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韓国、「構造不況論」早くも囁かれる活力不足「停滞経済」へ

2017-08-19 14:37:30 | 日記

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

2017-08-19 05:00:00

韓国、「構造不況論」早くも囁かれる活力不足「停滞経済」へ

韓銀の指摘する「イノベーション能力」不足が原因 

韓国は、日本型の低成長経済への移行を最も恐れてきた。

日本の「失われた20年」に陥るのでないかという危惧の念だ。いよいよそれが、現実化する気配である。

文在寅大統領は「所得主導型経済」を構想しているが、財政資金で最低賃金引上を図るという、なんともピント外れの政策を決めて嬉々としている。

文氏に韓国経済危機感は乏しい。

 その理由は、年初来の韓国経済には追い風が吹いているかに見えたことだ。

 『朝鮮日報』(8月9日付社説)は、「韓国経済の構造的危機を覆い隠す半導体好況」で次のように論じている。

 「企業の実績が大きく改善し、証券市場も過去最高値を更新した。文在寅新政権は今年の経済成長率予測を上方修正した。

しかし、回復の勢いは減速している。

むしろ『半導体の好況』を除けば、韓国経済の根本的な問題が徐々に深刻化しているという不安な警報音があちこちから鳴り響いている。

今年4~6月の製造業の平均稼働率は71.6%にすぎない。

世界的な金融危機を経験した2009年1-3月(66.5%)以降で最低だ。工場の生産ラインが止まりつつあることを示している」

 韓国経済は半導体市況の好転で活況感が溢れている。

だが、一皮剥けば構造不況業種がごろごろしている。

自動車産業ですら、労組の戦闘的な賃上げ攻勢に揺らいでいる。この揺らぐ韓国産業を追い詰めるのが、文政権の「反企業姿勢」だ。

私は、このブログで繰り返し、文政権の経済政策に疑念を呈してきた。

 経済は、企業の活力である設備投資が盛り上がらない限り、雇用は増えないという単純な構造だ。

その点の認識が文政権にはゼロである。

財閥企業の法人税を引き上げ、その税収増を最賃引上に当てるという「ポピュリズム福祉政策」を展開しようとしている。

文政府は、しきりと「善人」を装う発言を繰り返している。これぞまさに、「ポピュリズム」そのもの。

国家百年の計では、国民に向かって「苦言」を呈することも不可欠だ。

その点で、文政権は国民の「御用聞き」に成り下がっている。

 『中央日報』(8月9日付)は、「韓銀が診断した韓国の経済活力低下の原因」と題して、次のように伝えた。

 この記事は、韓銀(中央銀行)が発表したレポートに関するものだ。

韓国の経済活力が低下した理由について分析している。

人間で言えば、「健康診断書」である。レポートの特色を一口で言えば、韓国経済に「イノベーション」(革新)能力が不足していると指摘している。

読む者が読めば、文政権の経済政策への批判であるが、残念ながら韓国メディアにはそういう論調が現れないのだ。

韓銀は、あえてデータを細かく出して「カムフラージュ」している感じだ。

「健康診断書」で言えば、難しい医学用語の「検査項目」をズラリと並べて、素人には分からないようにしている感じである。

記者も、十分な説明も受けなかったのであろう。

せっかくのレポートが、これでは生かされないのだ。「宝の持ち腐れ」と言える。もったいない。

一番聞かせたいのは、文在寅大統領である。

 この種の記事に不慣れな方は、私のコメントだけでも読んで頂ければ、韓国経済の問題点がどこにあるか、理解していただけると思う。

 (1)「8月8日、韓国銀行が発表した報告書『景気変動性の縮小に対する再評価』で、3%台の成長率が期待されるほど景気回復が進んだにもかかわらず、それをあまり体感できないのは、景気変動性が縮小したためだとしている。

