際にあるのだ。

 (6)「もう一つの問題は、『すぐに現場でスマートセンサー・ビッグデータ・人工知能のような新技術を扱う人材を確保できないという現実だ』。

企業の現場に毎日接する李氏の懸念するように、韓国は深刻な第4次産業革命発の求人難に直面している。

伝統技術に新技術を取り入れるのが第4次産業革命である。

実際、第4次産業革命先導国のドイツは、従来の製造業に新技術を取り入れて工場をスマート化し始め、すでに20年経過した」
 

(7)「韓国企業、特に中小企業は旧態依然としている。従業員10人以上の製造業者6万7000カ所のうちスマート工場は5%にすぎないほど産業生態系が脆弱だ。

スマートセンサーの国産化率は1.6%にすぎない。

このため第4次産業革命の到来で単純勤労者は失職危機に露出し、企業は新技術人材不足に直面する状況が生じる」

韓国の大学進学率は70%台にある。米国と並ぶ高学歴社会だ。その韓国で、AIやロボット操作ができる人材が不足している。

理由は、第一に大企業と公務員の就職希望が圧倒的で、中小企業への就職希望者が少ないこと。

第二は、大学工学部の教育が座学偏重であり、実務は街の塾が教えるという変則ぶりにある。

儒教の名残で、技術軽視という特色が大学教育に現れている。これでは、大学発の「イノベーション」は起こるはずがない。

 大学は、理屈だけ教えて実務を教えない。

何か、韓国社会を象徴するような話だ。

大学工学部が実践教育をしないのでは、工学部も理学部も違いはなくなるのだ。

日本から見た韓国の大学は、驚くことばかりである。

大学は、財閥企業への就職が最大の目的になっている。

中小企業などへの就職も、真剣に進めるように変わらなければ、AIやロボット操作の人材不足は解決しまい。

 (2017年10月28日)

 

 



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