景気が良くなってもその上昇幅は高くなく、またその期間も短いため、景気回復をなかなか感じられないのだ。

 韓国銀行は根本的な原因として『革新不足』を指摘した」

 景気の変動幅が縮小しているとは、GDP成長率の高低幅が狭くなっていることだ。

すでに、日本経済がそうであるように好況感が湧かない経済になっている。

日本では、この現象に対して「アベノミクス効果が地方まで届いていない」と言うが、当たり前のことなのだ。

潜在成長率が低下した経済とは、こういう状態を指すもの。

ここから、「アベノミクス批判」を得意になって言い募る士もいるが、低成長経済の実態を理解していない証拠であろう。

 韓銀が、実に良い分析をしてくれたと思う。

景気の変動幅が縮小している原因は、潜在成長率の低下である。

これをもたらした理由は、総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)比率が低下しているからだ。

日本経済がこの状態に入っているが、韓国が同じケースに入ってきた。

これを跳ね返すには、「イノベーション」の推進しかない。旧態依然とした政策の繰り返しでなく、世の中を変えることが不可欠である。

 労働市場で言えば、終身雇用や年功序列賃金を頑として守る頑迷さが、労働市場を不活発にして、新規雇用の増加を妨げるのだ。

現役の労組員の暮らしだけを守る政策は、周辺労働者を排除することにつながる。

そういう身勝手なことをせず、労働市場をオープンにすることが、新規雇用を生み出す原動力になる。

解雇という最悪事態は、ない方が良いに決まっている。

ただ、不幸にしてそういう事態を迎えたら、迅速に対応して企業の浮揚力をつけ、再建を早める方が労働者にとってもメリットになる。韓国は、この点の認識がゼロである。 

(2)「報告書によると、景気変動性を示すGDP(国内総生産)成長率やGDP循環変動、景気動向指数などの標準偏差が、金融危機以前の2000年第1四半期~2007年第4四半期にはそれぞれ0.8、0.08、1.0を記録していた。だが、危機以降の2010年第1四半期~2017年第1四半期にはそれぞれ0.4、0.03、0.5へとほぼ半分以下になった」 

ここでは、やたらと難しい専門用語が連発されている。

言わんとしていることは、

①金融危機以前の2000年第1四半期~2007年第4四半期と、

②それ以降の2010年第1四半期~2017年第1四半期について、GDP成長率、GDP循環変動、景気動向指数などの標準偏差がいずれも半減していると指摘している。

 標準偏差とは、一般にデータのばらつきと呼んでいる。

例えば、ある試験でクラス全員が同じ点数、すなわち全員が平均値の場合、データにはばらつきがないので、標準偏差は 0になる。

データが平均値の周りに集中していれば標準偏差は小さくなり、逆に平均値から広がっていれば標準偏差は大きくなる。

 標準偏差が小さくなったとは、データが平均値の周りに集中しており、変化幅が小さいことを意味している。

2008年の金融危機後の韓国経済は、それ以前に比べて変化幅が半分になっていることを示している。

韓銀は、その原因について「イノベーション能力」不足を指摘している。

「家計所得不足」以前に、企業が「イノベーション」に取り組まずにいることが最大の問題になるはずだ。

 (3)「経済協力開発機構(OECD)のGDP変動性の平均は0.9倍だが、韓国は0.48倍にとどまっている。

35カ国の中でもスロバキアとイスラエルに次いで3番目に変動性が低かった。

このように景気変動性が縮小した背景には、民間消費と在庫投資の冷え込みがある。

GDP変動性変化にともなう支出部門別寄与度を分析した結果によると、在庫投資-0.3%、民間消費-0.25%など、消費および投資の寄与度がマイナスだった。

固定投資も-0.06%を記録した。純輸出は0.17%で、GDP変動性の増加に唯一貢献している」

 韓国の景気変動性(景気の上下幅)が、OECD諸国の半分にとどまっている理由は、民間消費と在庫投資の冷え込みが理由と指摘している。

文政権は、「民間消費の冷え込み」だけを注目して、「最賃引上」という短絡した結論を出すが、「ちょっと待った」である。

一方には、「在庫投資の冷え込み」がある。この点が重要である。企業が積極的に手持ち在庫を持って営業に当たっていないのだ。

その裏には、「イノベーション」不足があるので、新製品を思い切って市場へ投入しない結果であろう。

要するに、企業が経営で「勝負する製品」がないから、在庫を持たないように消極的になっているのだ。

  (4)「 韓国銀行関係者は、『民間消費が振るわない中で循環周期の短い輸出が景気変動を主導すれば小循環にとどまってしまいかねないので、内需の動向にもっと留意しなければならない』とし『雇用創出を通した家計の所得基盤拡充、企業の革新力強化による生産性向上に対し、政策的努力を集中しなければならない』と伝えた」 

 民間消費が振るわない理由は、雇用が低調であるからだ。雇用が低調なのは、新製品が出ないからだ。

新製品が出ないのは、企業の「イノベーション」能力が枯渇している証拠であろう。

結局、企業が積極的に新製品開発に取り組まず、その日暮らしでお茶を濁していることにつきる。この根源である企業のやる気をどうやって引き出すか。今それが、最も問われている。

文大統領は、大企業幹部との「ビール・パーティー」席上、「政府と同じ経営哲学を持ってくれ」と発言している。

これは、大間違いである。文氏のポピュリズムに染まったならば、企業のイノベーション能力は枯れてしまうに違いない。

 韓国企業に、イノベーション能力はあるだろうか。

儒教社会の通弊で保守回帰である。

その韓国企業がここまで成長できたのは、日本企業の技術支援があったからだ、現に、重厚長大型の産業構造から脱皮できずにいる。

韓国経済界は、自らの弱点であるイノベーション能力欠如を知っているから、正面立って「反日」を決して声高に言う愚を犯さないのだ。

こういう事情を知らない市民運動家が「反日」の旗を振り、文政権もその一翼に連なっている。

韓国は、「反日」から何も得られない。それを早く悟ることが必要であろう。

 (2017年8月19日)


韓国「狂気判決」乱発 またも三菱重工に賠償命令、「日韓スワップ協定の再開など論外」

2017-08-17 17:50:46 | 日記

韓国「狂気判決」乱発 またも三菱重工に賠償命令、識者もあきれ「日韓スワップ協定の再開など論外」

2017.8.14

韓国で「狂気の判決」が相次いでいる。

日韓の戦後補償は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」が、韓国の裁判所が、元徴用工や元挺身隊員らの個人請求権を認めて、日本企業に多額の賠償命令を出すケースが連続しているのだ。

河野太郎外相を先頭にして、隣国の「無法性」「異常性」を国際社会にアピールすべきではないか。

 「韓国は、国家間の協定や合意を平気で反故(ほご)にする。裁判官までが間違った世論に迎合している。正常な国際感覚を完全に失った」

 朝鮮問題研究家の松木國俊氏はこうあきれた。

 太平洋戦争末期に、三菱重工業の名古屋市内の軍需工場などに動員されたという元朝鮮女子勤労挺身隊員の韓国人女性3人と遺族1人が同社に損害賠償を求めた訴訟で、

韓国・光州(クァンジュ)地裁は11日、原告の請求を認め、計4億7000万ウォン(約4500万円)の支払いを命じる判決を言い渡した。

 韓国国内で、元挺身隊員や元徴用工が勝訴したのは今回で12件目。

光州地裁では8日にも、元挺身隊員の女性と遺族の2人への計約1億2325万ウォン(約1170万円)の賠償を同社に命じる判決が出たばかりだ。

日韓請求権協定は、日本側が韓国政府に総額8億ドル(無償3億ドル、政府借款2億ドル、民間借款3億ドル)を供与することで、両国及びその国民の間の請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」と確認する内容。

韓国は当時の国家予算の2・3倍という巨費を手にし、韓国は「漢江の奇跡」といわれる経済復興を果たした。

 前出の松木氏は「韓国は『法治国家』ではなく『情治国家』。反日教育で、慰安婦問題を含めて、1000年先まで日本と日本人を貶めるつもりだ」といい、続けた。

 「韓国が異常な状況になったのは、日本が韓国の無理難題を受け入れてきたことも一因。

韓国は『日本はやはり悪だ』『自分たちが正しい』と勘違いした。これ以上、韓国に甘い顔をしてはダメだ。

日韓スワップ協定の再開など論外。

平昌(ピョンチャン)冬季五輪も協力する必要はない。

河野外相が国際社会に対し、『韓国で異常な判決が出ている』『国家間の条約・協定も守らない』とアピールすべきだ。

韓国の本当の立ち位置を理解させるべきだ」

 


韓国でまた、国際常識から逸脱した異常な「反日」判決が出た。

2017-08-17 17:38:51 | 日記

韓国でまた、国際常識から逸脱した異常な「反日」判決が出た。

長崎県対馬市の観音寺から2012年10月に盗まれ、韓国で発見された県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」について、

元の所有権を主張する韓国の寺が、像を日本に返還せずに同寺に引き渡すよう韓国政府に求めていた訴訟で、大田(テジョン)地裁が26日、韓国の寺の請求を認めたのだ。聯合ニュースが伝えた。

 盗品でも韓国に持ち込めば返還しなくてもいい-といわんばかりの無茶苦茶な判決だ。

引き渡しを求めていた韓国中部・瑞山(ソサン)の浮石(プソク)寺は像について、14世紀に韓国で作られて倭寇に略奪されたものだと強弁し、昨年4月に提訴していた。

 韓国文化財庁は経緯を調査したうえで、略奪の可能性は否定しない一方、「断定は困難」としていた。

韓国政府の代理人も「浮足寺が所有者だという証拠が不足している」と訴訟で指摘していたが、どうしてこんな判決が出るのか。

 これまでも、異常判決を連発してきた韓国司法。

改めて、同国がまともな法治国家でないことがハッキリした。韓国また異常な「反日」判決 日本から盗まれた仏像「返さなくていい」

2017.01.27

 


文大統領の光復節演説 慎重さ欠く「徴用工」言及

2017-08-17 17:32:39 | 日記

文大統領の光復節演説 慎重さ欠く「徴用工」言及


金融市場から改めて眺める「韓国リスク」 ウォンの急落は、突然に!

2017-08-17 16:46:58 | 日記

ウォンの急落は、突然に!

新宿会計士 政治経済評論

一部省略

金融市場から改めて眺める「韓国リスク」

一方、中国ほど露骨ではありませんが、韓国も為替操作を行っていると想像できるのが、図表5のデータです。

さすがに長い目でみるとそれほどでもありませんが、「観測期間240営業日、保有期間1営業日」のデータで眺めてみると、

米ドル・韓国ウォン(USD/KRW)の為替変動は、ドル・円(USD/JPY)や豪ドル・米ドル(AUD/USD)、英ポンド・米ドル(GBP/USD)と比べて、

常に低位安定していることが分かります。

もっとも、近年だとユーロ・米ドル(EUR/USD)のボラティリティが低下しているため、結果的には韓国ウォン(USD/KRW)の為替変動のボラティリティを下回っていますが…。

韓国が為替介入を行っている証拠はいくつかあるのですが、ここで、最近の事例を1つ、取り上げてみましょう。

北朝鮮の放送局は8月10日、「これからグアムに向けてミサイルを発射する準備が整う」と述べましたが、その日付を挟んで、株価と為替はそれぞれどう動いたのでしょうか?(図表7)

図表7 株価・為替の動き(5営業日)
指数8月11日終値増減率
KOSPI 2319.71(▲-75.74) ▲3.2%
USD/KRW 1142.86(+14.08) +1.2%

図表7は、株価と為替相場を、5営業日前(つまりちょうど1週間前)と比べたものです。

株価指数であるKOSPIは前週末と比べて3.2%下落しているのに対し、為替相場は前週末比+1.2%しか動いていません(※「為替が上昇した」とは、この場合、「韓国ウォンが米ドルに対して下落した」、という意味です)。

北朝鮮当局がグアム近海にミサイルを発射したとすれば、それは即、米朝戦争が勃発するという可能性が極めて高まったことになります。

米朝戦争の際に真っ先に被害を受けるのは韓国であり、一説によると数万人から百万人単位での犠牲者が出ることも予想されるとのことです。

KOSPIや韓国ウォンは、10%や20%売られてもおかしくないと思うのですが、その割に市場の動きは緩慢です。これはなぜでしょうか?

これを、「今のところ、北朝鮮情勢に対する市場の反応は限定的だ」と解することもできますが、とくに為替相場については値動きが少なすぎ、不自然です。

これは、韓国当局が為替市場に常に介入している証拠だとも考えられるでしょう。

「売り介入」は続かない

ところで、為替介入には2種類あります。

1つは「(A)自国通貨高を抑制するための為替介入」であり、一般的には自国通貨(韓国の場合は韓国ウォン、中国の場合はCNHかCNY)を売って、外貨を買い入れます。

これに対し、もう1つは「(B)自国通貨安を抑制するための為替介入」であり、一般的には外貨を売って、自国通貨を買い入れます。

このうち、(A)の方の為替介入は、理屈の上では無限に続けることができます。単に自国通貨を刷って市場に放出すれば良いだけだからです。

ただし、通貨を供給し過ぎると、長期的には自国のインフレ率が上昇してしまうため、何らかの方法で市場に放出した自国通貨を回収しなければなりません(不胎化オペ)。

韓国銀行が巨額の債券を発行している理由は、おそらく、為替介入し過ぎて市場に溢れてしまっている韓国ウォンを回収するためでしょう。

一方、(B)の方の為替介入は、自国が保有する外貨準備の範囲内でしか行うことができません。手持ちの外貨(とくに米ドル)が尽きれば、自国通貨が暴落し始めたとしても、それを止めることは難しいのです。

私の仮説では、韓国は(A)(B)双方の介入を繰り返していると考えています。

そして、中央銀行が資産側で保有している巨額の外貨準備と、負債側で発行している巨額の債券は、いずれも(A)の介入の結果です。

ただし、韓国は対外的には4000億ドル近い外貨準備を保持していることになっていますが、『久しぶりに読む韓国統計のインチキ』でも触れたとおり、その中身は資産性に乏しい不良資産ではないかと懸念されます。

ここ数日の北朝鮮危機で、実は韓国ウォンもかなり売られていて、韓国の外貨準備が底を尽きかけていたとしても、私は驚きません。

ただし、韓国政府は為替介入の詳細(介入の種類、金額)を明らかにしていません。

したがって、私がここに記載した内容は、いずれも私自身の憶測に過ぎませんが、それでも「単なる憶測」で済ませられるものだとも思えないのです。

心もとない外貨準備と通貨スワップ

私が以前から、韓国の外貨準備について、「その大部分はウソかインチキだ」と申し上げる根拠は、韓国が公表する統計と、外国が公表する統計の間で、猛烈に辻褄が合わないからです。

そして、いくつかの状況証拠から判断する限り、韓国が保有する外貨準備は4000億ドルではなく、良くてせいぜい1000億ドル、下手すると500億ドルもないかもしれません。

私が恐れている事態とは、実は、韓国ウォンはずいぶん前から北朝鮮情勢を嫌気して売られ続けていて、それでも韓国銀行がドル・ウォン相場を維持しようとして無理な介入を続け、実質的な外貨準備が底をついている、という可能性です。

この場合、韓国が保有している外貨がなくなった瞬間、韓国の通貨・ウォンは、それこそつるべ落としのように下落します。

そして、その兆候は事前にわかりません。ある日、突然にそうなるのです。

もちろん、外貨準備が尽きても、まだ売り介入を続けることができる場合があります。それが「通貨スワップ協定」です。

この通貨スワップ協定とは、主に外国の中央銀行との間で締結している協定であり、自国通貨を担保に外国の中央銀行から外貨を借りるという取引です。

私が調べたところ、韓国は現在、「2カ国間スワップ協定(BSA」を4カ国との間で締結しており、その米ドル換算額は約740億ドルです。

また、これとは別に「チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定(CMIM)」に参加しているため、合計すれば、「計算上は」1124億ドルのスワップを保持していることになります(図表8)。

図表8 韓国が外国と締結する通貨スワップ協定
相手国と金額ウォン建て金額米ドル換算額
豪州(100億豪ドル) 9兆ウォン 78.9億ドル
マレーシア(150億リンギ) 5兆ウォン 34.9億ドル
インドネシア(115兆ルピア) 11兆ウォン 86.1億ドル
中国(3600億元) 64兆ウォン 540.2億ドル
BSA小計 89兆ウォン 740.1億ドル
CMIM 384.0億ドル
合計 1124.1億ドル

(【出所】各国中央銀行ウェブサイト等を参考に著者作成。米ドル換算額はダウジョーンズの金曜日終値を参照。なお、中国人民元についてはCNHではなくCNYにより換算)

ただ、このうちBSAの「740億ドル程度」という金額は、韓国がいざというときに必要とする米ドルや日本円で引き出せるわけではありません。

基本的には相手国通貨で引き出し、それを市場で米ドルなどのハード・カレンシーに両替し、それで自国通貨・ウォンを買い入れるのです。

豪州の場合は資源国でもあり、豪ドル自体が国際的な市場で両替可能な「ハード・カレンシー」の一角を占めているため、100億豪ドル(約78.9億米ドル)程度、市場で売却されたとしても、それほどのインパクトはありません。

しかし、マレーシアやインドネシアの場合は通貨市場の規模が小さく、市場で150億リンギ、あるいは115兆ルピアが一気に売却されれば、それだけでマレーシアやインドネシアの通貨がドルに対して暴落します。

そうなると、危機は韓国だけを襲っているはずなのに、韓国銀行が相手国通貨を市場で売却することを通じ、通貨危機が連鎖的にマレーシアやインドネシアに飛び火する可能性があります。

マレーシアもインドネシアも、韓国との通貨スワップ協定などさっさと破棄しておくべきだったのかもしれません。

中国とのスワップとCMIMは、どうせ使い物にならないが…

一方、中国とのスワップ協定は、64兆ウォン、3600億元であり、この3600億元を米ドルに換算すれば、540億ドル(つまり韓国にとってのBSAの73%)を占めます。

しかし、中国人民銀行が韓国銀行に対し、3600億元を貸し出したとしても、その人民元を韓国は米ドルに両替することができません。

香港でのCNH供給量はせいぜい5000億元程度であり、中国政府は韓国が借り入れた人民元の全額を香港市場・東京市場・ロンドン市場で売却することを容認しないでしょう。

そのスワップ協定は今年10月10日に失効する予定ですが、どのみちこのBSAは「張子の虎」なのです。

また、CMIMについても、発動することは事実上、困難です。

CMIMはもともと、東南アジア諸国連合(ASEAN諸国)の救済を目的に、日中韓3ヵ国がASEANと協力するという位置付けの協定であり、プライドだけはエベレストよりも高い韓国の通貨当局が、ASEAN諸国に頭を下げてお金を借りることができるとは、私には思えないのです。

しかも、30%(韓国の場合は約115億ドル)を超えて引き出すときには、国際通貨基金(IMF)が介入して来ます。

以上より、最悪のシナリオをまとめてみます。

  • 北朝鮮リスクが意識され、韓国ウォンが売り浴びせられている
  • 韓国の通貨当局は水面下で必死の為替介入を続けていて、ドル・ウォン市場は一見、平静を装っている
  • しかし、ある日、突然に韓国の外貨準備が尽きる
  • 韓国は通貨スワップを発動し、マレーシアとインドネシアから両国の通貨を調達し、ドル転する
  • マレーシア・リンギ、インドネシア・ルピアが暴落し、危機は両国に伝播する
  • 中国は韓国による通貨スワップの引出の申し入れを拒絶する
  • 日本は通貨スワップを通じ、インドネシアに最大227億ドルの米ドルを貸与する

実は、日本政府(財務省)はインドネシアの両国との間で、通貨スワップ協定を締結しています(マレーシアとは協議中)。

つまり、韓国が通貨危機に陥り、インドネシアが韓国との通貨スワップに応じれば、インドネシアは即、日本に対して通貨スワップに基づく外貨の提供を要求する可能性が高い、ということです。

もっといえば、インドネシアを通じて、日本は間接的に韓国を救済しているようなものです。

そして、人民元スワップとCMIMは使い物にならないため、結局、韓国の国家財政破綻を防ぐことはできず、連鎖的にマレーシアとインドネシアが危機に陥る、という算段です。

日本にとっては、実に迷惑な話です。

何事も「数字」が大事

以上、本日は前半で少し気分を変えて市場分析を行い、後半では韓国の外貨ポジションについて、簡単に振り返ってみました。

私がいつも主張していることですが、何か議論をするときには、できるだけ「数字」に基づくべきです。そして、市場データは、さまざまな分析する際の「宝庫」でもあると思います。

経済ニュースを読むときに、「国の借金は過去最大となった」といった報道が流れる割には、現実の金融市場では、7年債までの債券利回りは相変わらずマイナスとなっています。

「日本の財政が危機だ」というのであれば、5年債利回りがマイナス0.065%、10年債利回りが0.06%という状況は、明らかに債券市場が間違っているのか、「日本の財政が危機だ」という認識が間違っているのか、そのどちらかです。

いずれにせよ、数字を使った分析は非常に大事です。当ウェブサイトでは、今後も「客観的に確認できる数字」を大切にしていこうと思います。

なお、本日の記事で為替介入などについてご関心を抱いた方は、つい最近上梓した『為替介入についての基礎知識』『久しぶりに読む韓国統計のインチキ』などもご参照ください。